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第7話『便利な機能は利便性を履き違えると不便だ』

 昼下がりの街中。フリューゲル東部地区、とある店内。カウンターで頬をつき、暇そうな顔の店主は、細長い弾倉をぐるぐると回して暇を持て余していた。店内には多種多様の銃器や弾類が並ぶ。来客の姿は一切なく、店面と反して静かで穏やかな時間が流れていた。

 店主は、本日の来客はもうないだろうと踏んで早めに店じまいをしてしまおうか、と考え耽けていると、扉に取り付けられたベルが鳴り、一人の人間がやってきた。突然の来客で慌てて立ち上がる店主は、暇潰しに回してた弾倉を手から落とした。

「……すいません、クローズでしたか?」

「いえいえいえいえ! 本日も営業中です……よ?」

 慌てて引き止める店主は、目の前にいる客の姿を見て不審感が生まれた。背丈は150センチ程、茶髪に緑の瞳をした少年がそこに立っている。明らかに子供が一人で銃器の店に。

「し、失礼ですがお客様……未成年では……」

「あぁ、良く言われるんで大丈夫です」

 少年は苦笑いして否定を入れる。どうやら童顔で幼げに見えるらしい。少年はそのまま店内の商品を閲覧し始めた。店主は落とした弾倉を拾ってクロスで清掃をしながら、カウンターから少年を様子見する。両足の太ももにホルスターが一つずつ付いていて、二丁分の拳銃を所持しているのを見て、一人納得していた。

「何か、お探しですか?」

「んー、ちょっと悩んでまして。今使っている拳銃に加えて、中遠距離用にライフル銃を持とうかどうか。でも、重量の増加は移動に負担が掛かってしまう。銃士は速度が命だし、利便性とは切っても切り離せず──」

 店員の問いかけに、少年は開いた口が止まらなくなっていた。話を聞くと旅人のようで、対モンスターよりは対人のやり取りが多いようだった。

「そうですね、利便性や使用するかは一旦置きまして、せっかくなら少し見ていきませんか?」

 購入に踏み込めないならば、実物を見て触れて使ってみて、使用感や購入意欲を振るい立たせる。デモンストレーションと同様、少年の興味や関心を引いて、購入へ! 

 俄然やる気が湧いた店主は、店の裏からライフル銃を持ち出してきた。全長130センチの木製品のライフル銃。それを少年に渡した。ライフル銃だから長いのは当然だが、背丈的に取り扱えるか心配が残る。少年は渡されたライフル銃を持って、しばらく眺めるが、その長さに取り扱いは苦戦しているようだ。

「ボルトアクションの五発装填、質感も良くて、使いやすそうなんだけど……いかんせんこの身長だからなー」

「それではこちらはいかがでしょう!」

 店主は、少年が渋るのを読んで、眺めている間に別の銃を持ち出していた。それを交換して渡す。

「そちらは当店おすすめのライフル銃。なんとですね、使わない時は折り畳む事で即座に椅子の役割に大変身!」

「あ、いや、大丈夫です。他にありませんか?」

 即刻断られた。そんな時、また扉のベルが鳴って一人の男性がやってきた。

「暇そうじゃないか、店長」

「フロン、今お客様対応中だから相手してる暇ないんで」

 フロンと呼ばれた男性は、この店の常連客で、店主とはそれなりに仲が良い。フロンは、少年の持つライフル銃を見て首を傾げる。

「少年、それはないわー」

「あ、いや、違うって。急に渡されただけだし」

 少年はすぐさま持っていたライフル銃を、店主に押し付けるように返した。否定された気がしてしょんぼりする店主。すると、すぐに店裏から別の一丁を持ち出してきた。

「……また悪ノリが始まったな」

「フロンはそこで見ていな! さあ、これをどうぞ!」

 ムキになっているのか、凄まじい勢いで押し付けられた別の銃。見た目は極普通の、何処にでもあるようなライフル銃だ。

「ところがどっこい! 装填した銃弾を魔力で食品に加工するライフル銃だ、お客さん、すごいぞ、これは!」

「結構です」

 即刻断りを入れる少年。実用的では無い。そもそも、ライフル銃で食品加工という狂った発想をした制作主に直接話を聞きたいレベルだ。

「お、良いのか、少年? それがあれば万年食料に困んないぞ?」

 なんてフロンは助け舟を入れ始めた。

「……いや、それなら食料買うわ」

 そしてライフル銃を店主に返却すると、既に別の銃を手渡しされていた。もはや入れ食い状態である。今度のライフル銃も、見た目は普通だ。

「見た目は良い、重さもまあこんな所だと思うけど、これはどんな銃なの?」

「そいつぁ、傘の役割を──」

「別のでお願いします」

「お、良い銃だな、少年。似合うぞ、少年」

「なんでさっきからアピールすんだよ、アンタ」

 少年は銃を返却する。返却する度に心做しか店主が悲しそうな顔をしてくる。と、またも別の銃を渡された。鉄製で重みがずっしりと来て、持っているのが疲れる。しかし、それなりに装弾数もあり、取り扱えれば優れ物と言えるだろう。

「見た目はいいけど、これは?」

「痔になった時に使える」

「なんねぇよ」

「お、便利だな、少年」

「感性死んでんのか、お前」

 銃の性能云々知らないが、即刻返却をしようとすると、既に手に持っていた銃が入れ替わっていた。恐るべきスピードだ。

「お客さん、それはとても良い品ですよ」

「……まあ、見た目は良いけど……性能は?」

「装弾数三発、ボルトアクション方式の汎用小銃、多種多様な弾丸に対応していて、精度もかなり高い」

「お、良いじゃないか、少年」

 確かに文句はない。取り回しもし安そうで、利便性もまた高いと言える。

「悪くないですね、これ」

「そうでしょうそうでしょう! なんて言ったってウチの一番のオススメの品ですからね! 比較的使いやすいし、いざとなったら非常食に早変わり!」

「他ので」

「お、良いじゃないか、少年。食べ盛りだぞ?」

「腹減ってねぇんだよ」

「試しに食べてみますか、バレル?」

「試し撃ちみたいに誘ってくんなよ! 金輪際聞かねぇよ、バレル食べるって。食品コーナーじゃねぇんだぞ」

 とてつもなくヤバい店に来てしまったと、少年は自分の選択を悔いていた。

「まともな銃ないのか、この店は」

「それなら皆様が良く買われるメジャーな銃にしますか?」

「そ、それならとりあえずは安心だな。見せてくれ」

 そうして出されたライフル銃。白くて角が丸みを帯びて、肌触りが良い。比較的に軽め。

「見た目はいい」

「装填数五発の同じくボルトアクション。ライフル初心者向けの有名な品で、分解清掃のしやすさが売りです。弾丸は専用品になりますが、どこにでも販売されているような型式なのでご安心を」

「他は?」

「食べれます」

「なんでッ?! お前ら食欲に際限ないのか?!」

「お、それは良いぞ、少年」

「良くないわ!」

「なんだ、甘いのは嫌いなのか?」

「甘味なのか、これ?!」

「ええ、とても甘くて頬が落ちる味わいが売りですよ!」

「もっと他に力を入れてくれよ、頼むから!」

 この銃がメジャーであり、皆が良く使用すると言われているのが驚きである。皆、説明も聞かずに初心者向けってだけで購入しているのではないだろうか。絶対に力の入れ所が違うのだけは分かる。同時に、フリューゲルの人間は皆、狂っていると知る事ができた。国一つ変わるだけで、銃が食品になる。そのうち服を食い出すのではないか。

「分かった、いいよ。最初の奴、持ってきてよ」

 最初に渡された木製品のライフル銃。特に問題もなかったが、身の丈に合わないと返した銃だ。店主は渋々、それを持ってきて手渡す。

「裏に射撃場がありますので、試し撃ちをしてみませんか?」

 そう店主に言われたので、試し撃ちをする事に。扱いや反動、使い心地は今後の実戦に大きく響く要素。必ず購入前には使用感を試すべきだ。

 少年は店主と共に裏の射撃場へ。3×20メートル程の細長い部屋があり、奥に銃痕がいくつか付いた古めの的が取り付けられていた。手前には台座が置かれ、ライフル銃を支える脚となるバイポッドを置けるようになっている。

「五発程、試し撃ちしてみてください」

 少年はライフル銃を構える。スコープで20メートル程奥の的の芯を捉える。若干重さで手が震えてしまうが、持った感覚では練習さえすればしっかり使えると分かった。そのまま一呼吸入れると、手ブレを補正しながら引き金を引いた。火薬の炸裂する音と共に、反動が両手や肩に伝わった。普段、使う拳銃より数段強めの反動。元々、連射するような銃器ではないが、反動は狙撃の精度に直結する為、やはり試し撃ちして正解だった。

 ところが、火薬が炸裂したはずの弾丸は銃口から放たれる事はなかった。

「ま、まさか弾詰まりか?!」

 弾詰まり。銃身内で弾丸が発射不良を起こしたらしい。滅多には起こらない現象。過去に弾薬が湿気って発射しなかった事はあるが、銃弾自体が詰まるなんて事は初めての経験だった。当然、ライフル銃の不良を疑う。

「お客様、薬莢をご確認ください」

 店主はそう言うので、少年はボルトを動かして薬莢を排出する。細長く黄土色をした薬莢が出てきた。

「なんと、その薬莢、食べれます」

「…………」

 その日の売上は0円だった事は言うまでもない。

 どうも、命は儚く美しい。だが、無意味だ。反出生主義論者代表取締役主張の星野夜です。カフェオレを嗜み、カフェオレに嗜まれる作家。糖尿病予備軍、尿管結石に片足を踏み入れ、日々命を貪る毎日です。

 んな事、どうでもよかった。


 さてさてさーて、今回は名称は出ませんでしたが、銃士ルフくんのお買い物回でした。フリューゲルの銃事情は知りませんが、とにかく食べれるます。

 ちょっと前に、カロリーメイトなるものにハマっていた時期がありまして、良くバニラ味を購入して朝食とか昼食に食べてたんですが、食べられる銃の味はそんなイメージです。

 所で一つ思う事がありますが、食べられる=歯で噛み砕ける程度の硬度、という事になりますが、そんな硬度で大丈夫か? 大丈夫だ、問題ないとか抜かしやがるなら、てめぇの口に鉛玉をお見舞いしてやんよ。ちなみにそれ、食べれます。

 純粋に気になりますね。硬さを保ちつつ、食用となる素材。それはフリューゲルのとある加工職人の類稀なる技術の結晶であり、現実世界の技術では到底再現する事のできないものなのだ。とか言っておきます。現実問題、質量保存の法則やらなんやらの関係で釣り合わないので再現は不可能でしょうね。それこそ、ファンタジーというもの。再現できない幻想だからこそ、そこにはロマンが籠るものではないだろうか。異論は認めます。

 以上、無駄話に価値を見出す小説作家、星野夜でした。

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