二十八笑 お化け屋敷と夏祭り
かなり遊んだあたしたちは、最後にといことで、お化け屋敷に向かった。
「ほんとにお化け屋敷行くの?」
「何だよ、DKのくせに怖いのか?」
「DK言うな!」
「いてっ」
「澪たちはどうする?」
「えっと、あたしはやめとくよ」
「同じく」
「俺も」
「じゃあ行こっか」
「おう」
あたしは澪たちに手を振って、受付の人にお金を払い、中に入る。中は意外と本格的だった。薄暗く、BGMを湿っぽい。
「今から耳塞ぐから、話しかけないでよ」
「は? 耳塞いでどうすんだよ。アホか」
「あたし、幼稚園のお化け屋敷でお化け役の先生が真横でシンバルを鳴らしたの。めちゃめ
ちゃびびったよ。それから、大きな音とお化け屋敷は苦手なんだよ。また、鳴らされたらた
まったもんじゃない、って何笑ってんだよ」
あたしが力説をしていると、光樹は笑いをこらえるように震え始めた。
「だ、だって、お化け屋敷でシンバルとか普通ないし。しかも、音というか、どっちかっていうと、見るんだから。アホだろ、まじで」
「な! そうなのか! ……うー、でも見るのもなぁ。あ、じゃあ、服掴むから、誘導してくれ。目、つぶるから。大丈夫、誰も居ないから変な噂になったりしねーよ」
「はあ? そ、そういう、も、問題じゃ」
「いいから」
あたしは、光樹の服の裾をつまんで、目を閉じた。光樹はしばらく歩かなかったが、やがて観念したように歩き出した。
「右」
「おう」
光樹が右に曲がったのを感じ、あたしも右に曲がる。
「ぐへっ」
光樹が変な声を出して、立ち止まった。あたしは光樹の背に鼻をぶつけた。目を開けて、光樹を見る。
「いたっ。ちょ、どうしたんだよ」
「あ、いや、こんにゃくが急に降ってきて顔に当たったんだよ」
「なんだよ、それだけか」
バシンと光樹の背を叩く。光樹は「いてぇ」と顔をしかめたが、また歩き始めた。
「ギャァァァァァァァァァァァァァ!!」
急に悲鳴が聞こえた。あたしはびっくりして立ち止まった。目を開けてみる。
目の前には髪の毛をぼさぼさに伸ばした白い服の厚化粧の女の人がいた。ライトが下から当たり、怖く演じている。
「なっ」
女の人はゆらりとこちらに近づいてきた。びっくりしたあたしらは一斉に走り出した。
「追ってくるぅ!」
「もう、いやぁ!」
一目散に走るとまた、同じような人がたくさん出てきた。こちらも追ってくる。
「まじかよぉぉ!」
「また、出てきたぁ!」
あたしらは急カーブをして走る。うー、浴衣だから走りにくい。
急に何かにつまずいた。
「うわっ」
「明日香!」
べたんと地面に顔を打ち付ける。いったぁ。じんわりと涙が出て来る。
光樹が駆け寄ってきて、あたしを起こしてくれる。
「大丈夫か」
「あ、うん」
「ゴールまではしんぞ!」
「うん!」
あたしは光樹に手を引かれて走った。光樹が、あたしが走りやすいようにペースを落として走ってくれた。
やがて、光が見え、あたしらはゴールした。
「あー、やっと終わったぁ」
深呼吸をする。ゴールには、澪たちがいた。
「悲鳴がすっげー聞こえたぞ」
「大丈夫?」
あたしと光樹は顔を合わせて笑った。そして、二人で言った。
「「すんげー怖かった」」
余談です。
明日香のお化け屋敷が嫌いな理由は実話です。あれは、本当にびびりました。あれのせいで、大きな音もだめになり、銃声、花火等は駄目です。
体育大会はかなり苦痛です。