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壊れスキルで始める現代ダンジョン攻略  作者: 君川優樹
1章 【WEB版】壊れスキルで始める現代ダンジョン攻略①
35/110

35話 ルチャ・リブレ顔負けの裏山空中殺法だ!


 ケシーの声が頭に響いて来たのか、オーガに下着を剥がされている途中のキャロルは、不意に驚いたような表情を見せた。彼女の眼が泳いで、地面に倒れている俺の方をちらりと見やる。


 十数秒間のラグがあってから、ケシーが俺の意識に戻って来た。


 『簡単に説明しておきました!』

 わかってくれたか?

 『まあ、とりあえず! ビックリしてましたけど、状況を受け入れることを優先してくれましたよ!』


 あっ、それと! とケシーは付け加える。


 『動けるかどうか聞いてみたんですけど! ちょっとなら大丈夫そうって話です!』

 本当に?

 『どちらにしろ隙を見て、一撃食らわすつもりだったみたいです。やや時間も経ったので、ほんの少し回復したって言ってました!』

 よし、それなら……。



 ◆◆◆◆◆◆



 ケシーに仲介してもらい、キャロルと最小限のやり取りで作戦を擦り合わせる。


 チャンスは一度。

 不安材料は大量。


 しかしそれでも、俺が最後に思いついたギャンブルよりも……キャロルとの協議によって、ひとまず実行するのは『上手くいけば確実な方』が採用された。俺の『出来るかどうかすら不明』なギャンブル案は、プランBとして一旦は棚上げにされる。


 俺は『スキルブック』を発動させて、自分の顔横にカードホルダーを出現させた。


『カード化していないスキルを2個保有しています。カード化しますか?』


 2つともカード化するのだが、『はい』に指を伸ばすことはまだできない。


 動き出すのは、そのタイミングが来た時だ。


 指一本も動かない風を装ってうつ伏せに倒れながら、自分をオーガの好きにさせているキャロルが、俺のことをじっと見つめている。その碧眼の瞳には、どういった感情が含まれているのか。とにかく、色々と黙ってて悪かった。上手くいったら……可能な限りでいいから許してくれ。


 キャロルの下着をずり下げたオーガは、その白い下着を太ももに引っかけてしまい、脱がすのに手間取っているようだった。脚を膝から覆う甲冑装備に下着が引っかかり、上手く下ろすことができないのだ。


 焦れたようにその下着を両手で掴むと、彼はそれを両側に無理やり引っ張って、引き千切ろうとした。

 ビリリッという音がして、布繊維が限界まで伸ばされ、そのまま白い下着が左右へと引き千切れる。


 オーガの腕力によって、腿に引っかかっていた下着が完全に破き割かれた瞬間。


 オーガのゴツゴツとした手も何もかもが離れて、キャロルの両足が完全に自由になった。


 その瞬間。


「やぁあっ!」


 突如、両手を思いきり突くようにして地面を押したキャロルの身体が、弾け飛ぶようにして空中に跳び上がる。

 オーガによって全身の衣服も装備も下着も剥ぎ取られて、逆に隠さなくて良い部分しか隠せていないキャロルの裸体が宙を舞った。

 空中で素早く振り上げられた彼女の両足は、四肢の先に装備された甲冑の重みで強力な遠心力を発生させて、彼女の軽量級の身体をくるりと回転させる。


 その瞬間に、彼女の股の間も完全に見えた。

 そういう趣味があるわけではないが、場違いにも、俺は自分の目に録画機能とスロー再生が付いていないことを悔やんだ。

 『聞こえてますよ!!』

 跳躍した先の空中で身体ごと回転させたキャロルの渾身の回し蹴りが、オーガの顎に突き刺さる。


「『チップダメージ』!」


 市場価格20万ドルの高級スキル。

 近年、上級冒険者の間で人気を高めているこのスキルは、当然キャロルも所持していた。


 『チップダメージ』の確定ダメージが物理装甲を貫通して、キャロルの蹴りがオーガに1点のダメージを加える。突然の事態に怯んだオーガは、顎部に受けた鋭い衝撃によってその場に倒された。


 その瞬間に、俺は『スキルブック』の画面を素早くタップして、『チップダメージ』と『ゴブリンの突撃』をカード化する。

 空中にカードが出現し、それは俺の手によって取られるのを待つようにして滞空した。


 こ、こっちのパターンか!


 スキルをカード化するのは初めてだが、この瞬間までいくつかのパターンは頭の中で予行演習を繰り返していた。最悪なのは、カード化したスキルが勝手に本のどこかに納められてしまって探す必要があるパターンだ。とにかく、それ以外で良かった!

 立ち上がりながらカードを二枚とも掴むと、スキルブックを開いて、二枚ともホルダーに装填する。頭の中で何回もイメージしていた通りに、素早くできた!


 ホルダーに納めた瞬間に、一枚のカードを引き抜く。


「『チップダメージ』!」


 スキルブックを通して『チップダメージ』が発動し、俺は確定ダメージ+1の強化効果を得る。

 視界の左側に突然、砂時計のようなゲージが表示された。

 制限時間……こっちはこのパターンか!


 『スキルブック』の挙動を確認しながら命を賭けた実戦を繰り広げる俺は、抜いたカードを即座にホルダーへと戻して、ホルスターから銃を引き抜いた。


 本当は、もう一つだけ試しておきたいことがある。

 だが、今は時間がない。最短で、打ち合わせ通りに!


 ガバメントの銃口を素早く、しかし落ち着いて、オーガへと真っ直ぐ向ける。


 この点に関して、ケシー経由でキャロルから一言。

 落ち着いて、安全装置を外して、しっかり握り込んで。


 俺はそのようにした。


「うぉおおっ!」


 全力で握り込んだまま、コルトガバメントの引き金をがむしゃらに引く。

 激しい銃声が狭い洞穴の中で反響して、鼓膜がキンと鋭く震えた。

 オーガに不意打ちの一撃を食らわせて怯ませたキャロルは、地面に着地した後は姿勢を低くして伏せている。打ち合わせ通りだ。ここまでは打ち合わせ通り。


 ガバメントの総弾数は7プラス1発。らしい。

 最後にセットしたのは俺では無いので、よくわからない。

 その全弾をオーガに向けて撃ち込むが、何発当たったのかわからなかった。想像以上に反動が激しくて、狙いが右上に逸れてしまったのが自分でもわかる。


「ミズキ! 残り13点だっ!」


 キャロルが叫んだ。


 『龍鱗の瞳(スケイル・アイズ)』の『解析』で、オーガのステータス情報を抜いたのだ。

 つまり、元HPが15だから……俺とキャロルを合わせて2点のダメージ……

 俺の銃撃は、たった1発しか当たらなかったってことか!


 絶望的な射撃センスを嘆いても仕方ない!

 一発当たっただけでも良し!


 空になってスライドが引かれたままのガバメントを無理やり元のガンホルダーに納めながら、地面に転がるアサルトライフルを拾うため、俺は転がるようにして銃に飛び付いた。

 やはりアサルトだ! キャロルによれば30発入っている! とにかく撃ちまくって三分の一を当てりゃあいい!


 『ズッキーさん!』

 ケシーの声と同時に、どこかからパチリと電撃の予兆が聞こえた。


 ぐっ……! まずい……!


「やぁあっ、あぁっ!」


 オーガの足元に転がっていたキャロルが、倒れた状態から再び跳躍して、その黄色肌の身体に飛び付いた。


 キャロルはオーガの肩に両足をかけるようにして、何も履いていない直の太ももで首を挟み込むと、両足の甲冑を絡めて股で顔をロックし、前腕に装備した甲冑の重みによって遠心力を味方に付ける。そのまま腹筋の力も利用して身体を素早く折りたたむと、オーガの首周りでコンパクトにクルリと回転して、その首を折らんとする勢いを利用して投げ飛ばす。


 ルチャ・リブレ顔負けの空中殺法! どこが少しだけは動けるだ! すんげえ身体能力! あとちょっとうらやましい!


「『チップダメージ』ッ!」


 投げ飛ばされたオーガの身体が、頭から地面に突きささる。


 岩壁から俺を狙っていた電撃の軌道が逸れて、代わりに目の前のアサルトライフルを直撃して吹き飛ばした。


 判定はわからないが、おそらく1点追加!

 残り12点!


 しかし……


「ぎゃっ! ぁああっ!」


 投げ技から着地しようとしていたキャロルが、空中で電撃に捕らえられた。

 彼女はそのまま着地に失敗して、地面に転がる。

 最後の力を振り絞っていた様子のキャロルは、それで完全に沈黙し、動かなくなってしまった。


 奪取しようとしたアサルトライフルは、電撃の直撃を喰らってプスプスと煙を上げている。他の小銃を探そうとした瞬間、辺りに何発もの電撃の音が鳴り響いた。


「うおおおっ!?」


 しかし、その電撃は俺を襲ったわけではなかった。

 地面に転がっていた重火器を一斉に襲った電撃は、頼みの綱をまとめておしゃかにしてしまう。


 くそっ…………!


 立ち上がろうとするオーガは、俺を睨みつけて狙いを定めている。

 あとは撃ち切った拳銃と、腰の予備弾倉3つだけ!


 しかし奴も、連続で電撃を放って疲れた様子に見える!


 与えられたほんの少しの猶予と、スキルブックと、空のコルトガバメント。


 残り12点!


 仕方ない!

 ここからは、ギャンブルのプランB!


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