第8話 ダンジョンと少女1
ルエラン君の家を訪れた次の日、洗濯のお手伝いが終わった私は、サウタージさんに言われ、ギルドの受付に来ていた。
そこは、テーブルが置いてあるスペースの反対側で、壁に二つ窓口があり、大きなカウンター越しに受付の人と話せるようになっている。
私はまだ使ったことはないけれど、冒険者のおじさんたちが使うのをよく見ていたから、何をすればいいか分かっていた。
「あのー、メグミです」
受付は、感じのいい若い女性だった。きちんとした身なりで、右目の下に泣きボクロがあった。
「ああ、メグミちゃん、来たのね。
ギルマスから聞いてるわ。
どうぞ、これを持っていって。
分からないことがあれば、おじさんたちか、ここで尋ねるといいよ」
「ありがとう」
私は、渡された布の袋を手に、自分の部屋に帰った。
机の上に中身を出してみると、革表紙の本が一冊と金属のバッジだった。
それは、私が見慣れたものだった。おじさんたちが、身体のどこかにつけていたからだ。胸の所につけている人が多かったが、中にはヒモを通して首からぶらさげている人もいた。
確か、色によって、ランクが違ったはずだ。
バッジだけ持ってテーブルや受付がある部屋まで戻った。
受付がちょうどお昼休みで閉まっていたから、テーブルに着いていた冒険者のおじさんに尋ねる。
「あの、今日、これもらったんですけど……」
「「「おおっ!」」」
私が言いおわらないうちに、おじさんたちの歓声があがった。
「おい、みんな、メグミ嬢ちゃんが、いきなり銀ランクになったぜ!」
「「「おおー!」」」
部屋にいたおじさん、若者がたくさん集まってきてお祝いを言ってくれた。
「おい、お前ら、今日の夕方は空けとけよ!
メグミ嬢ちゃんの銀ランク昇進祝いだ!」
「「「おおーっ!」」」
私は、部屋の隅にあるテーブルに座っている女の人たちが、憎々し気な目でこちらを見ているのに気づかなかった。
◇
ギルドで、私の銀ランク昇進祝いがあった翌日。
テーブルがある部屋を掃除していると、二十歳くらいの少し派手な感じの女性が声を掛けてきた。
「メグミ、銀ランクになったんだって?」
「はい、昨日なりました」
「おめでとう」
女性は、なぜか暗い感じで、そう言った。
「ありがとう」
「せっかく銀ランクになったんだから、ダンジョンに行ってみない?」
「あの、お名前は?」
「ああ、あたしゃ、グロスっていうんだ。
パーティ『赤い棘』っていうとこのリーダーさ」
「ああ、聞いたことがあります」
おじさんたちの話に時々出ていた名前だから憶えていた。
そのパーティは、おじさんたちから、あまりいい印象を持たれていなかったはずだ。
「で、どうなんだい?
ダンジョンに行くのか、行かないのか?」
「皆さんのランクは何でしょう?」
「ウチかい?
あたいたち『赤い棘』は、全員女性だけど、銀ランク以上だよ」
それは、おじさんたちから私が聞いた話とは違うけど、本人が言っているから、きっとそうなのだろう。
「ギルマスから、もし依頼を受けるなら、銀ランクの人が三人以上いるパーティで、と注意されています」
「まあ、いきなり銀ランクだからね。
あんたが無茶しないか、ギルマスも心配なんだろう」
「あと……」
あと、依頼を受ける時には、かならずギルマスに報告することって言われてるけど、これは言わなくていいかな。
「なんだい?」
「いえ、なんでもありません」
「じゃ、あさって夜明けに、西門のところで集合だよ。
遅れるんじゃないよ」
「え、ええ」
こうして私は、初めてダンジョンに行くことになった。




