十四笑 俺らの友情
午前七時二十分。集合は八時なのに、俺は昨夜眠れず、集合場所の駅でポツンと一人たっていた。出勤時間は登校時間で、今、駅は高校生やサラリーマンで賑わっている。
「あー、早く着きすぎたかなぁ」
ひとりでに呟いて天を仰ぐ。空は雲ひとつない快晴の空だった。
しばらく、途方に暮れて、前を見ると、俺の中学校の制服を着た男子がやってきた。目を凝らすと、そいつは光樹君だった。
俺はなんとなく気まずくなって少し離れようかと悩んだ。でも、光樹君はその前に俺を見つけた。
「あ……片桐か」
光樹君も気まずそうに笑った。俺も苦笑して答える。
「おはよう、光樹君」
「おう」
光樹君は俺の隣に来て、俺と同じように壁にもたれ掛かった。
「……なあ、片桐」
しばらく、沈黙が続くと、光樹君は声を掛けてきた。
「ん?」
「あのさ、明日香、どうだった?」
少し言いにくそうに訊いてくる。俺は首をかしげた。
「ごめん、わかんないや。俺も喧嘩?したままで、話してないんだ」
「そうか。お前も話してないのか」
「うん」
「……じゃあ、お前、隼人をどう思う?」
「隼人君?」
光樹君が一拍置いて訊いてくる。何で、ここで隼人君がでるんだ?
不思議に思いながら、答える。
「……別にとても面白い人だよね。頭もいいし、運動も出来るし」
素直に答えると、光樹君は困ったような笑顔になった。
「違うんだよ、そうじゃなくてな……ま、いいっか。この調子だと、こいつはまだ、明日香
を――」
最後の方はよく聞こえなかったけど、どうやら納得したらしい。
俺は、光樹君の話が終わると、壁から背を離して言った。
「あのさ、ありがとう」
「……はい?」
光樹君がきょとんとした顔を浮かべる。俺は構わず話を続けた。
「あの、明日香ちゃんと喧嘩した日にさ、よく聞こえなかったけど、あの日の前の日の事で喧嘩してくれたんだよね」
「ああ、あの日か」
光樹君が思い出したように呟く。
「そう。あの日、俺がさ、何にも言わなかったら光樹君も喧嘩してなかったのに。ホント、ごめん」
俺が頭を下げると、光樹君はぷっと吹き出した。それから高らかに笑う。
「ハハハ、ああ、あれはいいよ。だって、俺が明日香に喧嘩を売ったんだし、俺が悪いんだから」
「でも、あれは俺が元々原因で」
笑うなんてひどいなあと思いながら、頭を下げ続ける。光樹君は、ふうと深呼吸した。
「じゃあさ、一つお願い聞いてよ」
「え? あ、簡単なことなら」
「めっちゃ、簡単」
「そう? 分かった、いいよ」
光樹君はにやりと笑った。もしかして、パシリとかだったりして――
「……あのさ、明日香と今日中に話してよ。自分から声掛けて。あいつの事だから意地張って、絶対相手から話すまで話さないから。そんで、俺のほうからも謝ってたって言ってよ」
「なっ。え、それって」
「簡単に言えば、俺の分も仲直りしてほしいって事」
それ、全然簡単じゃないじゃん!
「男に二言はないからな。いいだろ、無料だし、結構簡単だろ?」
「全然、簡単じゃないよ!」
「あー、はいはい。ほんじゃ、よろしく」
光樹君がまた笑い出す。「変えてよ!」ってねだるが、光樹君は笑い続けたまま。そのとき、バスが到着して、俺の中学校の制服を着た人たちが降りてきた。
今日は、卒業式でした。先輩方々の、ですが。
式中に、けっこう人が倒れてしまいました……。




