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第37話『窮地』

 前回までのあらすじ。フリューゲル上空を分厚く覆い続ける積乱雲から突如現れた気体質の翼竜、ガスター。身体を構成するは風の魔力、雲を取り巻いている事で肉眼で視認できる肉体のない翼竜。何を目的か、ガスターは突如フリューゲルの街に攻撃を開始した。口から放たれたブレスは着弾と共に竜巻を起こし、石材で作られた強固な建造物を呆気なく吹き飛ばしていく。南部方面から街全てを更地に還すように、ガスターの巻き起こす災害により、フリューゲルは徐々に崩壊しつつあった。


 主人公こと妄想疾患ガールな私、狐火木ノ葉と、人のステータス数値や情報を好き勝手盗み見る事のできる規格外の少女、フィノの二人はガスターを討伐すべく、ノープランで大空へ。フリューゲル三銃士を名乗る三人組パーティーも魔昇船に乗って討伐戦に加担し、ガスターと対峙する。

「さあ、木ノ葉ちゃん! 本領発揮だよ!」

「やめろ! 勝てるわけがない! あいつは伝説のスーパー気体質翼竜なんだぞ!」

「ガスターちゃんは火属性が弱点らしくてさ、木ノ葉ちゃんの火力をぶつけ続ければ倒せるよ。それに、フリューゲル三銃士も加われば、勝てるさー(棒)」

「ダニィ?! よし、早速伝説のスーパー気体質翼竜を征伐しに出かける! 後に続け! フィノ!」

 そして、ガスター討伐戦は幕を開ける。既に甚大な被害をもたらし、街を半壊させつつある現状。何が何でもガスターを倒さねばならない。フリューゲルの街は災害によって集団パニックに陥り、他に討伐戦に加われる人材はいないだろう。魔昇船も数あるわけなく、フィノのように空を自在に浮遊しながら戦闘に入れる人間も珍しい。つまり私、狐火木ノ葉とフィノ、魔昇船乗船中のフリューゲル三銃士、この五人が負ける事があれば、フリューゲルの街は終わりを迎える事となる。

 上空、ステータスボードに乗って火属性のインクを振り撒き続ける私。ガスターは私の放った噴火炎柱の一撃によって形を崩して縮まったまま、身体を元の形に戻そうと空気を収束し続けている。お陰様で、暴風圏の中でもテキトーに放った攻撃は全て、ガスターの収束に取り込まれて必中。しかし、一向に消滅の気配はなく、縮まっては膨らみ、火属性攻撃を吸い込んではまた縮まっての繰り返し。消耗戦を強いられていた。そんな時だった。

 火属性インクを筆毛に込めて、幾度目のスイングをしようと長筆を構えた私の目の前が真っ赤な炎で包まれた。上昇気流を纏いながら灼熱の炎は収束し続けるガスターを飲み込んで天へと真っ直ぐ伸びていく。その様はまるで火の鳥のように。どうやら魔昇船のフリューゲル三銃士の仕業らしい。その高火力に飲まれたガスターは跡形なく消し炭となり、天の彼方へ。

「いえーいっ! 決まったあー!」

「やったぜ! ざまあみろ!」

 魔昇船の甲板の上、フリューゲル三銃士の剣士アミグダルスと、鳥の翼を生やしたコロルの二人がワイワイ騒いでいた。

 あまりにも突然の一撃に呆気に取られて固まってしまうが、フリューゲル三銃士によってガスターは討伐されたようだった。

「……まだだよ、木ノ葉ちゃん」

「え?」

 考え事をしていたフィノが口を開く。その目線の先は先程までガスターがいたはずの虚空。そこに、小さな雲が一つ、無から出現した。形こそはただの雲だが、明らかにそれはガスターそのもの。先程の一撃を受けて尚、ガスターは討伐できていない。再び形を戻すためか収束を始め、その風の動きの変化に、魔昇船の三人組も気がついたようだった。

「何か引っかかるんだよねー……」

「フィノちゃん?」

 神妙な面持ちで思考にふけるフィノ。普段は何も考えずにのほほんとアホみたいな顔して笑ってるだけのフィノとは別人のようだった。

「あっははは、突き落としてあげよーかー?」

「すいませんでした!!!」

 なんてくだらないやり取りをしている暇はない。ガスターが復活したなら、回復の暇を与えさせないよう、攻撃を続けなければ。

 私は長筆を構え直す。魔昇船の三人もまた、何か別案を練り始めていた。その最中、収束を続けていたはずのガスターに異変が生じる。

「っ?! 木ノ葉ちゃん!!」


ドンッ!


「………え?」

 フィノに肩を強く押されて、ステータスボードから投げ出された。ふわりと身体は宙を舞う。認識より前に浮遊感に包み込まれると、ぶわりと全身から冷や汗が吹き出た。次の瞬間、遠ざかっていくフィノの身体がズバリと縦に切りつけられ、血液が飛散した。滅多に壊れる事の無いだろうステータスのバリアを直前に貼っていたようだが、それすら容易く割られている。フィノは私に私怨を晴らすために突き落とした訳じゃなく、私をその脅威から遠ざけるために突き飛ばしたのだ。それを理解する間もなく、私は前方から迫り来る分厚い鈍色の雲壁にぶつかると、その雲に飲み込まれながら、グルグルと身体を回転させられ、重力に逆らうように水平方向に吹き飛ばされた。


 ガストフロント、その風はそう呼ばれている。積乱雲からの冷たく重い下降気流が水平方向に吹き出し、周囲の暖かい空気とぶつかり合う事で、その境界に形成される風の壁の事である。その際、境界部にはアーチ雲と呼ばれる分厚い雲の壁ができる。

「ガストフロントか、こりゃあ圧巻だ」

 停泊中の魔昇船の甲板から空模様を観察する男の姿。背中に長さ180センチ程の鉄刀を背負い込んでいる。厚めの上着を着込んで寒気対策を取っていた。

「何呑気な事言ってんのよ、ロッド? さっきの三人組、撃ち落とされたのよ! もう残るのは私達だけよ」

 荷物の整理をしながら、もう一人の少女は男へ声をかけた。金色の髪をした少女。男と同様の厚い上着を着込み、加えて異様に長く、解れ気味な赤色のマフラーを首に巻いていた。

「そうだな、ノヴァ。……チャンスは一回、もし外すような事が、もしくは、効かないとするなら、次にあれを食らうのは俺達だ。なあ、ばあさん」

 目線は空を向けたまま、ロッドと呼ばれる男は背後に立つ老婆に話しかける。古布で全身を隠し、顔に面をはめている。腰が曲がっている為か低姿勢で、その身の負担を杖にのせていた。フリューゲルでは厄介者扱いを受けるある民族の一人であり、その境遇を他者に知られないよう、個性的な茶褐色の肌を露出しない服装を纏っている、フリューゲルの呪術師だ。

「重圧をかけるつもりじゃないがのぉ……お主らにフリューゲルの、いや、世界の命運がかかっていると言っても過言ではない」

「かっかっか! 随ーーっ分と高くついたもんだよなあ!」

 皮肉交じりに高笑いしながら、ロッドは魔昇船の舵に手をかけ、船体を浮上させた。舟屋から出航した船は高度を少しずつ上げていき、遥か上空の積乱雲を目指していく。突風に晒されてガタつく魔昇船を慎重に操作して。




 フリューゲル上空、ガスターの放ったガストフロントによる雲壁に身体を持ち上げられ、落下もできずに延々と吹き飛ばされていた私、狐火木ノ葉。回転する気流に巻き込まれた私は、抗えずに身体を回され続け、三半規管をめちゃくちゃにされ、吐瀉物を空へと撒き散らす。人生でこんなに回転したのは、幼稚園の遠足で小高い山を登山した時に、足を滑らして階段から転げ落ちた時以来だ。その時の私は相変わらず馬鹿を象徴するような人間だったため、階段から転げ落ちて全身傷だらけになっても、へらへら笑っていた。尚、実話であるがそんな事はどうだっていい。遠心力に酔わされて吐き気と頭痛に苛まれて、それどころじゃなかった。

 散々振り回されて吐き続けて何分経っただろうか、ガストフロントの勢いが収まり始めた頃、水平方向に飛ばされていた私の身体は高度を下げ始め、分厚い雲壁から抜け落ちて地上へと落下を始めた。衰弊しきった身体と目まぐるしく回り続ける視界。まともに脳は機能せず、ただ襲いかかる不快感を堪えるのに必死だった。

 ガスターによる攻撃、フィノちゃんの安否、墜落死への対策、現在地の把握、吐き気、頭痛、疲労、エトセトラエトセトラ。これ以上、頭脳に残業を強いらせるのはパワハラ案件だったが、今残業しなければ死ぬ。

 もう回転するのはウンザリだが、私はとにかく脳を回転させるために、まずは身体を広げて空気抵抗を上げ、その身を宙に安定させた。見ると、眼下にはフリューゲルの街並みが目に入った。現在地はフリューゲル北部上空。だいぶ吹き飛ばされたらしい。フリューゲル北部にある集会所付近には、南部から逃げてきただろう住民がごった返しになっている。

 次に、目線を南部方面へと変える。ガスターの一撃から身を呈して守ってくれたフィノちゃんの安否が気になる所。フィノの存在は見当たらない。見つける以前に距離が開き過ぎて肉眼では把握出来ない。私と同様でどこかへ吹き飛ばされたのか、もしくは地上へ落下してしまったのだろうか。微かに目に入ったのは一隻の墜落している魔昇船の姿だった。フリューゲル三銃士の乗っていた船。と、その頭上に浮遊する人のような姿も見えた。遠くて誰かまでは把握できない。敵を排除したガスターはその標的を再び街に絞り、ブレスを放ち始めていた。

 そして、私は選択肢の中から今するべき行動を選ぶ。と言うよりは、今の私にできる事はそれしかなかった。

「……ガスターを……倒さないと」

 消去法だ。勝機も何も無い。フィノちゃんを助けるにも居場所も掴めず、地上へと着地を試みようにもその方法を持ち合わせていない。できるのは頑なに離さなかった右手に握られた長筆、それを利用して空を飛び、攻撃を放つ、これに限られた。私は墜落死がほぼ確定している。飛行能力があってもこんな高高度からの着地などできるはずもない。

「……は、あははは……」

 頭がおかしくなりそうで笑いが込み上げる。こういう性だった。物心ついた頃から、痛みや苦しみに反して自然と笑みが溢れてしまう。それどころじゃないが、この期に及んでも共通点に気がつく。メテオ討伐戦の時も、エシラ山遭難の時も、こうして空を落下していた。異世界は私に鳥人間にでもなって欲しいのだろうか。

「……分かってるよ、決めたんだから」

 後悔は二度としたくはない。どうせ死ぬとしても、最期の最後まで、悔いのない生き方をしたいと。あの日、私を庇って命を賭したあの子にも報われない!

「「大丈夫、できるさ、きっと」」

 長筆を持つ右手に力が入る。不思議と冷静になっていく。体の奥底から闘志が湧き上がってきた。恐らく私は狂ってしまったんだろう。狂人とはまさしくだ。

 散々ズルズル引きずってきた主人公の暖機が済んだ。長筆の筆毛に火属性の魔力が込められていく。

「いいか、読者諸君? ヒーローってのは遅れてやってくるんだからね! 幻想色彩(フィクションカラー)噴火炎柱(ヴォルバーナー)!!」

 筆毛は火属性の魔力によって極大のバーナーに変化し、落下する私の身を軽々と持ち上げて引っ張った。攻撃に使うと反動で吹き飛ばされる技だが、その反動を利用すればとてつもない推進力へと変わる。爆発音を響かせながら、まるで隕石のように真っ直ぐと南部へと飛翔していく私。灰色の空に一筋の線が浮かび上がっていた。




 一方、フリューゲル南部被災地。依然砂塵舞う瓦礫の山、その中を足を取られながら茶髪の少年ルフは捜索を続けていた。背中に足を欠損した重傷者を背負い、身につけていた赤のマフラーを包帯代わりに巻き付け、重傷者を身体に固定して担いでいた。恐らくフリューゲル南部に居るだろう仲間のウィンディーネを探しながら、時折空から降ってくる竜巻を魔弾で相殺しつつ、視界の優れない中を彷徨っている。

「君! ちょっと! 早く逃げなよ!」

 無意識で捜索を続けていたルフに、砂塵の中から一人の町人が出てきて声をかけた。砂煙に顔をしかめながら、身を屈めて移動をしている。

「仲間がそっちにいるんだ! それと、後ろのこの人が大怪我を負ってる!」

 ルフは背を向けて背負っている男を町人に見せた。

「それなら、向こうの方にヒーラーの女の子がいるよ! 私も彼女に助けてもらったから! こっち来て!」

「ああ、ありがとう!」

 災害に見舞われる中で、たまたま出くわしたその親切な町人の後をついていく事にしたルフ。その小さな身一つで負傷者を担ぎ歩くルフの姿を見て、町人は砂塵で見失ってしまわぬようにゆっくりと誘導を行い、瓦礫を縫うように目的の場所へ。砂煙の中で子供のような影が一つ、辺りを見回して何か探している素振りだ。

「おーい! こっちに重症の人がいるんだ!」

 優れない視界と耳障りな騒音の中で、町人は手を大きく振って見つかるようアピールを取る。と、それに気づいただろう一人の影が砂煙を割いてこちらへとやって来た。身長はルフとほぼ変わらない小さな背丈に、鮮明な青い長髪と、それと対照的に真紅の瞳が印象的だった。それは紛れもなくヤツさ。

「ウィンディーネ?!」

「ルフ?! ど、どうしたの?! それにその、背中のーー」

 探していたウィンディーネが偶然にも見つかり、緊張の最中で一瞬だけ安堵するも、その傷だらけで頭から流血してるウィンディーネの姿に不安が募る。ルフは色々と聴きたい事があるが、それは一旦飲み込み、背中に背負う重症者をウィンディーネに治してもらう事にした。

「頼む、訳あって俺の魔弾の熱で焼却止血したが、大火傷だ」

 背負う為に使ったマフラーごと男性を地面に下ろし、マフラーを解いて足の熱傷を露出させる。ウィンディーネはその傷部分へ魔法陣を展開させ、回復魔法を放った。

「オーラティオ・ドゥオ……かなり重い傷ですから、ちょっと時間がかかりそうです」

「あ、あぁ……分かった」

 と、言うもののほんの数分でウィンディーネは傷の修復を終える。ルフは案内してくれた町人に頭を下げて、負傷者を安全な所へと連れて行って欲しい胸を説明し、その町人は何一つ不満なく了承してくれた。

「彼は任せてよ! 二人も巻き込まれないうちに早く逃げてくださいね! また会いましょう!」

 負傷者を背負う町人はそう言い残すと、軽快な足取りで瓦礫を駆け抜けて砂塵の中へと消えていった。

「……ウィンディーネ、お前大丈夫かよ?」

 服は砂に汚れ、安定しない体は左右にゆらゆらと揺れている。ルフを見ている瞳も、焦点が合ってるようで合っていない。何より、頭部の出血が心配でならなかった。

「私は、大丈夫」

「んじゃあ、早く逃げるぞ」

「だめ、まだ終わってない」

「……何が?」

「まだ、まだ救える人がいます。……手伝ってくれませんか?」

 今にも倒れそうなくせして、ニコリと笑顔を見せるウィンディーネ。

「ふざけんな、断ると思ってんのかよ!」

 ルフは、手に持っていたマフラーを地面に叩きつけながらそう叫んだ。

「えへへ……決まりだね。行きましょうか、ルフ」

「おう!」

 ウィンディーネと再会を果たしたルフは、災害による負傷者を救うべく、再び瓦礫の森の中を彷徨うのだった。




 フリューゲル三銃士の放った一撃によって消し炭になったはずの気体質の翼竜ガスター。その体の修復を果たし、再び街に災害をもたらしていた。その被災範囲は南部から中部へと移り、砂塵を巻き上げながら街を更地に還していく。

 そのガスターの真下、一隻の魔昇船が運航していた。フリューゲル三銃士の乗り込んでいた魔昇船ではない、別の船舶。甲板には三人の姿。観測士のノヴァとその助手ロッド。そして、フリューゲル在住の隠れネイゲル族である呪術師の老婆。ガスター討伐を決起して一時的にパーティーを組んでいる。

「私が合図するのでな、それに合わせて御二方の渾身の一撃を決めておくれ。魔力の分散と呪力の接触を重ねれば、ガスターは討伐できるはずじゃ」

 仮面越しでくぐもった声の老婆がそう伝えるのを風音の中で何とか聞き取る。

 老婆は手に持っていた杖を持ち上げ、ガスターに向けて構えた。それに合わせて、ノヴァとロッドも戦闘態勢に入る。

「これが終わったらモテ期到来だな」

「心配しなくても出会いのない職場にモテ期は来ないわよ、ロッド」

「あららー、じゃあどこぞの上司が俺にぞっこんになる流れかあー、世知辛い世の中だよ、全く」

「こっちからお断りよ!」

 くだらないやり取りをいつもの様に垂れ流しながら、ロッドは鉄刀を、ノヴァはマフラーに魔力を伝わせ、ジョブの装甲(アーマー)の能力によってマフラーを右腕にグルリと巻き付ける。その隣では老婆が謎の言語で詠唱を始めていた。

「あれ、やるわよ、あれ」

「あんまり気が進まないな、俺は」

「やってくれるならどこぞの部下にぞっこんになっちゃうんだけどなあ〜っ!」

「……世知辛い世の中だよ、全く」

 ロッドはノヴァの背後に回ると、突然、持っていた鉄刀をノヴァの心臓に深く突き刺した!

「一割は残しとけよ、死ぬぞ」

「はいはい、分かってるわよ」

 鉄刀が心臓を貫いても尚、ノヴァは平然とした様子だった。ノヴァは鉄刀の刺さった箇所を自身の波動によって、肉体から電気に入れ変えている。故に、鉄刀が刺さっても血も出なければ痛みも感じない。

「波動『コンデンサー』出力」

 ロッドは突き刺した鉄刀を通じて、ノヴァへと雷属性の魔力を供給する。ロッドの持つ波動は、空気中の魔力を吸収して自身の魔力に変換し保管する能力。通常、魔法攻撃などは自身の魔力と空気中に含まれる魔力を利用する。自身の持つ魔力が尽きれば、魔法攻撃を放つことができなくなる。しかし、ロッドの波動は空気中に無尽蔵にある魔力を自身の魔力に変換するため、基本的に魔力が尽きる事がない。その力をノヴァへ供給する事で、ノヴァは無尽蔵の魔力を利用、限界を超越した最高火力を放つ事が可能になる。ロッドの波動とノヴァの波動が成せる技だ。

「準備が終わったが、御二方はどうじゃ?」

「いつでもいいぜ、婆さん!」

「ええ、準備万……ちょ、ちょっと待って!」

「ノヴァ?」

 何かに気づいたノヴァは老婆に一旦静止を入れる。曇り空の向こう、一筋の赤い光が目に付いたノヴァはその一点を凝視する。それは徐々にこちらへ近づいているように見えた。赤い光、膨大な炎の塊か、流れ星のように光を伸ばして飛翔するそれをノヴァは理解した。

「狐火?!」

「おおっ? 新戦力か?!」

 長筆の筆毛に灯した極大なバーナーを推進力に、空を真っ直ぐ飛行する私、狐火木ノ葉。ノヴァは遠感魔法で私へとコンタクトを取った。

『狐火! 聞こえる?』

「うわっ?! え? 何、誰?!」

 ただガスターを討伐する、ガスターに一矢を報いることに夢中になっていた私は、突然のテレパシーに我を取り戻した。ノヴァから大雑把に作戦を告げられ、訳が分からなかったが了承をする。

『狐火はただガスターに一撃、良いのを決めちゃって! あとはこっちがどうにかするから!』

「この狐火お姉さんに任せなさい!」

 ノヴァは遠感魔法を切る。それから老婆へと事情説明に入った。

「今から数十秒後くらいに、あそこにいる狐火がガスターに攻撃を加えるらしいから、そのタイミングであたしらが合わせるのはどう?」

「……なるほど、それは丁度良いのお。その狐火とやらに合わせる策で行くかのお」

 こうして合図は老婆から私、狐火木ノ葉へと渡され、アンカーは最後の鐘を打つ。


 息を深く吸って深く吐く。心臓は緊張を抱えて加速していた。全身全霊の、人生最期の一撃が迫る。不安は募るばかりだったが、最期の時にノヴァがいる、それだけで心強かった。あわよくば倒せるのでは無いのだろうか、そう思い込めるだけの心の余裕ができた。

 ガスターへの距離が近づいていく。ガスターも私の存在を察知し、標的を再び街から私へ。その眼下、魔昇船が一隻浮遊していて、そこにはノヴァたちが甲板で私の攻撃タイミングを見計らっている。

 私は推進力に使ってた噴火炎柱(ヴォルバーナー)を解除し、慣性の法則で空を滑空する。長筆を宙で構えてガスターへと攻撃を加える準備を整えた。一方のガスターも口を開き、ブレスを放つ準備を始めたが、一手遅れたガスターがその一撃を放つより先に、こちらが先手を打つ。

「いい加減終わりにしよう、ガスター! 夕景(フレイム)第二景、幻想色彩(フィクションカラー)紅葉(プロミネンス)!」

 長筆に込めたるは火の魔力。前回ガスターの風のバリアに弾かれてしまった夕景(フレイム)の進化系、爆破し火柱を放つ高出力の赤インク。残りの推進力も全てを乗せて長筆をスイングした。連続する小爆発を伴って放たれたインクは暴風に煽られずに、付随する爆発で加速しながら、攻撃予備動作中のガスターのバリアを突き破って、爆発を引き起こす。

「良し来た!! お前さんのあっつい奴をぶちかましたれや、ノヴァ!」

「赤色電流放射!」

 右腕に纏わせたマフラーから電気がバチバチと音を鳴らしながら帯電を始め、空気を裂く破裂音と共に纏ったマフラーが弾けると、上空のガスターへと帯電していた赤い電流が放たれた。

 隣の呪術師の老婆はその一撃を見送り、私の一撃とノヴァの一撃がガスターへと衝突する瞬間を狙い、自身の呪力をガスターへと打ち込んだ。黒いモヤのような何かが一瞬だけガスターを取り込んだかと思うと、その直後に衝突した電撃と爆炎によって掻き消える。赤い閃光と黒い爆煙に包まれ、その一撃による爆風が魔昇船を襲う。ガタガタと軋み音を鳴らしながら、魔昇船は辛うじて座標を維持しながら浮遊していた。一方の私は爆風に弾かれ、推進力と逆方向へ吹き飛ばされながら重力に沿って落下していった。

「と……とんでもない威力だ。ノヴァ、全部使ってないだろうな?!」

 魔昇船の甲板の上、暴風に吹き飛ばされないよう身を屈め、鉄刀を納刀しながらノヴァの安否確認を取る助手のロッド。

「ええ、波動一回分くらいは残ってるわよ」

 ノヴァも同様に甲板の柵にしがみつきながらそう返す。その目線は上空の爆煙に注がれていた。

「婆さん、作戦成功、なのか?」

「…………あれは生物ではなかった」

「はーーーー

 ふわりと身体が軽くなった。先程までそこにあったはずの足場がなくなり、三人は空へと投げ出される。強烈な下降気流が魔昇船を襲ったらしい。魔昇船はその風圧に耐えきれず、崩壊。その残骸は瓦礫の積もる街へと降り注ぎ、やがては瓦礫の仲間入りになるだろう。それは魔昇船を失った三人もまた然り。墜落まで残り二分。

 おかしいぞ、気がついたら11月に入ってやがる。もしかして、時間の加速がドンドン早くなってるんじゃあないか?! 前回の投稿が8月なのに1ヶ月がたったの数日で……問題はそれだけじゃない。この時間の加速に読者がついていけるかが問題だ。もし、この時間感覚で読者が動けるのなら……。


「これが……メイド・イン・ジャパン!」

「すたみな太郎さんの無敵のスター・ミナタロで何とかしてくださいよおお!!!」

「くっ……俺のスター・ミナタロの小説執筆時間3ヶ月は長すぎる……。あまりにも長すぎる!」

「さて、ここで読者は考える。果たしてお前のスター・ミナタロはどれくらい投稿ができるのか、と。週一投稿か?それとも月一投稿か…。もしや、この読者の希望と同じく、毎日投稿ができるのかと」

「投稿期間は作者の都合で早くならない、だからお前に委ねる事にしたよ、読者! 物語の展開も『作者の都合』! お前は作者の都合に振り回された! お前は作者に負けたんだ! 物語の展開こそ重要なんだ!!」

「ば、馬鹿な、この読者がぁあああ! この読者がぁあああ(ry」

「やれやれだぜ、読者。お前の敗因は一つだ。お前は作者を焦らせた」


狐火「言い訳を聞こうかな」

作者「物語にはリアリティが必要だ!」

狐火「異世界にリアリティもクソもないんじゃないですかあ? それより早く投稿して読者を集め、有名になってチヤホヤされーー」

作者「この星野夜がッ! チヤホヤされるために小説を書いていると思っていたのかあァッ!!!」

狐火「エグザクトリー! その通りでございます!」

作者「……何も言えねぇ……」

狐火「言い返せよ」


 読者は神様仏様イム様有様人様お父様。さてさて、星野夜と言うどこぞのしがない小説家です。小説をデネブの海に投稿するだけで小説家と名乗りをあげる程度の小説家です。相変わらず変わらないスタンス、下がりつつある語彙力、長くなる投稿期間でお送りする一人暮らしで浮かれてたら異世界転移したので厨病激発しちゃったりする話。完結まで一体何年何十年かけるつもりなのだろうか、そんな事を考えていたら宇宙の真理に触れそうなので止めておきつつ、お元気ですか、皆様。

 私は何やかんやで引越し、新居にて小説を執筆しつつ、モンストに手を繋がれています。モンハンには振られました。YouTubeは束縛激しいです。

 仕事、仕事したくねぇです。部屋に引きこもってたいっす。ヒキニートはむしろ褒め言葉ではないのか、社畜は罵倒じゃないのだろうか、そう思う今日この頃。

 次話投稿、期待はせずにお待ちください。

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