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第22話ドラゴンの里と少女1

 私とピーちゃんは、山道を歩いていた。

 道は、次第に険しくなってきた。


 ここまで来るのは、本当に大変だった。

 ピーちゃんが前もって警告していたとおり、大きな魔獣や小さくても毒を持つ魔獣がしばしば私たちの行く手に現れた。

 そのたびにピーちゃんが、口から吐く炎で焼きはらった。

 焼けのこった魔獣の角や爪は、私のマジックバッグの中に入っている。

 

 周囲に見える山々の様子が、それまでと少し変わってきた。

 山肌の色が赤っぽくなってきている。

 そして、面白い形をした石が、たくさん見られるようになった。

 山の頂上付近に、大きな四角い石や丸い石が、ちょこんと載っているのだ。

 私は、楽しくなって、その石の形で山に名前をつけた。


「あの山は、『ネコ山』ね。

 で、あっちのが、『イヌ山』

 それで、向こうが『クルマ山』ね」


 袋から出ているピーちゃんの顔を見ると笑っている。


『ネコ、イヌ、クルマって何、メグミ?』


「ああ、ネコ、イヌはこのくらいの動物で、クルマは乗り物ね。

 私が元いた世界のね」


『でも、他の世界が本当にあるなんて、いまだに信じられないや』 


「そう?

 でも、私はこっちの世界の方が好きだな」


『なんで?』


「だって、こっちの世界の方が楽しいんだもの」


『なんで、こっちの方が楽しいの?』


 ピーちゃんがいるからって言うのが恥ずかしいから、適当に答えておいた。


「こっちの世界の方が、温かい気持ちになる事が多いの」


『ふ~ん、よく分からないけど、そういうものなのかな』


 私自身、自分の言葉の意味がよく分かってないからね。


『あっ、「ソル山」だ!

 あそこがドラゴニアの中心になるよ。

 もう、レッドマウンテンに入ってるね』


 ピーちゃんが翼で指す先には、巨大な丸い岩が頂に座る山があった。


「ふうん、山が赤くなってきているから、そろそろじゃないかと思ってたわ。

 ピーちゃんが言っている『ソル山』のソルってお日様のことでしょ?」


『そうそう、あれだね』


 ピーちゃんが、空に輝く太陽を翼で指す。

 それは、私が元いた世界の太陽とよく似ていた。


 でも、丸い石が載った山を「ソル山」って名づけるなんて、ちょっと私に似てるわね。

 もしかすると、そう名づけた竜とは気が合うかもしれない。


 私は、のんきにそんなことを考えていた。 


 ◇


 ソル山目指して歩いている私だが、山はなかなか近づかない。

 それは、道が険しくなってきたことを意味していた。


 以前、腰のベルトをピーちゃんにつかんでもらい、空を飛んだ時のことを思いだし、もう少しでそれをお願いしそうになったほど山道は大変だった。


 私は、歩くスピードを落とし、少しずつ進むことにした。

 珍しく平らな土地があったので、そこにテントを張る。

 まだ、ソルは出ているけれど、疲れていた私はすぐに眠ってしまった。


 私が目覚めたのは、テントがばさばさ風にあおられていたからだ。

 嵐が来たのかもしれない。

 テント入り口の布を少しめくると、月明かりに照らされた、巨大な影があった。

 その輪郭で、私には、それが何かすぐに分かった。

 ドラゴンだ。

 

『お前、なぜ我々のテリトリーに許可なく入ってきた?』


 テレパシーで尋ねてくるドラゴンの口からは、チロチロ炎が漏れている。

 この巨体から火を噴かれたら、私は一瞬で黒こげだろう。


『ドルースおじさん、ボクだよー』


 ピーちゃんが、袋から飛びだし、テントの前で羽ばたいている。


『おや、小さくなっとるが、お主、アルポークんとこの小童こわっぱじゃないか。

 みなが、お前のことを探しておったのじゃぞ。

 いったい、どうしたのじゃ?』


『ラストークっていうダンジョンに行ってたの』


『ラストーク? 

 それは、人族の言葉じゃろう。

 あのダンジョンは、「試しの洞窟」と言うんじゃ』


『そうだったの?』


『とにかく、ここではなんじゃから、里まで帰るぞ』


『はーい』


『その人族はワシが食べてもよいのか?』


「ダメーっ!!」

『ボクの友達だから、食べちゃだめ!』


 私の悲鳴と、ピーちゃんのテレパシーが重なる。


『そうか?

 とにかく、我らのテリトリーを侵した人族じゃ、ただでは済まんじゃろう。

 そやつは、ワシが連れていくぞ』


 ピーちゃんが「ドルース」と呼んだ大きなドラゴンは、大きな前足でテントごと私を一つかみにすると、空へ舞いあがった。


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