三十一笑 元好きな人への思い
『花火? 明日香ちゃん、花火嫌いじゃなかったっけ?』
「でかい花火の音がだめなんだって」
夏休みの終わりまで、後二日。あたしは朝早く慎ちゃんに電話をした。
夏休み、あたしにとって最大のイベント、それは花火だ。毎年、みんなで花火をやっている。今年は、慎ちゃんも誘おうということになった。
『じゃあ、今日八時頃行けばいいの?』
「うん。そう。じゃ、来てね」
『ちなみに、誰が来るの?』
「え? ああ、理沙ちゃんのお母さんが保護者で理沙ちゃんとあたしと光樹と大地」
『大地?』
「そ、大地っていう奴も昔けっこう遊んでて理沙ちゃんと光樹の幼なじみだよ」
『へえ。わかった』
「じゃあ、よろしく」
あたしは短く挨拶をして電話を切った。
シュボッと音がして花火がついた。あたしは、花火を振り回す。
「うわっ、あぶねーぞ、明日香!」
光樹が声をあげた。光樹も同じ事してんじゃねーか。
「明日香ちゃん、線香花火やろ!」
「うん!」
理沙ちゃんに線香花火を渡され、一緒に火をつける。
「みんなー、あぶねーから離れろー!」
大地が叫ぶ。あたしたちはキャーキャー声をあげて大地がセットした花火から離れた。同時に火がつき、シュワァァァァァッと花火があがる。
「おおー」
「すっげー」
「綺麗」
あたしらはそれぞれ歓声をあげ花火をみた。
「片桐、大地! どっちが多く花火を持てるか勝負しようぜ!」
「「オッケー!」」
良かった、慎ちゃんも楽しんでいるみたいだ。
あたしは、三人の花火対決を見ながらくすりと笑った。
「なあ、明日香」
三人の花火が燃え尽きた時、大地が近づいてきた。
「なんだ?」
「久々にあの木、登ろうぜ」
「お、いいねー」
あたしと大地は家が隣同士でよく遊び、特に木登りをした。新しい木を見つければ、それに登る。そうやって遊んできて、気に入っていた木を見つけよく登った。
光樹は木登りが苦手なのか、登ったところすら見たことが無い。理沙ちゃんは女の子だから登らないのは当然だった。
あたしと大地はお気に入りの木に登った。最初に大地が登り次にあたしが登る。かなり高くまで登って下を見下ろした。
「久々だねー、ここ登んの」
「ほんとだな。全然、遊ばなかったし」
「……ああ」
トクンと心臓が鳴る。あたし、まだちょっと好きだったんだ。もう完全に違うと思ったのに。
「ねえ、あたしがさ、小四の頃にした告白、覚えてる?」
そう、あたしは一度、大地に告白したことがあった。「小四の時に好きな人誰?」って訊かれて、大地を指差したんだ。
大地は、一瞬目を丸くしてから、笑った。「嘘つけ」と、あたしはけっこうショックだったけど、あの時強がって「嘘だよ」って言ったんだ。
「……覚えてる」
……覚えててくれたんだ。
「あれさ、嘘じゃなかったんだけど」
「……それも知ってた」
「何だよ。知ってたのに、わざと言ったのかよ」
「ああ。俺だって恥ずいんだよ」
「ふーん。あ、大丈夫。今は、好きじゃないよ」
あたしは、笑っていった。本当は笑えない。でも、無理して笑ってみせた。好きな人はいるけど、前好きだった人にそう簡単に好きじゃないなんて言えない。
「そうか。まあ、全然遊んでないし、そりゃ、冷めるよな」
「……まあね」
「じゃ、降りるか」
大地に言われ、あたしはゆっくりと木から降りた。大地も降りてくる。
目に光樹と慎ちゃんと理沙ちゃんが無邪気に笑っているのを見て、あたしは、本当に笑った。
すっごく楽しくてすっきりした夏祭りだったと思う。
しばらくしたら、体育祭のシーズンになります。それで、体育祭なんですが、自分、個人的に体育祭が嫌いでして特に思い出を覚えてないんです。だから、実話どおりには書けないんです。
でも、もし、書いてほしいという要望があれば、勝手の空想上の話でよければ書きます。
どうでしょうか?
長くすみませんでした。