第57話戦乱と少女2
ステーロから少し南方には、荒野が広がっており、その荒野がこの国ティーヤムと南の隣国とを隔てているのだが、その周辺の依頼を受けていた冒険者が、何度か馬に乗った隣国の兵士を目撃していた。
そのような事は、今までになかったから、ギルドでは警戒を強めていたのだが、兵士の目撃情報は、増える一方だ。
すでに、冒険者が王城に派遣され、これまでの目撃情報を報告している。
王都から、騎馬隊が派遣され、彼らも南方の警戒に当たっている。
ある夜、ニコラが寝た後で、リビングでくつろぐヒューさんにそのことを尋ねてみた。
「南の国ってどんな国なんです?」
「あそこは、『バーバレス』という国で、荒っぽい土地柄だが、ここ何十年かは、他国を攻めるようなことはしていない」
「どうして、北に兵士を送っているんでしょう?」
「それがな、少し前に賢王と言われた前王が亡くなってな。
前王は、後継者を指名していたのだが、息子の一人がクーデターを起こしたらしいんだ。
その男が、王位に着いたのが隣国が変わった原因だろう」
「あなた、危険はないのかしら」
エマさんは心配そうだ。
「うーん、ただの偵察にしては、兵の動きが活発過ぎる気がする。
何かあったときは、王都へ逃げられるよう準備しておいてくれ」
「分かりました。
どうなるんだろう。
不安だわ」
「これは、話していなかったがな。
商隊に紛れて、バーバレスのスパイが王都に紛れこもうとしたことも分かっている。
くれぐれも、油断しないようにな」
「ええ、グラントに連絡しておかなくちゃ」
「それは、もう俺の方で済ませてある。
お前は心配せず、万一にだけ備えてくれ」
「分かったは、あなた」
「エマ、済まんがメグミと二人だけにしてくれるか?」
「……ええ、ニコラの様子を見てくるわ」
エマさんが、部屋から出ていくと、ヒューさんが声を低めて話しはじめた。
「メグミ、さっき王都に紛れ込もうとしたスパイの話をしただろう」
「はい」
「実はな、そのスパイがお前の事を探っていたようなんだ」
「えっ!?
どうして?」
私は、一度も行ったことがない南の国が、そんなことをする理由が分からなかった。
「スパイは、お前の情報をできるだけ多く持ち帰ることと、できるならお前を拘束して南に連れかえるよう命令されていたそうだ」
「えっ!!」
私は、頭をハンマーで殴られたような衝撃に襲われた。
「ティーヤム、フェーベンクロー、モリアーナの三国が結びつくことで、バーバレスの脅威になるのではないかと考えているらしい。
それから、これは不確かな事だが、お前がドラゴンを連れていることが伝わっていて、ヤツらは、ドラゴンを手懐ける方法が知りたいらしい。
これは、俺の考えだが、ヤツらは、ドラゴンを兵器として利用しようとしてるんじゃないかな」
そんなことになったら、大変だわ!
竜の里で、無邪気にじゃれついてきた子竜たちの姿が目に浮かぶ。
ドラゴンを兵器に?
絶対に、そんなこと私が許さない。
翌朝、ヒューの家から、メグミの姿が消えていた。
明日午後三時ごろ更新予定です。




