十笑 あたしとあいつ
ちょっと、言い過ぎたかも。
あたしは、翌日の四時間目に溜息をついた。国語の先生の声が全く耳に入らない。時計をちらりと横目で見るとあと、三分で終了だった。
今日の午前中、まだ一回も慎ちゃん――片桐とは話してない。昨日、あんなこと言って、気まずいのだ。片桐を見ると、どうやら友達も出来て、けっこうしゃべったりしていた。
「でも、アノ言葉に嘘なんか言ってないし」
そう。あたしは、嘘なんか言ってない。本当のこと。それに、アノ話は終わらせたんだから気まずくなんてないし、反省するつもりもない。自分で自分に言い聞かせた。
キンコーンカンコーンとチャイムが鳴り、あたしは席を立って、給食の支度をした。
「おい、明日香」
あたしが席を横に向けて、隣の席と正面になるように机をくっつけると、斜め右から声をかけられた。
「何、光樹?」
「お前さ、今日一言も片桐としゃべってねーだろ」
「うーん、そうだね」
分かってるよ、と心の中で舌打ちする。
「少しは話せば?」
「は? 用もないのに、しゃべれないって」
あたしは、笑っていってみせた。しかし、光樹はむっとして、突っかかってきた。
「話すことなら、たくさんあんだろ!」
あー、逃げれないか。めんどいなぁ、もう。
周りから、「何だ? 夫婦喧嘩か?」と声がする。
「別にないよ。昨日の話は、あれで、終わったんだって。終わりって言ったじゃん」
「お前の中では、だろ!」
「そう。だから、あたしは話すことなんてないでしょ。あったとしても、話があるのは、あちらさんだから」
あたしが正論を言うと、光樹は声を詰まらせた。あたしは別に間違ってない。
「何だ? どうしたんだよ、光樹」
横から、隼人が声をかけてきた。しかし、光樹は隼人の顔を見ると、ますますむすっとなり、
「何でもねぇ!」
と乱暴に言い放った。そのまま、教室を出る。
「何なんだ、あいつ」
隼人が不思議そうに言った。あたしだって、聞きたいよ。
「なあ、白石。本当に、何があったんだよ」
「別に。何でもないよ。あたし、覚えないから」
「そうか」
ふーん、と隼人が相槌を打つ。
「なあ、白石。今日さ、空いてる? 今日は木曜だから部活休みだろ」
「え、ああ、うん」
「ほんじゃ、ゲームしようぜ」
急な誘いに、あたしの声が裏返る。
「え! まじで言ってんの?」
「当たり前。ついでに、勉強しようぜ」
「あ、うん。分かった。ほんじゃ、三時に行くよ」
「おう」
隼人はにっと笑うと、そのまま去っていった。
隼人と勉強&ゲームかあ。
あたしは、にやけそうな顔を必死に抑えた。
えっと、サブタイトルの章節を変えさせて頂きました。全部統一しないと面倒なんで。ということで、これから“笑”を使いたいとおもいます。