八笑 班決め
朝のHR。あたしらは、少しテンションが上がっていた。もうすぐ、林間学校なのだ。
この学校は、修学旅行と別に、林間学校というものがあり、山のほうの宿泊先で1泊2日過ごすようになっている。
「あと一週間で、林間学校ですね。という事で、新入生も来た事だし、グループ分けします。部屋割りもしましょう。グループは、男女で五、六人。一人でも、仲間はずれにしないようにしましょう」
先生が、教室に入ってくるなり、言った。先生も楽しみにしているようだ。
『ハーイ』
クラスメイト全員が声をあげ、席を立ち始める。あたしも席を立ち、澪のところに行った。
「みーお!」
「おー、明日香! 一緒になんない?」
「もちろん!」
「あ、あの、わたしもいいかな?」
「理沙ちゃん? ……いいよ! あたしらが協力してあげる」
「え? な、何が?」
「まあ、ともかく、女子はこれで決定だね」
あたしらはキャイキャイはじゃぎながら、男子を探す。ちらりと慎ちゃんを見ると、慎ちゃんはたくさんの人に誘われていた。もちろん、女子からも。
……うげっ。姉キャラさんたちもいるじゃん。こりゃ、誘うのは無理だな。
集まっているのは、あたしと気の合わない人ばかりで、あたしの苦手な人ばかりだった。これでは、誘う事ができない。
ま、いっか。光樹たちとなれば。
あたしは、慎ちゃんから目を離し、クラスに視線を泳がせた。……見つけた。やはり、隼人と一緒にいた。
「おい、光樹。あたしらと一緒にならない?」
「ん? ああ、いいけど」
光樹はちらりと、慎ちゃんのほうを見ると頷いた。どうやら、こちらも誘うのは無理だと判断したみたい。
「ところでさ、隼人はいいの?」
「何が?」
「だってさ、たくさんの人から誘われたんじゃねーの?」
「え? なんで? まあ、来たけど」
あたしが隼人に訊く。
隼人はクラスの人気者でもある。何かと面白い冗談を言うし、頭はいいし、運動もできる。アニメ好きっていうのは、学校で隠してるらしく、それによって、周りの人からの印象も良い。こいつなら、あの姉キャラたちもバリバリと話すことができるし、誰とでも付き合う事ができる。
なのに、光樹という、あたしの幼なじみとしてくらししか目立ってない光樹といるのは変なのだ。まあ、あたしも目立つ事やってないけど。
そういう風に言うと、隼人は笑った。
「ああ。だってさ、光樹の方がおもしろいしさ、実を言うと俺もあの人たちは苦手だし。だったら、光樹と幼なじみのお前らのほうが、話やすいしさ」
「……そう」
これは誤解してしまう台詞だぞ、おい。思わず、頬が赤くなる。
そうやってあたしらが会話していると、声がかかった。
「あ、明日――白石さん。光樹君、隼人君。一緒に班にならない?」
この声は――やはり慎ちゃんだった。慎ちゃんは、やっとの事で、抜け出して、外れているあたしらに話しかけてきたのだ。
「お、慎ちゃん。慎ちゃん一人ならいいよ。そうじゃないと入らないし」
「あ、一人だよ。」
「じゃ、いいよ」
あたしは、返事をして笑って見せた。
慎ちゃんの後ろを見ると、他のクラスメイトが不思議そうに、妬みも含んだの視線を向けていて、あたしは慌てて目を逸らした。
放課後のチャイムが鳴った。今日は部活がない日だ。さっさと帰ろう。あ、澪たちと遊ぼうかな。光樹も誘って、理沙ちゃん誘って――
あたしが、そう、放課後の日程を頭に組み立てているといつものように声がかかった。
「帰らない?」
この声は、光樹じゃない。光樹はこんな言い方しないし。誰かと思って振り向くと、そこに立ってたのは慎ちゃんだった。
「あ、慎ちゃん?」
「うん」
頷くと、慎ちゃんはキョロキョロ辺りを見渡した。
「明日香ちゃんさ、昨日部活だったじゃん。俺、部活、まだ決めてねーからさ。昨日は帰宅部の人たちと帰ったんだけど、今日、部活ない日じゃん。よかったらどうかなーと思って」
「え……っと」
返事に困っていしまう。あたしは声を詰まらせ、光樹を探した。
あ、いた。
「あー、光樹とあたし、いつも帰ってるんだけど――」
言いながら光樹に必死にアイコンタクトを取る。光樹も気付いて、一瞬慎ちゃんを見た後、こっちに近づいてきた。
「いいんじゃねーの。明日香がいいなら、よ」
「あ、光樹君と一緒に帰ってるんだ。明日香ちゃん、明日香ちゃんが良かったら一緒に帰りたいんだけど」
「……あたしは、もちろんいいよ」
あたしは、苦笑いを浮かべて、光樹を見た。
なんか、光樹、不機嫌そう……?
私の学校は本当に林間学校が中学一年のときにあるんです。まあ、修学旅行は三年ですが、今回の話は、一年にあるという設定にさせてください。