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壊れスキルで始める現代ダンジョン攻略  作者: 君川優樹
1章 【WEB版】壊れスキルで始める現代ダンジョン攻略①
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5話 その奥は見ちゃダメ! 絶対見ちゃダメー!


「いやあ、私も長ーいことダンジョンを彷徨っていたんですけどね! よーやっと外へ出れそうなんですよ!」


 先導しながら羽でヒラヒラと飛び回るケシーは、後ろ向きになって俺に向き合いながらそう言った。


「ということは、もう出口まで近いのか?」

「近いなんてもんじゃありませんよ! もうすぐ、ほんのちょびっと! すーぐそこに、出口が形成されているはずです!」


 ケシーはそう言って、嬉しそうに笑った。


 身体がうすーく発光しているケシーは、背中に羽の生えた、手のひらサイズの少女という感じだ。

 そして、その身体には……なんというか、服を一切れも身に纏っていない。

 言ってしまえば全裸状態。なんというか、そういうタイプのフィギュアを彷彿とさせる。


 後ろ向きで目の前を飛んでいると、彼女のプリンとしたお尻が丸見えだ。前を向いたら前を向いたで、色々と丸見えなのだが。そこばっかり見ていたら申し訳ないな。しかし気になる物は気になるわけで。


「うぅぅ……長かったですねー! こーんな暗くて窮屈で広大なダンジョンに閉じ込められてから、苦節4年間という感じですよ! 体感ですけどね!」

「4年間?」


 4年といえば、この世界に初めてダンジョンが出現したのも4年前。

 それは一体、どういうことなんだろう……考えれば何かわかるような気もしたのだが、今は頭が回らない。それよりも歩き回ったり走り回ったりで、足やら何やらが痛んでいた。


「おぅっ!?」


 何かを察知した様子のケシーは、身体をビクつかせると、ヒラリと道の先まで飛んで行く。


「ど、どうした!? あんまり離れないでくれ!」

「キタキタキター! もうビビーッと感じましたよ! 敏感妖精なケシーのレーダーに、ビビビーッ! と反応しましたね!」

「出口か!?」


 俺が叫ぶと、折れ曲がった道の先に向かおうとするケシーが声を返す。


「そう! この先が、ダンジョンの出口……に……」


 先に曲がり角の向こう側へと飛んで行ったケシーを追って走ると、ケシーがひらりと戻って来た。


「どうだ!? 出口はあったか!?」

「あー……あのですねー……」


 ケシーは頬っぺたを爪で掻きながら、バツの悪そうな顔を浮かべた。


「や……やっぱり……別の出口を探しましょうか!」

「えっ、なんで?」

「い、いやー。この出口からは出たくないなーって、思ってですね」

「……なんだそれ?」

「だ、大丈夫ですよ! ここを見つけるのに4年かかりましたけど、もう4年くらい彷徨えば別の出口を見つけられるはずです!」

「いやいや、そんな彷徨えねえよ。俺のことも考えてくれ」


 俺がそう言って曲がり角の向こう側を確認しようとすると、ケシーが俺のシャツを引っ張った。


「うおー! 見ない方が良いですよー! はい! 見ない方がいい!」

「は!? なんで!?」

「希望は希望のままにしておいた方が、精神衛生上ね! 絶対良いですよ!」

「いやいや、そんなこと言ってられないんだ。スマホの充電だって、もう60%切ってるんだぞ」

「ぐわー! 見ないでー! 絶対見ない方が良いですってー! ズッキーさんは下等でメンタル激弱な人間種なんですからー! せっかく出来た話し相手が精神崩壊されたら、私だって困るんですからー!」


 手のひら全裸少女にそんな風に叫ばれながら、非力すぎて何の抵抗も感じない制止を振り切る。


 曲がり角の向こう側に、顔を伸ばしてみると……


 そこは薄く輝く水晶で形成された、どでかい洞穴のような空間だった。

 内部は温度が低いようで、地面や壁が氷と雪に包まれている。


 白雪が降り積もる洞穴には、全体を左右から包み込むような傾斜があった。その坂道を登って行った先には穴が開いており、日の光らしきものが差し込んでいるようにも見える。


「やった! やっぱり出口だ! ……って、うん?」


 喜んだのもつかの間。


 その洞穴の、中央の奥側には……


 大きな図体を丸めて寝入っている様子の……RPGゲームで何度となく見たことがある、巨大かつ強力なモンスター。


 いわゆる、ドラゴンが鎮座していた。


 しかも、明らかに氷系の全体攻撃をしてくる奴だ。

 きちんとレベル上げをしてこなかったプレイヤーを咎めて、絶望の淵に叩き落してくるタイプのボスだ。

 少年はみんなそうやって、ボスに挑む時はちゃんとレベルを上げて、なおかつ万全の状態で、必ずセーブをしてから挑戦することを学ぶのだ。


 俺はその光景を眺めると、一瞬、固まってフリーズした。


 そして何も言わずに、スタスタと歩いて来た道をいくらか戻る。


 俺はそのまま地面にしゃがみ込むと、頭を抱えた。


「…………見なきゃ良かった……っ!」

「だーから言ったのにー! ばかーっ!」



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