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特別な関係  作者: 夜明け
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二十七笑 ヨーヨー釣りと夏祭り

 俺は息を呑んだ。光樹君の台詞がすごかったのだ。

 先ほどまで、射的をやっていた光樹君は見事景品を落として、それを明日香ちゃんにあげた。明日香ちゃんは自分だけ貰うのが気に入らないらしく、何かおごると言った。それで、「何がいい?」と訊いたとき、光樹君はこう答えのだ。

 


「……じゃ、お化け屋敷、一緒に回ろうぜ。あれ、一人二百円だから俺とお前で四百円」



 これはさりげないけど紛れもなくアピールしていた。光樹君も顔を赤くしている。

 すごいと思った。ここで言うとは、思いもしなかったのだ。

 明日香ちゃんはこれをどう受け取ったのか気になり、明日香ちゃんを見たが、明日香ちゃんは顔を赤くした様子もなく、逆にきょとんとしていた。


「そんなんでいいのか? しかも、ペアあたしでいいのかよ」


 みんなが驚く。これで、気付かないとは、どれだけ鈍感なんだ。

 光樹君が、ほっと息をついた。でも、何処か残念そうだった。俺も、安心した。先に越されたと思ったのだ。しかし、同時にこれから大丈夫なのかと不安にもなる。


「いいよ。あ、でも、お化け屋敷はやっぱ最後な」

「ペア、理沙ちゃんにすればいいのに」

「はあ? お前、しつこい! いいんだよ! それで!」


 明日香ちゃんが、不思議そうに言う中、光樹君はあまりにも気付かない明日香ちゃんに苛

立っていた。俺も苦笑するしかない。

 苦笑しながら、光樹君に思いを寄せる星野さんを見ると、星野さんうつむいていた。「本当に鈍感」と小坂さんが呟いた。


「ほんじゃ、別のとこ行こっか。お化け屋敷はまだ早いだろ」

「うん。じゃあ……あ、あれは? 金魚すくい」

「あたし、金魚飼えないよ」

「わたしも」

「俺ん家も」

「俺も」

「俺も駄目だな」

「えー、じゃあ、あたしだけ?」

「飼えるほうが不思議だよ。別のにしようぜ、澪」

「じゃー、ヨーヨ釣りならいいでしょ?」

「いいよ」


 みんな頷く。俺も頷いた。

 ヨーヨ釣りは一回二百円だった。まず、小坂さんと明日香ちゃんがやった。

 明日香ちゃんが釣ろうとしたのは、紺色の縞模様のヨーヨーだった。上手く釣り上げ、もう一個を狙う。次に釣ろうとしたのは、青い水玉模様のヨーヨーだった。それも釣り上げた明日香ちゃんは次の狙った奴で紙が切れて終わった。

 一方、小坂さんはピンク色の水玉模様のヨーヨーを狙ったが、失敗し明日香ちゃんにヨーヨーのおじさんに狙っていたヨーヨーを貰っていた。

 次に、星野さんと光樹君がやった。

 星野さんも光樹君も一個も取れずに終わった。おじさんにヨーヨーを貰う。

 最後に俺と隼人君だ。


「隼人、慎ちゃんがんばれよー」


 先に隼人君が呼ばれたのが癪に触ったが、俺は気にせずやった。

 狙うは、黒の縞模様。そっと、針を水につけ、とる。取れたところで、紙が切れた。

 隼人君は、赤の水玉を上手く、釣り上げた。もう一個、透明の縞模様を釣り上げ、紙が切れる。


「よっしゃ、二つゲット」

「おお、すげー!」


 明日香ちゃんが歓声をあげる。

 明日香ちゃんも同じ数取ったのにと、心の中で突っ込んだ。


「慎ちゃん」


 少し心にもやを感じていると明日香ちゃんが振り向いて、俺のヨーヨーを指した。


「これいいな。良かったらでいいんだけど、あたしの青と交換しない?」

「え、えっと、いいよ」

「ありがとう!」


 明日香ちゃんが指からヨーヨーを外して、俺に渡す。俺も、明日香ちゃんに黒のヨーヨーを渡した。少し、指が触れ合う。ドキンと胸が高鳴って、慌てて引っ込めた。明日香ちゃんは、何も気にせず、俺のあげたヨーヨーを眺めていた。


「ありがとう!」


 明日香ちゃんは俺にお礼を言うと手に持つ巾着から携帯を取り出し、パシャリとヨーヨーを撮った。

 俺は、彼女の笑顔にみとれていた。

特に、説明もないんで。今回も余談を。

自分は、ヨーヨー釣りの店の手伝いをした事があります。

あれってけっこう難しいんですよね。空気が抜けないようにするピンをはめるのが。あれを失敗するとですね。水があちこちに飛んでいくんですよ。あれで、一度、友達をぬらした事があります。(笑)

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