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壊れスキルで始める現代ダンジョン攻略  作者: 君川優樹
1章 【WEB版】壊れスキルで始める現代ダンジョン攻略①
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13話 ググれスキル


 ネットで検索しても、あのヒースとかいう男の情報は特に存在しなかった。


 同名のハリウッド俳優が居るようだが、残念ながらあの男とは違う。苗字も聞いておけば良かったな、と俺は思った。にしたって、『冒険者 ヒース』とかで検索すれば何か出てきても良さそうなものだが。


「そういえば、あの人からどんなスキルを貰ったんですか?」

「おっと。そういや忘れてた」


 ケシーに聞かれて、俺はステータス画面を開く。

 新規保有スキルを確認すると、『スキルブック』の下に『チップダメージ』というスキルがあった。


「『チップダメージ』?」

「なんか、弱っちそうな名前ですねえ」


 ダンジョンFXのスキル為替の情報サイトを開き、そのスキルを検索してみると……


「『チップダメージ』、ランクA……価格、20万ドル!?」

「20万ドルって、いくらくらいなんですか?」

「ザッと2000万円ってことだよ!」

「わあ! よく考えたら日本円の価値も微妙なので、よくわかりませんでした! でもすごーい!」

「えっ? なになに? どういうスキルなんだ……?」


 『チップダメージ』 必要レベル25

 あなたの全ての攻撃に、追加の攻撃ダメージ1を付与する。

 この追加ダメージは無効化されない。


「えっ? それだけ…?」

「ズッキーさん、下の方にも色々説明書いてるじゃないですか。なんて書いてあるんですか?」


 日本語が読めないケシーのために、俺は声に出してその文章を読んでやる。


「なになに……? 発見当初は過小評価されていたが、ダンジョン下層には装甲持ちや物理無効のモンスターが少なくないため、近年急激に価格が釣り上がっている……流通量が少ないため、億で取引されることも……億!?」


 他にも長々と説明が書いてあったが、つまりはこういうことだ。


 スキルの中には、組み合わせ次第でより大きな効果を発揮する、スキルコンボというものが存在する。このようなコンボは様々な組み合わせが考案されているわけだが、そんな多くのコンボの中心となりえるのが、この追加の確定ダメージを付与する『チップダメージ』らしい。


 単体では決定打になりえないものの、他の強化系スキルと組み合わせることにより爆発的な確定ダメージを実現することができる上……とにかく持っていれば、特殊な耐性持ちのモンスターが相手でも詰むことは無いという使い勝手の良さが評価されている。


 元はフランスの著名な冒険者がその有用性に気付いて、ダンジョンの攻略に使い始めたのがきっかけらしい。スキル価格の暴騰や暴落というのは、こういった有名冒険者の動向によって引き起こされることもある。


「でも、必要レベル25か。俺は10台だからなあ」

「『スキルブック』に入れてみれば良いじゃないですか」

「たしかに。本当にレベルを無視して使えるのかも試せるな」


 俺は『スキルブック』を発動して、その分厚いカードホルダーを出現させた。

 本を持つイメージでやると、その分厚い本はきちんと俺の手の中に収まる形で発現する。最初に床に落ちてしまったのは、この辺りのイメージがきちんとしていなかったからみたいだな。


 本を開いてみると、こんなメッセージが現れた。


『カード化していないスキルを1個保有しています。カード化しますか?』


 どこまでも親切なユーザビリティになってやがる。おじいちゃんが使っても困らなさそうだな。


 迷わず『はい』を押そうとして、俺はピタリと止まった。


「どうしたんですかー? 早くカード化しちゃいましょうよー」

「いや……これさ。一回カード化したら、元に戻せなくなったりするんじゃないかと思って」

「あー。どうなんでしょうね」

「2000万円をカードにするのは、さすがになあ……」

「でもでもー。この『スキルブック』自体、すごい価値のあるスキルですよ? いざっていう時も、これだけあれば十分じゃないです?」

「まあ、そうなんだけどなあ。2000万円もあれば、ほかに色々できるんじゃないかと思ってさ」


 俺は何か書いてたりしないかと思って、スキルブックをペラペラと捲ってみる。

 するとちょうど『火炎』のカードが納められたページが開かれて、俺はあることに気付いた。


「あれ? なんだこれ」


 見てみると、ホルダーに納められた『火炎』のカードに、不思議な模様が刻まれていた。

 カードの右横に、縦に並ぶ形で刻まれた10個の丸点。

 その内9個は赤く発光しており、一番上の点だけが黒く塗りつぶされている。


 この模様、最初からあったか?


 あったかもしれない。

 でも、こうはなってなかったような……むしろ、こういうデザインかと思っていたのだが。


「あれ? もしかして」

「どうしました?」

「これって……使用回数の制限があるんじゃないのか!?」

「うーん? 本当だ。つまりMAXで10回発動できて、今は1回分を使用済みっていうことですかね」

「うぅむ……」


 この『スキルブック』……強力なスキルであることに違いはないが、色々と仕様が不明な部分が多いな。それに『火炎』の発動に回数制限があるのはわかるが、『チップダメージ』みたいな常に効果が発動しているようなスキルだと、一体どういう処理になるんだ?


 1回の発動につき、一定時間の効果付与とか……?

 こればっかりは、考えただけではわからん。もっと色んなスキルを試す必要がある。


 そんなことを考えたりケシーと話し合ったりしていると、ピンポン、とチャイムが鳴らされた。


「おっと、誰だろう。ケシー、隠れててくれよ」

「あいあいさー! ですよー!」


 玄関の方へ向かいながら、俺は来訪者が誰かを考えてみる。

 会社の人間とか? 宅急便か?


 覗き穴から扉の向こう側を見てみると、そこには。


 黒髪をボブカットに切りそろえた、高校生くらいの可愛らしい女の子が立っていた。

 口元には白いマスクを着用して、パーカーの上にリュックを背負っている。


「……は?」


 誰だこの娘。

 部屋を間違えてるんじゃないのか?


 その子は若干ソワソワとした様子で、両手を背中の後ろに回している。

 何かを持っているのかもしれない。


 いったいなんだ……?

 そう思って、俺は鍵をガチャンと開ける。


 その瞬間、俺の頭に嫌な予感が過った。


 もしかして……ハニートラップだったりしないよな。


 俺のレアスキルとかケシーのことが、どっかから漏れてて……

 扉を開いた瞬間に、屈強な男たちが……。


 ノブを握った手が止まり、扉を開くのを躊躇させる。

 しかし、次の瞬間。


 開錠された扉が、向こう側からガチャリと開かれた。


「っづ!?」


 や、やっぱり!?

 なんか、そういう奴か!?


 背中に冷や汗が噴出して、俺は思わず仰け反った。


 そして、扉が開かれると……


「どーもー! 詩のぶチャンネルの姫川詩のぶでーす!」


 そんな甲高い声を響かせながら、ビデオカメラを手にしたパーカー少女が玄関に乱入してきた。


「……は、はぁ?」



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