第12話ダンジョンと少女5
頬に湿ったものが触れている感覚で目が覚める。
最初に見えたのは、心配そうなピーちゃんの顔だった。ドラゴンでも心配顔ってあるんだね。
『メグミ!
生きてたっ』
私は状況が分からず、少しのあいだぼーっとしていた。
「きゃっ、デミリッチ!」
思いだし、叫んでしまう。
しかし、上半身を起こした私が目にしたのは、蓋が少し開いた巨大な棺桶だけだった。
「あれっ?
デミリッチはどうしたの?」
『それがよく分からないんだ』
「どういうこと?」
『あいつがメグミを食べようとしたんだけど、なぜか急に苦しみだすと消えちゃったんだ』
「どういうことかしら?」
『とにかく、デミリッチは倒したみたいだよ』
「どうして、それが分かるの?」
『ほら、こっち見てごらん』
ピーちゃんが飛んでいった方を見ると、部屋に入ってきた時には無かった出口が開いている。
立ちあがって体の埃を払った私は、その部屋に入った。
◇
「す、凄い!」
そこには、宝石や金貨が山のようにあった。こういった場面は、アニメや映画で見ていたけど、実際に自分が目にすると、すごい迫力だ。
問題は、どう見てもお宝のほとんどが持ちかえれないことだ。
『あれは、地上に戻るための魔法陣だね』
ピーちゃんが言うように、お宝の向こう側に魔法陣があるから、あの上に立てば、もしかすると地上に帰れるかもしれない。だけど、お宝は、その一部しか持てないだろう。
私は、持ち帰るものを選びはじめた。それが、カバンに入りきれないくらいになったとき、あるものを見つけた。
それは、赤いハンドバッグで、取っ手がついている。蓋にはボタンのかわりに緑色の宝石が付いていた。
一目で気に入った私は、それを手に取り、さっきより分けておいた宝石類をその中に入れる。
不思議なことに、より分けておいたものを全部入れても、ハンドバッグは一杯にならなかった。
「あれ?
変ね」
私は、宝の山に残った宝石類もそれに入れてみた。
いくら入れても、ハンドバッグは一杯にならない。
「ピーちゃん、これ、どうなってるの?」
自身も宝を物色していたピーちゃんが、こちらに飛んでくる。
私は、明らかにハンドバッグに入りそうにない剣の先をつっこんでみた。剣はなんなくその中に納まった。
『ああ、マジックバッグだね』
「マジックバッグ?」
『見た目より多くのものが入る魔法の道具だよ』
「へえ、便利ね」
『でも、そのバッグはその中でも特別なもののようだね』
「どうして?」
『マジックバッグは、見た目より多くのものが入るけど、やっぱり限界があるんだ。
でも、それには、限界がありそうにないからね」
「でも、もう少しで一杯になるかもしれないわね」
『どんどん入れてみれば分かるね』
「じゃ、そうしよう」
それから、私とピーちゃんは、赤いハンドバッグにどんどん宝物を入れていった。宝物の中には、ハンドバッグの口より大きなものもあったけれど、そういうものは、ハンドバッグ自体を近づけると、シュッと消えた。恐らく、中に入ったのだろう。
結局、部屋にあった宝物は、その全部がハンドバッグに収まった。
『やっぱりね』
ピーちゃんが、嬉しそうにパタパタ飛んでいる。
両手を伸ばすと、彼は私の胸に抱かれ丸くなった。
『じゃ、メグミ、魔法陣を踏んでね』
ピーちゃんに言われるまま、魔法陣の上に立つ。
私たちが光に包まれる。
光が消えると、そこは見おぼえがある部屋だった。
ダンジョン一階にある、私が最下層へ飛ばされた部屋だ。
ハンドバッグを腕に掛けた私は、ピーちゃんを抱いたまま、地上へと続く洞窟に入っていった。




