ある所に老人がいました。
[2018.07.07.01:23]
「受……号4…番の……畑…さん 川畑…さん…… 受付番号44番の川畑茂さん 順番になりましたので診察室へお越し下さい。」
アナウンスで意識をハッ…と戻す。
頭がボケてきたこの頃、ボーッとする事が多くなったようだ。いかんいかん
診察室へ行かなくては。
「よっこらせ………っ……」
診察室へ入ると医師がコンピュータに向かって作業をしていた。
私に向き合うと
「茂さん。 そちらの席へどうぞ。 お体の方はいかがですか?」
「………あぁ、ありがとう…。 鎮痛剤のお陰で少しいいよ…。」
「これで、クスリともお別れですから。 」
……………
「………まさか明日で寿命とはな………。」
「はい……。 我々の力不足のせいです。 申し訳ありません…………。」
「…いや、君らは私のために全力を尽くしてくれたよ。 元はと言うと、私が海外で病気を拾ってきたのが始まりっっゴホッゴホッッ
そして、放置して過ごしてきた。自業自得とはこのことだろう……。」
「…………。」
「…この病気の良心的な所は画鋲が刺さったような痛みがあるだけで、動くの には問題ないことだ。」
「体の内部全体にその痛みがありますけどね…………。」
「それで、ここに来た目的だが鎮痛剤を幾つか貰いに来た。 君が独自で調合した、あれだ。」
「分かりました。 12カプセルでいいですよね。」
「…………あぁ、ありがとう。」
鎮痛剤を受け取る。
「じゃ、帰るとするよ。 今までありがとう………。」
「はい………。 今まで、ありがとうございました…………。」
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病院へ出ると車に乗り込んだ。 周りには車が多く、今流行りのSUVタイプの車が前を通過した。
その車の後について行き、出口に向かう。
最近、高齢者の事故が多いと言われていることをふと思い出す。
…私は車を運転してきて58年間、事故をした事はないが油断してはならん。 油断大敵油断大敵。
国道を走らせる。 やはり、この車「プリウス」はいい車だ。 外観デザイン、燃費、環境への配慮等、どこも素晴らしい。
…赤信号に捕まったため、止まる。
(明日までか……。)
信号待ちをしている時は、そればかり頭の中が埋め尽くされた。
妻は先立ちした。 息子は震災以降、行方不明で連絡がつかない。
親戚とは昔、遺産争いをしてから縁を切られた。
…今の私に失うものは何も無い。
(丁度良かったな……)
と、考えて運転するうちに家に着いた。
風呂に入って寝よう。
恐らく、これが最後の眠りになるだろうな…。
布団に入ると眠りについた。
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眠っている時、ある夢を見る。
見たこともない服装をした少女が、私に質問をしてくる。
「貴方は今まで生きてきて、1番幸せだと思えた時期は何歳ですか?」
私はその質問に悩みながらも答える。
「日常が楽しかった、8歳だ。」
すると、彼女はこう言ってきた・
「分かりました。 その設定にしときますね。」
(はて? 設定?)
次の瞬間、ふっと身体がふわっとしたかと思うと自分を見下ろしていた。まるで幽体離脱をした時のように。
そして、私は徐々に昇っていく。
「昇天というやつか…?」
意識がふっ…っと離れる。
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書きます。恐らく続けます。期待しないで下さい。お願いします。