表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/64

第34話神樹と少女7

 その日の内に、私はティーヤムの城下町に飛んだ。

 飛んだというのは文字通りで、ピーちゃんに連れてきてもらったのだ。


 城下町は、高い壁に囲まれており、その周囲に草原、そのまた周囲に森が広がっていた。

 空から人気のない草原に降りた私は、ピーちゃんを袋に入れ、街に向かった。


 街を囲む壁の外には、木で作った粗末な小屋が立ち並んでいる。

 私が集落の中を歩くと、子供たちが驚いたような顔でこちらを見ていた。

 それがこの辺りの衣装なのか、大人も子供も、みな生成りのワンピースを着ていた。


「ねえ、ボク、お城に行くにはどう行ったらいいの?」


 なぜか私の後をついてくる男の子に尋ねてみる。


「ねえちゃん、お城に行くのか?」


「ええ、そうよ。

 あと、カジノの場所も分かる?」


「カジノは分からないけど、お城には南の門からまっすぐ入ったら行けるみたいだよ」


「ありがとう」


「お菓子でできたみたいなお家が見えてきたら、お城の近くだから」


「助かるわ」


 私は、マジックバッグからナッツを生地でくるんだお菓子を出し、それを男の子に渡した。


「えっ?

 これくれるの?」


「ええ、どうぞ」


「やった!

 ワンワン団のみんなにも分けてやろう」


「他の子にあげるなら、もう少し渡しとくね」


 私は、男の子が抱えられるだけのお菓子を持たせてやった。


「お姉ちゃん、ありがとう!」


「どういたしまして」


「お礼に途中まで案内するね」


 こうして、小柄な男の子に案内され、私とピーちゃんは街の中に入った。


 ◇


「リーシャばあちゃん、お姉ちゃんにもらった」


 街に入ると、男の子は割と大きな木造の家に私を連れてきた。


「あらまあ、ありがとうございます。

 こんなに沢山もらって」


 おばあちゃんが、しわしわの顔をほころばせる。


「あの、私この町は初めてで、行きたいところの場所が分からないんです」


「おやおや、嬢ちゃんはどこに行きたいんだい?」


「カジノとお城です。

 ああ、それと、ギルドにも」


「そりゃまた、変な組みあわせだね。

 ああ、そうだ、ちょうどいい人が慰問に来てるから案内してもらうといいよ」


「えっ? 

 いいんですか?

 では、お言葉に甘えます」


 おばあさんは、男の子と建物の中に入っていったが、すぐにローブ姿の人を連れて出てきた。  


「ここは、孤児院でね。

 この方は、時々慰問に来てくださるのさ。

 あんたがお城に行くなら、力になってくれるよ」


 ローブの人は、フードを目深にかぶっているから、男性か女性かもよく分からないが、おばあちゃんの言葉に頷いているようだった。


「カジノ、ギルド、それからお城に行きたいそうだよ」


「分かりました。

 では、まずカジノから行きますか」


 声からすると若い男の人みたいだが、もしかすると女の人かもしれない。


「ありがとう。

 よろしくお願いします」


 ◇


 ローブの人は、街の事がよく分かっているようで、裏道を通ったり、公園を突っきったりして、私をカジノまで、連れてきてくれた。

 カジノは、石造りの大きな建物だった。


「メグミ、カジノには、何の用?」


「そうですね。

 ここを潰せたらいいかなって」


「はははは、面白いことを言うね。

 じゃ、今からここで遊ぶんだね?」


「ええ、賭け事をしようと思います。

 私の年齢でも大丈夫でしょうか?」


「この国の成人は、十五才だから、君なら大丈夫だよ」


「よかった」


「ボクは、一度お城に帰ってくるから、君は好きなだけ遊んでいるといいよ」


「ありがとう」


「お金は大丈夫?」


「ええ、大丈夫です」

 

「じゃ、後で迎えに来るから」


 今の会話で、男の人だと分かったローブ姿の人は、あっという間に姿を消してしまった。


「なんか、魔法みたいね」


「魔法じゃなくて、あれは魔術だね」


「えっ!?

 ピーちゃん、分かるの?」


「分かるよ。

 周囲の人に気づかれにくくする魔術だと思うよ」


「へえ、そうなんだ」


 私は、カジノの建物を見上げると、ゆっくり歩いて中に入った。

 

 ◇ (カジノでの出来事は、プロローグ参照)


「嬢ちゃん、最高だったぜ!」

「うふふ、あの支配人、コテンパンね」 

「ぜひ息子の嫁に来ておくれ」  


 カジノから出てるとき、私はお客さんみんなの祝福を受けた。

 だけど、カジノがつぶれちゃったけど、これからみんなどこで遊ぶんだろう。

 私がそんなことを考えていると、目の前に白馬二頭に引かれた綺麗な客車が停まった。


 客車の窓から、すごく綺麗な若い女性がこちらを見ている。

 周囲の音が消えたので、振りかえると、カジノに来ていたお客さんが、みな平伏していた。

 いったいどうしちゃったんだろう。


「メグミ、乗るといいよ」


 ああ、ローブを着ていた人だね。声を聞くとやっぱり男の人かな。

 私が見たままの年齢なら、恋に落ちていたかもね。

 

「ありがとう」


 私は、お言葉に甘えて客車の中に入った。

 中は、すごく素敵な造りになっていて、綺麗なレースや彫刻で飾られていた。

 馬車が走りだすと、後ろでお客さんたちの歓声があがった。

 

 ◇


「あの、お名前は?」


「ああ、そうだね、シューって呼んでくれる?」


「分かりました。

 シュー、この馬車はどこに向かってるの?」


「ああ、言うのを忘れてたよ。

 君が行きたがっていたギルドだよ」


「あ、そうだったんですね。

 ありがとう。

 でも、どうして私に親切にしてくれるんですか?」


「リーシャおばあちゃんの頼みっていうのもあるけど……。

 君ね、ボクの友達と、どことなく雰囲気が似てるんだ」


「友達?」


「うん、今はどこか遠い所にいるはずなんだけど。

 その人は男で、しかも君とは全く違うタイプなんだけどね」


「それでも、雰囲気が似てるんですか?」


「うん、口ではうまく言えないけど」


「そうですか」


「ああ、そういえば、カジノはどうだった?」


「潰しておきました」


「はははは、君はやっぱり彼とは違うね。

 彼はそんな冗談を言わなかったもん」


 私は、本当にカジノを潰したのだけれど、彼の勘違いを訂正しないことにした。

 馬車が、ゆっくり停まった。


「はい、ここがティーヤムギルドだよ」


 次話、明日午後三時ごろ投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ