二十六笑 射的と夏祭り
「あれあれ!」
あたしは、射的の景品の一つの立っている箱を指した。あれは、多分、ペンダントだと思う。デザインが四葉のクローバーで可愛い。
「おっしゃー! ぜってぇ、取ってやる!」
「おう、がんばれ!」
盛り上がるあたし。光樹が、狙いを定めて、一発打った。
かすって箱が傾く。
「ちっ。おしい」
「後、二発ぅ!」
「わかってらぁ!」
パンと音が鳴る。二発目は上の台のキャラメルに当たり、キャラメルが落ちた。
「おっしゃぁ!」
「別のが落ちてんじゃねーか!」
「うるせー! 後一発残ってるっつーの!」
パンッ。
乾いた音が鳴り、ペンダントの箱に当たった。箱は後ろに動いたものの、台から落ちることはなかった。
「あー、惜しい」
「畜生! もう三百円!」
あたし達が盛り上がっている中、澪たちが呆れた声を出した。
「そこらへんにしときなよ」
「お金もったいないよ」
「うるせー! ここまで、来て引き下がれるか!」
三人が言い合うのを苦笑しながら見る慎ちゃん、隼人。
「おっし! 君、気に入った!」
三人の言い合いを見ていると、低い威勢の良い声がした。驚いて振り向くと、射的のおじさんが笑って光樹の肩を叩いた。
「いつもならば、この景品を取りにくいように、最初の状態に戻すのだが、今回は特別このまま続行! しかも値段は百円でどうだぁ!」
「おっさん、いや、お兄さん、かっこいいぜ! ありがとうございます!」
光樹は喜んで、財布から百円を出し、おじさんに渡した。がははとおじさんが笑いながら光樹に玉を渡す。
「よっし、今度こそ」
光樹が狙いを定めた。パン、パンと二発とも外れる。最後の一発を打つと、箱が落ちた。
「おっしゃぁぁぁぁ!」
「おおおおお!」
「兄ちゃん、おめでとう! ほい、景品だぁ!」
おじさんが光樹に箱を渡す。あたし達は歓声をあげ、拍手した。光樹が箱を天にかざして、誇らしげに笑う。
「ん、やるよ」
光樹がしばらくしてから、あたしに箱を素っ気無く突き出した。
え、あれ、半分冗談だったのに。
「え? いや、悪いよ」
「俺が、持ってたって使わねーもん。やる」
光樹がさらに箱を突き出す。あたしは、恐る恐る受け取った。箱を開き、中を確認する。
四葉のアクセサリーがついたペンダントはキラキラと光った。
「うわぁ、綺麗」
澪と理沙ちゃんが感動の声を漏らす。
「ありがと」
「おう」
「よっし、あたしも光樹になんかおごんねーとな! どーしよ……何がいい?」
「いいよ」
「いや、駄目だ。なんか、悪いし。あ、四百円までだからな!」
「……じゃ、お化け屋敷、一緒に回ろうぜ。あれ、一人二百円だから俺とお前で四百円」
はっと息を呑む声した気がした。
そんなんでいいのかな? なんかモノじゃなくて。
「そんなんでいいのか? しかも、ペアあたしでいいのかよ」
「いいよ。あ、でも、お化け屋敷はやっぱ最後な」
「ペア、理沙ちゃんにすればいいのに」
「はあ? お前、しつこい! いいんだよ! それで!」
何で、切れるんだよ。まあ、それでいいならいいや。安上がりだし。
隣で小さく、「本当に鈍感」って声が聞こえた気がした。
またまた、感想をいただきました! ありがとうございます! 自分、とても感謝しております!
さて、明日から五日まで母の実家に帰ります。出来たら、明日に一回投稿しますが、もしかしたら、できないかもしれません。なので、次の投稿は五日になると思います。(もしかしたら六日かも。)
しばらく投稿しませんが、今日から四日までの四話は今日中に投稿します。(時間差で)
長い後書きですみません。