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壊れスキルで始める現代ダンジョン攻略  作者: 君川優樹
1章 【WEB版】壊れスキルで始める現代ダンジョン攻略①
20/110

20話 隣人同士、よろしく頼むよ


 詩のぶを家まで送ると、まずは彼女の親御さんに事情を説明することになった。


 ジャケット以外は裸だった詩のぶに服を着替えてもらってから、彼女の親御さんと一緒に警察署へと出頭し、当直の警察官に話を聞いてもらう。聴取を受けて簡単な調書を作ってもらうと(警備の人間がめちゃくちゃ寝ていたという話もちゃんとした)、あとは後日、もう一度警察署に出頭して欲しいということになった。


 全てを終えると、もう深夜だった。


 俺はアパートへと戻るため、疲れ切った身体で車を運転している。


「なんだか疲れましたねー、ズッキーさーん」

「ああ……心配なことは山ほどあるが、今日はもう寝る」

「賛成ですよー」

「ハンバーガーでも食うか」

「おおー、いいですねー……」


 どうやら、ケシーも疲れ切った模様だ。


 国道沿いのハンバーガー屋にドライブスルーで入り、ポテトとハンバーガーとオレンジジュースを頼んだ。車内で注文が来るのを待っている間、俺は新しく取得したスキルについて、スマホで調べてみる。


 『ゴブリンの突撃』……強化(バフ)スキル。必要レベル15。ランクD。

 1ターンの間、あなたが与える近接物理攻撃ダメージに+3の上方修正を加える。


「1ターン?」


 俺の肩に乗っかってスマホの画面を眺めていたケシーが、そんな疑問符を漏らした。


「1ターンってのは、スキルの効果が持続する、継続時間のことらしいぜ」


 どうやら、こういった強化スキルや魔法の持続時間というのは、一定の時間法則で区切られているらしい。その時間単位を『ターン』というのだ。1ターンは大体、十数秒間を指す。研究で正確な時間はわかっているはずだったが、ネットで聞きかじった知識のためにちょっと思い出せない。


 『ゴブリンの突撃』の価格は、百万円いかないくらいだった。スキルの評価を見てみると、どうやら半永続的に確定ダメージを付与する『チップダメージ』とは異なり、1ターン限定であること、発動にインターバルが必要で連続使用が難しいこと、近接物理限定であることなどが挙げられて、ダメージ効率や運用性が悪いとの評価だった。特に、近接物理限定という点が厳しいらしい。


 それでも百万の値が付いているのは、さすが存在自体が希少なスキルといったところか。ダメージ+3がどれほどの威力かは判然としないが……ステータス上は俺のHPが14だから、5発で俺を亡き者にできるなら大したもんだ。あれ? やっぱり大したことないのか? 金属バットの方が威力がありそうだぞ。

 いや、それは頭にフルスイングされた時だけか。5発で殺されるのは……普通に、小口径の銃弾並みかもしれない。入手方法としてはゴブリンを倒した際に、稀にドロップするらしい。


 注文の紙袋を受け取ると、俺はアパートへと真っすぐ車を走らせた。

 ハンドルを繰りながら、助手席に置いた紙袋を探って、開いた状態にしてやる。


「ケシー、お前ポテトとか食べてていいぞ」

「いいですよー。家に帰ってから一緒に食べましょー」

「そうか。ならそうしよう」


 アパートに戻って来ると、駐車場に車を停めた。そのままハンバーガー屋の紙袋を抱えて、ジーンズの尻ポケットから部屋の鍵を取り出しながら、アパートの階段を上がっていく。


 そういえば……結局、あの洞穴の周囲に電波が通っていたのは、なんだったのだろう。ダンジョンではよくある現象なのだろうか。結局何もかも、調べてみないことにはわからん。とにもかくにも謎だらけだった。


 そんなことを考えて二階に上がると、俺の部屋の隣に、なんだか見たことのある男が入っていこうとしているのが見えた。


 その背の高い、黒髪をオールバックに撫でつけた金と黒のコートを羽織る男は、

 部屋に入っていこうとする直前で俺のことに気付くと、目をまん丸に見開く。


「ミズキ! ミズキじゃないか!」

「あーっと……ヒース?」


 先日にハンバーガー屋で会ったその外国人の男は、扉を開けたままで俺のことを待ち構えた。


「どうしたんですか、こんなところで」

「僕と君との仲じゃないか。敬語なんてよせよ」


 俺とあんたはどういう仲なんだ。

 外人の言うブラザーみたいなもんなのか。


「仮住まいだが、しばらくここに住むことになってね。もしかして、君の家もこの近くかい?」

「隣の部屋っすよ」

「それは良い! とても素晴らしい幸運だ」


 ヒースはニッコリと微笑むと、俺に手を差し出した。


「隣人同士、よろしくたのむよ」

「あ、ああ……どうも、よろしく」

「それに、あの時借りたイチマンエンの礼も返さなくちゃならんからな」

「ああ、別にいいっすよ」


 2000万円のスキルを譲ってもらったもので。

 あのことについては、ちゃんと聞かなきゃいけないな。


「いいや、そういうわけにはいかん。あのイチマンエンでずいぶん助かったんだ」


 ヒースは俺と握手を交わしながら、そう言った。


「何か困ったことがあったら、言ってくれよ。たとえ世界が相手だろうと、一度は君のことを助けてやるぞ」



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― 新着の感想 ―
[一言] 《世界が相手でも》はイケ面過ぎる
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