変化者 駆ける
こんな つたない作品を読んで下さる方へ。
本当にありがとうございます。 もしよろしければ、最後まで、読んでいただければ嬉しい限りです。
コロニー内では、初めてと言っていい、緊急のサイレンが鳴り響いていた。
「所属不明機、なおも接近中。こちらの質問や問いかけに返答なし」
「我が、[原初の知恵]に、該当する船の照合なし」
今の時代、大気圏を抜け出せる船など、数隻しか存在していない。
そして、宇宙に出れるということは、それだけで無類の硬さを誇ると言う事を示していた。
「正体不明機、軌道上に乗ります。目的地はここと思われます」
「誰かは知らんが、投降勧告を続けて行え。まだ、こちらの射程内までは時間がある。迎撃用のレーザーは全て起動し、待機だ」
黒ずくめの男ギウは、モニターに映った丸いフォルムの船を凝視していた。
「中があんなに熱くなるなんて、聞いてないっ!」
ラディの怒号が不滅船ストリゴイの船内で響きわたる。
めちゃめちゃ熱かった。肉が焦げる匂いを無理やり嗅がされていた。
高い放射能濃度と、普段より、何が起きたかはわからないけど、いつもの数倍早い回復がなかったら間違いなく、ラディは跡形もなく、消滅していた。
『起動したばかりで、いろいろな設備がまだ、復旧してないですから。私、あまり飛んだ事も無いですし』
悪びれる事もなく、返事をするシャル。
メインシステムでもある彼女は、普通に船内に立っている。
彼女がいる以上、特に操縦席が必要な訳でもなく、ただ広い部屋にラディが座っているだけであった。椅子もまだ作成中のような、無骨なずっと座っていると痛くなりそうな物が突き出ているだけである。
『このポンコツが』
ラディは思わず、呟く。
ストリゴイの機関は、核融合炉エンジン。永久機関仕様なのだが、放射能がだだ漏れで、船内では、人間が滞在できる濃度の1万倍を軽く越えている。
中和装置は、積んですらいなかった。
シャルいわく、『中和機能付きの腕輪があるから、それをつけて乗ればいい』なのだが、人間を乗せて動く作りになっていないのは、明らかであった。
速度だけは速いのだが、全空モニターと言う形であるため、慣れないと無茶苦茶怖い。ちなみに、住んでいた時に窓と思っていたガラス部分も、ガラスのように見えている、モニターと言われ、ラディは呆気にとられていた。
無駄に高い技術が、どうでもいいところにふんだんに使われている船なのだ。
モニターの一部には、拡大されたコロニーが映し出されている。目視では、足の小指の爪ほどもない大きさである。
『さっきから、いろいろ、腹の立つ口調で通信して来てますけど、私、まだ音声通信設備は修理中で使えないんですよね~。とりあえず無視でいいでしょ』
ボソッと呟く、シャル。
そんな呟きを発した後、衝撃が船を襲った。
「なんだっ!」
ラディは叫ぶがシャルは、普通に、
『向こうが撃って来ました。数隻の船の発進を確認。やる気ですねっ』 と返す。
「というか、今の一撃で、損傷20%て出ているんだが?一撃で。えらく、機体が赤く表示されてるが?」
ラディが心配そうに訪ねる。
『移動に必要な場所の損傷は免れて・・』
再び衝撃。館内にエラーアラームが鳴り響く。
『あ、エンジン周辺に被弾。出力30%低下』
「もろすぎだろっ!機体損傷率40% 帰れ。て出てるしっ!」
『私、不滅船ですから。不沈船じゃあ無いので。だから最初に言いましたよ。落ちる時は、落ちるモノです』
普通に、今日のご飯は何ですよ。ぐらいの感覚で普通に話しをするシャル。
『あ。第3波来ます』
落ちる!ラディが身体を丸め、衝撃に備えようとした時、前方に青白い、丸い玉が3つ浮かんだ。
大きい3角形を作り、船の前方に巨大なバリアを作り出す。
コロニーからのビームはそのバリアに弾かれた。
「助かった?」
『ナノビットの精製が間に合って良かったです』
見れば、巨大な三角形の盾がビームを弾き飛ばす。
モニターの端には、船体修理中の文字。
損傷率35%とある。
「修理速くないか?」
『この船は、不滅船。船体は修理特化してます。武装は全て外付けですね』
シャルは、そう返事を返す。
『かなりギリギリで、システム修理できて良かったです』
と小さく呟きながら。
「何か言ったか? けど、これで行けるっ。シャル行ってくれっ」
『全速力で、コロニーに向かいます』
光りを放ち、吸血鬼は加速し始めた。
コウモリのようにビットを周りに飛ばしながら。
ギウはモニターを見ながら、歯ぎしりをしていた。
通信を何回も試みるも、返答なし。
威嚇射撃で数発打つと、普通に当たり。
沈めてやろうと最後の一発を打つとバリアで弾かれた。
今、調子にのったのか、正体不明機は、全力で突撃して来ている。
妙に自分をイラつかせる船であった。
「全力で落とせ!何をして来るか分からん」
ギウの声に、コロニーからの火線が一気に増える。
コロニー側の船は、突撃して来る船を囲むように、移動を開始し始める。
強く握りしめたギウの拳は、鈍く光りを発していた。
突然鳴り出したアラームに、ゆっくりと体を起こすアム。
アラームは、しばらくしたら止まったが。
「ラディ?」
自分の好きな人が近くまで来ている。そんな気がしたアムは、混乱の中、かかっていなかった鍵を開けて廊下に出て行った。
大好きなあの人に会うために




