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第22話『コンタクト』

 深夜帯のナチャーロの街中をかけていく私、狐火木ノ葉とルフの二人。日中より少し静まった街をかけていく。横行する人々を縫うように、この時間帯で閉店していない飲食店を探していた。事の始まりは私がクエスト終了後のボロボロな身体のまま、我が食欲を没するが為にルフの財布に手をかけた事だった。

「それに関しては後で請求するからな」

 という事らしいので、後払いで飯を食い散らかしに行く訳だった。良くドラマなどに『ご飯にする? お風呂にする? それとも……』の回答に関しては食欲に勝るものがあるのかと、口を尖らせて言いたいとこだが、仮にルフみたいなショタっ子ちゃんに言われようものなら、即答でショタに手を伸ばそう。なのでルフの手を取って食事に向かう、欲張りスタイルという訳だ。

「いや、どういう訳だ、それは?」

 つまり、フェンリルに噛まれた箇所の服はボロボロに裂かれ、血痕まみれなのだが、こんな状態で飲食店に入ってしまって良いのだろうか。入った直後に警察御用にならないだろうか。職務質問をされるのでは? 警察官と一夜を共に過ごす羽目になるのではないだろうか。

「いや確実だな、そりゃあ」

「取調室でカツ丼とか食べれるかもしれないね、ルフちゃん」

「カツ丼? 何だよそれ? この街の特産的なもんか?」

 どうやら異世界にて、カツ丼なるものは存在しないらしい。私の好物はいずこへ?

 と、くだらない、当たり障りのない、どうでも良い話に花咲かせていると、

「花咲かせてすらないけどな」

 案の定、心を読まれてしまうその最中、めぼしい飲食店を開拓したので足を踏み入れる事にした。時間帯だけあって、その店舗内は閑散としていて客の姿はなかったが、清潔感のあるオシャレなレストランだ。

 中に入ると、やはり深夜帯は珍しいのか、焦った様子でウェイトレスがテーブル席へとご案内されました。

 座るとメニュー表があったので、それに目を通そうとしたが、前に座るルフが挙動不審なのを把握する。

「あれ? ルフ、もしかして?」

「あ、あー、そ、そうだな、あぁ」

 何がそうなのかは不明だが、明らかにレストランに入りなれていない様が見て取れる。さて、可愛いのでスマホのホーム画面用に写真を一枚撮っておいたが、ルフは何をされたか分からず、相変わらずの挙動不審振りだった。

「ルフ、このブラックテール肉のステーキって何?」

「あ、あぁ、それはだなーー」

「それは止めておいた方が良いよ」

 ルフのキョド声を遮り、真横から女の子の声がそう忠告を入れた。透明で綺麗な声、例えるならば曇天の空を穿つ光の筋のような、清らかな水の波紋のような、聞いただけで浄化されそうな美しい声。横を見ると、私の隣に小さな女の子が一緒になって座っている。一瞬、心臓が止まりそうになったが、彼女の艶やかな黒髪に触れようとしている自分がいたので、ルフが咄嗟に足を踏んづけて止めてくれた。そこに座る少女は、幽霊の街ナチャーロに来る際にストーカーされたり、寝室に出てきた幽霊の撃退をしてくれたりした、街中でリセットとか言ういかれ男に襲われた際に救ってくれた、あの女の子だった。気配なく真横に座られていた。

「え? え、え?! あ、何がダメなの?」

 ひとまず忠告の詳細について確認を取る。

「ブラックテール肉、いえ、ブラック肉と呼ばれるものは安価でコストパフォーマンスに長けてるけど、一方でブラック肉自体は魔物掃討の際に出る魔物の死体から搾取してるので、健康面は問題ないが固くて味は良くないので」

 丁寧に説明してくれた。そして可愛いので従う事に。

「お、おい、お前、何しに来たんだよ?!」

 挙動不審に拍車がかかり、動揺しながらルフは女の子へと声をかける。

「お話をしようかなと、思いましてね。狐火木ノ葉さん?」

 名前を呼ばれた。私も随分と有名人になっちゃったな。こんな幼女にまで声をかけられちゃうなんてね。良いよ来いよ、今夜は離さないぜ?

「なら話は早いね! お茶でもしようか、三人で!」

「では私はこのフラッシュのサラダを一つください」

 そして三人のお食事会が始まるのだった。


「本題に入りますがーー」

 フラッシュのサラダを食べながら、その少女は話し始める。その目の前で渋々、麺類のようなものを啜るルフ。

「トナ……じゃなくて……ラーヴァから話は聞いた?」

「「いや全くもって何も」」

「……あのクソオオカミ」

 少女はボソッと悪口とため息を吐いた。

「いえ、何でもありません」

 それは何かあったの意。

「じゃあ率直に聞くけど、狐火木ノ葉さん。君は異世界人だよね?」

 それはこの世界に異世界転移した事を理解している発言。その言葉に、私は希望と不安が入り交じった。言葉を肯定すると、少女は続ける。

 話の始まりは、どうやら私たちが暮らす街であるガルモーニャに起きている記憶喪失の件からだった。最初は些細な事だったが、記憶喪失による人々のパニックが波のように伝わっていき、ガルモーニャの街中で暴動などの事件に発展して行ったとの事。最近のクエスト生存率の低下に関しても、どうやら記憶喪失によるものだったらしい。

 ガルモーニャに所属するラーヴァはこの記憶喪失が何者かによって誘発されていると仮定していた。ラーヴァは前々から密かにこの記憶喪失について調べていて、そこで私、狐火木ノ葉に目を付けた。

 ただ、ガルモーニャにてコンタクトを取ってしまうのは犯人に勘づかれる可能性があった。少なくとも、ガルモーニャの外でコンタクトを取る必要があり、そのタイミングを伺い、ナチャーロにてラーヴァは私に声をかけた、という訳らしい。

「ちょっと待てよ。じゃあ、その記憶喪失が狐火木ノ葉の陰謀かどうかはさて置き、異世界人だから犯人なんて因果関係はねぇだろ?」

「犯人? 私たちは狐火さんを犯人、ではなく、証人として声をかけたの。ただ、反応を見て、何も知らないのは明確だった」

 と、落胆した顔が可愛い少女なのでした。

「いや、もう一つ気になる事がーー」

「狐火木ノ葉さんにコンタクトを取った理由でしょ?」

 先読みされて黙り込んだルフ。理由を語ろうとしている少女の横で、頼んだステーキにがっつく私。

「説明の前に、私の波動について説明しますね。私の波動はーー」

 と、口にする少女の身体が突然薄くなり始めて、あっという間に口の部位以外が消え去ってしまった! 空中に浮いている口。

「一見すれば、身体が消えているように見えるけど、これは私が別世界に転移しているんですよ」

 そして少女の身体は再び濃くなり始めて元に戻った。

「つまり、異世界転移だね!」

「そうとも言うのかな? この能力はね、別世界では、君たちの魂の形を把握したり、また別の世界では今そこにいる二人とは関係ない、地獄絵図のような世界だったりと、色々な異世界へと転移ができる。その魂の形を見たのよ、狐火さんの」

 その形がラーヴァと同様、異質だったと言う。

「異世界人のラーヴァと同じだった、それだけの理由よ、コンタクトを取ったのは」

 その関係性に何かを感じた、そういう事らしいが、この私こと狐火木ノ葉は異世界転移してまだ間もない異世界初心者なので何も答えられない。というか、ラーヴァも異世界人だったのかという衝撃的事実。もしかして、ラーヴァもまた同じ地球人だったりする? それなら気も合いそうだし、何より綺麗だから一緒に老後まで暮らしてみたいとこである。

「その地球と言う世界とラーヴァのいる世界はまた別よ」

 まさかの少女に心を読まれてしまうテンプレート。異世界は心読まれ放題なのかい? 読まれ放題で月々定額なんですか?! そのプランいったいどこで入れますか?!

「本質から違うものよ。君の異世界転移は、Aという本の中にある別の惑星に転移したもの。一方のラーヴァはAという本からBという本に転移したもの。異質には変わりないけどね」

 そう答えてくれました。なんか話が終わったらしく、またむしゃむしゃサラダを食べ始め、独特の空気が当たりを包む。ルフは麺類を完食仕切っていた。

「っていうか、お前、異世界人だったのか?」

「今更?!」

 いやいや、確かにルフには話していない事実。普段はステータス覗き見放題のプランに加入しているフィノちゃんくらいしか、私が異世界人だと言うのは知らない。後は我が師匠アリア氏とウィンディーネくらいか。いや、あと……あの敵。

 それは私がナチャーロ集会所の奥にある休憩室に寝かされていた時に攫いにきたウィンディーネと瓜二つの姿をした別人。

「……私を異世界へ飛ばした張本人なら、知ってるよ? 関係はないかもだけどね」

「教えてよ」

 サラダを食べ切った少女は私へと熱い視線を向けるので、つい唇がスキンシップしたくなるのを抑えつつ、言葉を吐く。

「確か、ゼロっていうショタっ子と、ヘルシャフトっていうやつ。私をこの世界に転移させた張本人だって言ってたけど、どっか行っちゃった」

「そう。それは良い情報ね、ありがと」

 少女はお礼を言うとその場から消えているようにいなくなってしまった。

「あ、最後にフィノちゃんによろしくー」

 それを最後に消えた。

「……あっ?! おい?! お前の代金も俺が払うのかよ?!」

 そしてルフが三人分を払うこととなった。

「ゴチになりまぁーーす!!」

「後払い!」

「出世払いで!」


 それから、夜の街をルフの文句をいなしながら、ダラダラと集会所へと戻るのだった。

 戻ると、フィノちゃんとラーヴァの二人が和やかにお話をしながらティータイムに勤しんでいた。

「あー、二人ともおかえりー」

「なんか、フィノちゃんによろしくって言っといてって言ってたー」

「そっかあー、だれー?」

「えっとね、ラーヴァの知り合いらしいよ。クソオオカミって言ってた」

「少し席を空けますね」

 ラーヴァがにこやかに立ち上がると、集会所を速やかに出ていった。

「狐火、お前……」

「ん? 何か?」

 こんにちは! マンネリ化が加速しすぎて、創作のジャンルが過疎化し始めている星野夜です!


 今回は狐火木ノ葉とルフが、謎の女の子と密会する話でしたが、この中に出てくるフラッシュのサラダとは、日中の太陽光を吸収して夜間に光を放つ巨大樹の葉を使ったグリーンサラダです。通常の植物に比べて光の吸収率や排出率が違うために、繊維、肉質がしっかりとした葉っぱが生え揃うので、シャキシャキとしたいい歯ごたえが特徴。ただ、曇天の日でなければ採取ができず、日中の葉を採取してしまうと、夜間に発光をして目を潰しかねない。

 と、こういう裏設定がありましたが、今後紹介はしないだろうから書いておきました。


 次回! 狐火木ノ葉vs……。

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