十五笑 林間学校!1
「あー、最初ってウォークラリーじゃん……」
荷物を宿泊棟へ置いてきたあたしは、集合場所の鶯の館にいた。隣には、澪と理沙ちゃんがいる。
「あれ? 明日香って結構楽しみにしてなかったっけ?」
「えー、うん。まあ、楽しみにしてたけど、班員がさぁ……」
「あ、そっか。別に大丈夫だって」
気を落とすあたしを慰めてくれる澪。理沙ちゃんは状況を知らないから頭にはてなマークを浮かべている。
「あ、いたいた」
あたしたちがしばらく駄弁っていると、隼人たちと合流した。
「あ、隼人。うっ」
あたしは、なるべく、慎ちゃんと光樹を見ないようにした。
もう、ウォークラリーについては説明済みだ。ここまでの移動時間内で説明が終わっている。後は、班員と合流したら出発だ。
ウォークラリーは、一つの班でばらばらに出発して、渡された地図を見ながらゴールをするという企画だ。
「じゃー行こう!」
少し、暗い雰囲気の中状況を知らないKY《空気読めない》な理沙ちゃんが一人張り切って言った。
隼人も苦笑して「そうだな」と言った。
しばらく森の中を歩いていると、分かれ道に着いた。地図を見ると、どちらからでも行けるようになっている。
「どっち行く?」
理沙ちゃんが皆に訊く。あたし達は無言で答えた。
「よっし、ねー、ここで、チームを分けない? こっからならさ、途中で合流できるし。……じゃあ、村井君と明日香とあたしでいい?」
『えっ!』
勝手に決められたあたし達は驚愕した。いや、あたしは構わないんだけど、その、隼人といけるし、澪と歩けるし……。それに、理沙ちゃんも光樹と話せる機会になるし……。
ちらりと皆を見ると、理沙ちゃんは顔を赤くしていた。隼人は普通にしている。別にいいみたいだ。澪はニコニコというよりニヤニヤと笑っていた。慎ちゃんは、ポカンとしていて、それから少し、悲しそうだった。光樹は、むすっとしている。皆、ばらばらだ。
「あ、そっか! あたしは邪魔モノかぁ……」
澪が明らかに棒読みで言う。
「そんなことないから!」
「そう? でもなぁ……あっ、そうだ、片桐君、あたし達先に行こう!で、十分後に他のふたペアが出発ね。いいでしょ? 片桐君」
「えっ! でもさ……」
慎ちゃんがごもごもと口を濁す。そしたら、澪が慎ちゃんに何か囁いて、慎ちゃんは顔を赤くしてカクカクと頷いた。
あたしも近づいて、澪に言う。
「ねえ、澪。何言ったの?」
「秘密」
「……澪って、もしかして、慎ちゃん狙ってる?」
すると、澪は苦笑して、それから顔を赤くし、頷いた。
「そっか……」
あたしは複雑な気分で、頷いた。
林間学校編です。(って編とかあるのか・・・)
登場人物の関係性をここで、確かめたいと思っています。
澪→慎之介←上田愛美(分からない方は十一笑を)
↓
光樹→明日香→隼人
という状況です。
(やじるしは、誰が、誰を好きかという意)
これをご確認して、また読んでいただけると幸いです。