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変化者の唄  作者: こげら
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変化者と化変者

真っ暗な中、少しオレンジ色のラグビーボールが走って行く。

 どうした事か、コロニーからの攻撃は止んでいた。そして、激しい衝撃と共に、コロニーのドックの中にストリゴイは突っ込んだ。


「痛ってぇ。着いたか」


『無事ではないですがやっと目的地です』


ラディの声に律儀に返事をするシャル。


「じゃあ、行って来る」

『はい。行ってらっしゃい』


ラディが船を降りるのを確認すると、シャルは自身の確認を行い始める。


『あの子の帰る場所は、絶対に守らないといけませんよね?あなた』

自身の魂を封じ込めたメインシステムが壊れていないことを確認し、防衛システムの一部を起動する。


ラディを送り出すシャルの目は、どこまでも穏やかだった。





「本当に広いなっ!」


ラディはかなりの間、走り回っていた。

こう、手かがりがないと、アムの察知能力が欲しくなる。

だが、走り回っていれば、アムが見つけてくれるはず。

 全く疑う事もなく、ラディは広い廊下を勘で走るのであった。




「ラディ。ラディ!」

部屋を抜け出したアムも走っていた。

自分の勘が、ラディが来たと伝えてくる。


自分の感覚がラディがこの建物の中にいる事を伝えてくる。

 空気の流れから、足音から、匂いから、ラディを見つけようと全てをラディにあわせて、アムは走っていた。


しかし、ラディを探す事に集中しすぎたため、絶対に会いたくない者が近くに来ている事に気がつかなかった。


角を曲がった時、アムはそれを見てしまい、体が動かなくなった。

目の前に黒いマントがいた。


恐怖が、感情が溢れすぎ、体全身が震え出す。


「あ、あ、あ」


声にならない声を出した時、ギウはアムを見つけて、うっすらと笑い、その髪を掴んで持ち上げた。


10代前半の軽い体が片手で持ち上げられてしまう。


「ちょうどいい。付き合え」

ギウはそれだけ言うと、髪を掴んだまま、アムを引きずり出す。


下部にある、訓練場に向かって。





「アム?」

ラディは何か嫌な感覚を覚えた。

こんな感覚は初めてだったが、何故か納得も出来た。[自身のパートナーが危ない]という、確信に満ちた感覚。

ラディは自分の勘を疑いもせず、下部に向かって走って行った。




ラディが、訓練場に入った時、ギウは、アムを掴んだまま、中央にたたずんでいた。


「来たか」


ギウはラディを見ると、アムを床に放り投げる。


ラディは奥歯を噛みしめ、ギウをにらみつけた。


「半端者のくせに、いい顔をするではないか。身分と言うモノを教えてやろう」


ギウは、右手を振る。

ラディは、危険を感じて横に飛んだ。


ラディの後ろが、爆発したかのように煙を上げた。

しかし、そんなのは、お構い無しに、ラディは走り始める。


あと、ちょっとで拳が届く。そんな距離に来た時、ラディは再び嫌な予感がして立ち止まる。

次の瞬間、ラディの胸から血が流れ出した。


「さすが、獣。勘がいいな」

呟くギウの右手に、長細く透明な何かが生えているのが分かった。少しだけ、後ろの景色が歪んで見える。


「光学迷彩と言うらしいぞ。見えない刃、楽しむがいい!」

ギウが叫びながら、さらに右手を振る。


ラディは、再び後ろに飛び避けたと思ったが、自分の周りで光りが弾け、周りが一瞬激しく光り爆発する。

強力な電気による、爆発玉と言うべき物だった。


皮膚を焼かれながら、吹き飛ばされるラディ。

自身の再生も、始まらない。


「さあ、少しは楽しませてくれよ?今までのお礼にいたぶってくれるわ」


にやりと笑いながら、ギウは、右手を振る。


アムに向かって。


アムの胸あたりが光り、弾けた。何度も。


血と、悲鳴とアムの体が空中を跳ね回る。


「やめろぉ!」


それを見た、ラディの怒りは限界を超え、無理やり自分を変化させる。 自分の命を削り。


黒く変化し、弾丸のようにギウに突撃し。体当たりを行うラディ。


ギウは、アムで遊んでいたため、反応が遅れた。

激しい衝撃と共に、車に弾き飛ばされたかのように、空中を舞うギウ。

驚いた表情を見せるも、空中で態勢を整え、普通に地面に着地する。

かばった左手は、ひしゃげてしまい銀色の骨格が見えていた。


血一つ流れないその異様な姿に、呆気にとられるラディ。


「ふふふ。生物の体は脆弱だからな。私は、昔の力を使い人を生物を越えたのだよっ!」


ギウの右手が再び光り、ラディの周りが弾ける。

ラディも、生物の限界を越えた動きで光りの爆発をかわすと一気にギウとの間合いを詰めた。


ギウは左手を右手で握り潰し、その左手をラディに向けた。

一瞬。ギウの左手が光り。

左手から、ビームの激しい光りがラディに襲いかかった。


視界を埋め尽くす、赤い光りに飲まれたラディは、床にうずくまった。

全身から、()()煙をあげながら。


「もう、終わりか?半端物」


ギウは、ラディの頭をつかむと自分の視線の上まで持ち上げる。


「がはっ!」


ラディの体に、小さな穴がいくつも空いた。

ギウの左手はラディに押し付けられ、ラディの体は、空中に持ち上げられたまま、何度も跳ねた。




「ラディ?!」


アムが、悲鳴のように叫ぶ。

自分も血まみれだが、ラディに近づくために、両手を必死に動かす。

その目の前でラディの体がひときわ、大きく跳ねて吹き飛ばされた。


お腹に絶対に空いてはいけないサイズの穴が空いている。

ラディになんとか抱きついたアムは、ラディをしっかりとその体に包み込む。


「死なないでっ!誰かっ。助けて・・」

泣きながら、ラディのなくなった部分に自分がなりたいと言わんばかりに、体を押し付けるアム。



「何っ!」


突然、ギウが叫び声を上げた。


ラディの体から、一気に()()煙が立ち上ぼり出したのだ。


激しい勢いで再生を始めるラディ。


「貴様っ!何をしたぁ!」


ギウが叫び、左手を二人に向けた時、ギウの左腕が付け根から飛んだ。


「何もしてやれなかったからな。()()()()()()()してやらんとな」


刀をもう一振りして突然に現れた男が呟く。


「貴様っ、まさか中和装置を」


「面倒な事になりそうだから、壊させてもらった。意外とあっさり潰れたな」


「貴様ぁ!」


ギウは、右手を振る。

現れた男も刀を振る。


二人の剣劇は激しく続いていた。




「ラディ、ラディ」


アムは、ラディをしっかり抱き抱えて、泣いていた。


ゆっくりと意識を取り戻したラディはアムの頬を撫でる。


「アム、待たせたな」

ラディが呟くと、アムは泣き笑いながら、しっかりとうなずく。

そして、再びラディの体をしっかりと抱き抱えた。


アムの体も紫色に変化していたが、二人の体の周りには、キラキラと光りの粒子が飛んでいた。











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