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変化者の唄  作者: こげら
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閑話 酔狂と呼ばれる者

 ずっと、不思議に思っていた。何で私達は地下でしか、暮らせないのか。

外は、地上は何があるのか。本を読んでも分からなかった。


お母さんに聞いて見たら、何を言うの!と怒られた。 お父さんに聞いたら、すごい剣幕で、怒鳴られた。

「ああ。考えちゃいけない事なんだ」


幼い心にそう刻みこみ、ずっと蓋をしてきた。


けど、20才になった時、とある男の人と出会った。30前後くらいの、くたびれたような、男性。 聞けば、とある活動家グループのメンバーだと言う。

 男の人からは、地上の話しを聞けた。男の人は、すごく少ない、変化者だった。

わくわくした。

 地上は、すごく静かな事。黒い雨が降る事。

黒い竜巻が巻き起こる事。

すごく怖そう。

 でも、竜巻の後に、暖かい光が差す事、天井から落ちて来る光りは凄く綺麗な事も教えてもらった。

 

わたしは、その男性と付き合う事になった。

ただ、誰にも言えなかった。相手は、変化者。

人間の敵。ううん。人でも、獣でもない、化け物。 ただ、外の話しは面白かった。

いっぱい、ねだっていっぱい話してもらった。

ある時、活動家グループのリーダーを紹介してもらった。[命の木陰]のリーダー。

 危険しかない地上で、どうしたら、生活できるかを考えていたら、異形者も変化者も人間も一緒に生活しなければ、絶対に無理という結論に行きつき、皆が平等に生活出来る環境を作ろうとしている、活動家グループ。

その時は、興味はあまりはなかった。


ある日、彼が私の部屋に泊まった後、別れ話をされた。

凄く泣いた。怒った。

しかし、彼は私を優しく撫でて、遠くへ行ってしまった。

種族の身分の違いの壁は高過ぎた。[最高位と最低位]

彼と別れて、なぜ、変化者が疎まれ、差別されるのか、わかった気がした。 うらやましい。何にも縛られる事のない種族。

外でも地下でも地上でも、自由に生きる事ができる種族。

本当にうらやましい。 

 

私は、彼と別れた後で、彼が見ていた世界を見たくなった。

だから、私は、グループに入った。[命の木陰]に。外を地上を見る事ができる、数少ないグループ。



 しばらく平穏が続き、突然、グループの基地が騒がしくなった。何か、危ない物が出て来たらしい。

何人も地上へと上がって行った。


そして、黒い人型の化け物を連れて帰って来た。

そっと触れるとぬるっとした。化け物は血だらけだった。

腕も良く見たら、ちぎれかけていた。 背中の角は、少しだけ白く見えるけど、ほとんど割れて、中から、だらだらと何かを流していた。


黒い化け物は、使われていなかった、放射能濃度の高過ぎる部屋に入れられ、寝かされた。 

 しばらくして、黒い化け物から、白い煙のようなものが立ち込め、傷が治って行くのが見えた。


「酔狂との間に生まれた、変化者か。俺たちの理想の一人だな」


リーダーがぼそっと呟いた。


人間と変化者の間に生まれた子供は高い自己再生能力を持つ。不死の存在とまで言われているくらいに。


私も彼との間に子供が出来ていたら生まれていた存在。

ただ、それは私の命を確実に取って行く存在。 


人間と変化者の間の子供は、母親が変化者でなければ、無事に生まれる事すら難しい。そして、母親の命は確実に持って行く。


呪われた存在と言われている理由。


しばらくして、白い煙が落ち着くと、彼の体が肌色に変わって行くのが見えた。


「初めて見た。変化するところ」


私は、じっと彼を見つめる。


そして、あわてて服を取りに行くことになった。


彼のたくましい身体つきを思い出しながら、元彼を思い出しながら、どの種族も着ない色の服を引っ張り出して、彼のところに戻る。


20才のころを思い出して、変化者にどきどきしてしまう私は、本当に酔狂な者かしらと思いながら。


けど、また、新しい物語が聞けるといいなと少女のようなわくわくした気持ちを抱えながら、私、ロミュは彼の世話をする事を決めていた。




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