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10月29日 『時雨施す』
今日から七十二候では『時雨施す』となります。
秋も終盤を迎え、降ったりやんだりを繰り返す時雨が、冬の到来を告げています。
このような空模様は、人の心で表現すると、今にも泣き出しそうな気持ちであると例えることができます。
これを、
『時雨心地』
と言います。
ここで一句。
大空は雲らざりけり神無月、時雨心地は我のみぞ知る
現代風に訳すと、
10月の曇り空の下、泣きそうな私のことを知っている者は誰もいない……。
となるのかな、と思います。
この歌を詠んだ人は、なぜ泣きそうになっているのでしょうか?
わかることは、自分が泣いている理由は自分にしかわからない。
もしも、この歌人が片想いをしていて、その想いを伝えられずにいたと仮定するなら、
時雨心地は我のみぞ知る
というような心境になるかもしれませんね。
雨のせいにして時には泣くのも良いのかもしれません。
時雨なら、またすぐに晴れます。
雨粒に濡れた草木や大地が、太陽の光に照らされてキラキラと輝くように、
涙もまた、笑えば輝きに変わります。
前向きに生きたいものです。