プロローグ
昔に友達に配った作品の修正版になります。
紙媒体がぼろぼろになったので、ちょっと間借りして保存いただけばの気持ちです。
導入部がくどいなら飛ばしてかまいません。世界観の説明だけなので。 後 この作品には、差別用語、差別意識、暴力、など胸クソと言われている表現も含まれています。虐げられた者たちの話しですので、苦手な方はスルーしてください。
真っ暗な森の中。静寂が支配する森の中を、一つの影が横切った。
月明かりの中に浮かび上がった、その姿は、人ではない。獣でもあり得ない。異形。そう言うに相応しい姿であった。 黒い体に、紫の髪。目は赤色のみで、皮膚はサメのようにざらついて見える。背中には、真っ黒な角が羊の角のように飛び出ている。
森も木そのものが黒く、手入れすらされていないため、森は黒に支配されていた。
唯一、月明かりが色を見せてくれる明かりだった。
今、異形の者が追いかけている生物。その姿もまともではない。
黒い斑点が、その体中についている、脚が6本ある、馬のような生き物。
そして、異形の者は、風を置き去りにする速さで、おかしな馬を捕まえ、あっという間に首をへし折る。
「やれやれ、やっと獲物が狩れたか」
突然声がした。
「馬一頭捕まえるのに、何日かかってんだか」
その声が続ける。
「うるさい、サボり魔が。お前が半日以上寝てるから、こんなにかかったんだろうが」
黒い異形の者が反論する。
奥から出てきた声の主は、肩をすくめた。
その姿も普通ではなかった。
ワニのような皮膚を持ち、体は赤茶色。角は無いが、目は青色一色で、白い髪であった。
「さっさと帰るからな」
黒い異形がそう言うと、馬を肩に担いで動き出した。
といっても、速さがおかしかった。ゆっくり歩き初めている初速から、競輪自転車の最速並みの速さである。
もう一回肩をすくめるともう一体の異形も森の中に消えて行った。
ここは、緑豊かな星として、長年生き続けていた。地球とほぼ同じ大きさ、ほぼ同じ環境の星。
いや、そう思われていた。少なくとも、数千年前までは。
歯車が狂ったのは、たった一つの種族が現れた後。
人類と呼ばれる種族。
彼らは、いつからか、核と呼ばれる、超兵器を持っていた。
そして、その力を影響をろくに調べる事もなく、全面戦争に突入した。
核は地表を乱れ飛び、結果、日が全く差さない日々が過ぎ、暗黒戦争と言われる泥沼の中、地表は死んだ。
動物は、全て生き絶えたかと思われだが、生命は形を変えて生きていた。異形の者と呼ばれる物へと変化をとげた。
もちろん人類も例外ではなかった。
今、星にいる大半は異形の者。彼らは、核廃棄物の混ざった物を食べ、放射線のあるところでは恐ろしい能力を発揮し、恐るべき長寿を可能にしていた。
それは、進化なのか、退化なのか。それは誰にもわからない。
ただ、今の環境を生き抜くためには、その姿が一番良いのだろう。
赤と黒が支配する星、昔、緑星と呼ばれていた星の今の姿だった。