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特別な関係  作者: 夜明け
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十一笑 気まずい俺と彼女

 俺はちらりと彼女――明日香ちゃんを見た。明日香ちゃんは、いつもと変わらない顔で給食の支度をしていた。俺も、昨日の明日香ちゃんの言葉通り、友達と仲良くしてみた。そして、いつもと変わらない午前中が終わった。

 ただ違うのは、俺とまだ、朝から話していないこと。昨日の話はもう、あれで終わったはずなのに、なんとなく気まずい。こういう時ってやっぱり男子から声掛けなきゃいけないかなぁ。そんな風に思いながら、給食の支度をし始めるとと、急に怒鳴り声が聞こえた。


「話すことなら、たくさんあんだろ!」


 驚いて振り向くと、光樹君が明日香ちゃんに向かって怒鳴っていた。どうやら、昨日の事で話しているらしい。

 明日香ちゃんは驚きも泣きもせずに、給食の支度をしながら冷たく言い返していた。



「別にないよ。昨日の話は、あれで、終わったんだって。終わりって言ったじゃん」

「お前の中では、だろ!」

「そう。だから、あたしは話すことなんてないでしょ。あったとしても、話があるのは、あちらさんだから」

「何だ? どうしたんだよ、光樹」


 明日香ちゃんと光樹君が言い合っていると、隼人君がふらりとやってきた。明日香ちゃんは、話を止め、隼人君を見る。光樹君は、ますます眉を吊り上げ、唇を噛んでいた。


「何でもねぇ!」


 それから、怒鳴り散らし、人とぶつかっても謝らずに教室を出て行った。

 俺は、ただ呆然と彼を見送った。それから、彼は俺のために怒ってくれている事に気付いた。

 それから、明日香ちゃんを見ると、明日香ちゃんは隼人君と話していた。にっこりと笑い、先ほどの事何か忘れたような感じだった。

 俺は、モヤモヤを残しながら、何も聞いてなかったように、平然とした素振りを見せた。






 給食も終わり、昼休み。俺は、ドキドキしながら、明日香ちゃんに近づいた。明日香ちゃんはいつもどおり本を読んでいる。


「白石さ――」

「あ、片桐くーん!」


 俺が呼びかけようとしたとき、誰からか名前を呼ばれた。振り返って見ると、今時のような子が話しかけてきた。

 彼女は、確か上田愛美うえだあゆみという子だ。校則違反のくるぶしソックスを履き、髪も方までなのに、背中まで伸ばしている。授業中も平然と化粧をしている子だった。遅刻もするし、サボりもする子だった。いつしか、明日香ちゃんがああいう系の子は苦手だと漏らしていたのを覚えている。


「えっと、何? 上田さん」


 一応、答える。正直、めんどくさいと思った。


「あのねー、バルチッチってゲームを皆でやってるんだけど、やんない?」

「バルチッチ? あー、俺いいや。ちょっと用あるし」


 俺がやんわりと受け流すと、上田さんは、ちらりと冷ややかな目で明日香ちゃんを見た。


「……ふーん。まあいいや。じゃあ、次回ね。そうそう。林間学校だけどさ、一緒にナイトウォーク行かない?」


 ナイトウォーク? 何だっけ?

 俺が不思議そうにしていたのが分かったのか、上田さんはぷっと吹き出した。


「もしかして話し聞いてないの? 悪だねー、君」


 いや、お前のほうが悪だろ。という突っ込みを我慢して、笑って受け流す。


「で、何だっけ?」

「だから、ここの林間学校はウォークラリーとナイトウォークと二つあるじゃん。で、ウォークラリーはこの前、決めた班だけどナイトウォークは当日に四人班を決めるの。で、んー、まあ一種の肝試しをやるんだよ」

「へー。そうだっけか。で、俺と一緒にどうっていうことね」

「そ。どうかな?」

「俺は――」


 俺は、どうしたい?

 言葉が詰まる。俺は今まで、友達が出来ないのが不安で明日香ちゃんに寄り添ってきた。でも、今は友達がいるし、こうして誘ってくれる。そして、昨日、明日香ちゃんは俺のために俺に友達が出来るよるに俺を叱ってくれた。普通なら、友達のところに行く。

 でも、俺は、それでいいのか? これで、一緒に上田さんたちと一緒に行動したら、俺はもう明日香ちゃんとは遊べなくなる。いいのかよ。


「片桐君?」


 声を掛けられて我に返る。俺は曖昧に言った。


「あー、考えとくよ。ごめん、今は迷ってる」


 正直に言うと、上田さんはにっこりと笑った。


「そう。ほんじゃ、考えといてね」


 てっきり怒ると思っていたのに、予想外で、唖然とする。ふうと安堵したとき、上田さんは明日香ちゃんを睨みつけた。


「……白石さんってさ、片桐君をどう思ってるわけ?」


 明日香ちゃんをものずごく怖い顔で睨みつける。俺は、自分の事じゃないのに、びくんと肩を竦ませた。

 明日香ちゃんは動じずに本から顔を上げ、上田さんを見た。


「別に、どうも思ってないよ。あたしと片桐君は何も関係なんかないしね。ただちょっと、片桐君が転入してくる前に知り合いになってただけ」


 明日香ちゃんは睨む事もせずに、逆に笑った。笑うのは予想外だったらしい上田さんさんは何も返せず、「ちっ」と舌打ちをすると戻っていった。

 明日香ちゃんも本に目線を戻す。

 俺はなんとなく声が掛けずらくなって席に戻った。

 やっぱり難しいですね、ハイ……。なんと言うか、これって恋愛小説になっているのでしょうか?

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