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第17話『コンキロスの魔物討伐』

 旧都市『コンキロス』の蔓延る魔物の群れの中、私こと狐火木ノ葉、ルフ、ギルド嬢の三人で、体力限界のウィンディーネを保護するフィノを囲んで背を向けていた。周囲の魔物たちは標的の五人を見つけるやいなや、ヨダレを垂らしながら雄叫びをあげながら急接近してくる。周囲360度を三人係。

「来たー!!! 異世界での、修行の成果、それが何か見せつけてやる! 幻想色彩ーー」

 長筆を構える、つもりだった。背中の長筆を掴もうとする手は代わりに空を掴む。そう、攫われた際に集会所の所に長筆を置いてきてしまったのだった。

「しまったピンチ!!」

「バカかよ、お前……」

 ヤレヤレとため息を吐くルフ。ルフは二丁ある拳銃を片方投げ渡した。

「ごく普通の鉛玉が装填されてる。狐火、それでどーにか凌げ!」

「ぉおおお?! 感謝だよ、ルフ!」

 探偵ドラマさながらの拳銃の構えから、トリガーに指を置き、接近してくる魔物へと焦点を合わせる。

「喰らえ! 魔弾!」

「狐火、そいつはただの弾丸とーー」

 発砲音。銃口から鉛玉が射出されるのと同時にその弾丸を炎が包み込み、一つの火球となって五メートル先の魔物の身体をぶち抜き、爆発を起こす。

「っだああああ?! あれ?」

「は? どーなってんだ? それはただの弾丸じゃーー」

「狐火木ノ葉、ルフ! 今は考える暇なんてありません。今は魔物掃討に気を向けてください」

 ギルド嬢が一喝し、魔法陣から渦巻く暴風を巻き起こし、魔物を一掃する。

「何が何だか分かんねぇけど、良いぞ! やってやれぇ! 魔弾スピネル・スターマイン!」

 銃口から火属性のレーザーが複数放たれ、魔物を的確に撃ち抜いていく。私も負けじと、なぜか火属性の魔弾が撃てる拳銃を使って魔物掃討に勤しむ。

「いいよー、やれやれー!」

 背後からフィノの煽り。可愛いから良し!

 魔物掃討は順調過ぎるほど順調だった。ほとんどが小型動物を模したような種族ばかり。犬や狼などの四足歩行動物型が主に占めている。あまりにもあっさりとやられていく魔物たちにいささか疑問を覚えていた。何せ、このクエストは高難易度。おまけに生還者ゼロの曰く付き。こうも意図も容易く魔物掃討が終わるはずがなかった。

 そんな事を考えつつ弾丸を撃ち込んでいた最中、辺りが地鳴りし始めた。それは大通り奥から徐々に近づいていた。遠目からでも目視できる異様なその姿は、猪。背丈五メートルはあるだろう巨体を前進させて迫ってきている。以前にフィノが倒した猪型魔物よりも数段大きい。

「うぉあ?! あのクソイノシシが! まだ予備がいやがった!」

 ルフの魔弾は弾かれてしまう。前はフィノのステータスの力がやっつけたが、今回はフィノはステータスを全て防御全振りで攻撃にステータスを使っていられないだろう。

「トルネ、お願い」

 ギルド嬢は片手のひらから小さい魔法陣を作り出して、一匹の翼竜を召喚した。二十センチ程の小さな翼竜、緑の体色に体と見合ってない広翼と全長の半分を占める長尾。

「ぉおー、それはダンジョン五階層の空域に棲んでる『風竜クリア』でしょー?! いいなー、ちょーっと触りたいなー、いいなー!」

 ステータスバリア内でフィノがまるで某トランペットを眺める少年のように身を乗り出しそうなまでにバリア越しに身体を寄せて、キラキラした表情でそのトルネと名付けられた『風竜クリア』を見つめていたが、トルネはそんなフィノにそっぽを向けた。

 それからトルネは翼を広げてギルド嬢の真上に飛翔し、そこでホバリングに移ると、口から突然風の魔法を吐き出した! それは私たちに着弾してから展開され、竜巻の包囲網となった。まるで台風の目のように、私たちの周囲にのみ危害を加える風のバリアだ。付近の魔物は皆、近づいた途端に風に煽られて巻き上げられ、風の刃でズタズタに切り裂かれる。おかげで、猪型魔物一点に集中できそうだ。

「ルフの魔弾、狐火の魔弾、そして私の魔法を同タイミングで放ち、猪型魔物を倒します」

「任せとけ!」

「ぉお、おっ、おー!」

 鼓舞されてはいるが、私の銃捌きなんて初心者同然。遠距離に焦点を合わせる事なんか不可能に等しかった。なので、ギリギリまで引き付けてから同時に攻撃を仕掛ける算段となった。確かに遠距離よりも近距離の方がタイミングの多少のズレくらい起きても許容範囲内なのだけど、逆を言えば、この一撃で倒しきらなければ防御圏内のウィンディーネとフィノ以外はまとめて、あの巨大猪にぺちゃんこにされて圧殺されてしまう?諸刃の剣とはまさに、だ。

「あはは! 面白い展開になってきたねー!」

「何が面白いんだよ、フィノ! 呑気に高みの見物なんかしてよ! お前一人であんなのどーにかできんだろ?!」

「あははー、まあ、ほら、修行の一環としてだよー、ルフくん」

「めんどーだな。一気にあいつごと蹴散らしてやる!」

 高みの見物しているフィノの煽りにまんまと乗って、ルフは装填されてる魔弾を全て排出し、一発だけ違う魔弾を装填し直した。それから、私に貸した拳銃を戻して、再び同じ魔弾に装填し直した。

「狐火には負担がでかいだろうから、ここは俺に任せろ」

 私より小さい身体で私の前へと立ち守ってくれようとするその健気さに、私は痺れて憧れていたのはどーでもいい話。

 ルフは二丁の拳銃の背を合わせて横になるよう構え、照準を遠方から迫り来る猪型魔物へと向ける。

「えっとー、名前は分からないんですが、ギルド所属の方、俺は準備OKです」

 なんて話しづらそうにギルド嬢へと声をかけた。ギルド嬢は片手を前へと構える。

「始めましょう。魔法陣二層展開」

 ギルド嬢の構える手のひらから魔法陣が二つ分重なって出現する。直径一メートルほどの大きな緑色の魔法陣だ。ルフもギルド嬢と呼吸を合わせるために押し黙った。

 トルネの放った竜巻が地や空、魔物たちを切り付ける音だけが耳につき、やや不快な気持ちだった。その間、少しずつ地鳴りが大きくなり、猪型魔物の猛々しい唸り声が聞こえ始めた。直撃までもう五秒を迫っていた。そこで今更だが、別に私関係ないなら遠距離で狙っても良かったのでは? なんて事に気がついてしまうが、もしかしたら猪型魔物が賢くて避けるのも考慮すれば、確実性の高い至近距離まで引きつけるのは妥当だと考えを改め直す。

「行きます!」

「食らって爆ぜろ!!」


「魔弾、ハスターキャノン!!!」

「夜天四核、風穿(かざうがち)


 拳銃の発砲音と魔法の魔力放出の音が轟音を奏でる。ルフの魔弾は威力が強かったためか、放った本人が反動で後方へと投げ出されたが、身を翻して何とか風の包囲網内安全圏で着地した。

「ってぇえええ!! 肩の間接外れかけるぜ、全く……」

 ルフの放った魔弾はレーザー。二丁の拳銃からそれぞれ放たれたレーザーには高速回転が掛かっていて、二本のレーザーは回転により、二重螺旋構造のように絡み合って一本の太いレーザーになる。そこに、ギルド嬢の放った暴風の魔法が上乗せになり、直径一メートルの巨大なレーザーに生まれ変わった。それは風のバリアを貫通して猪型魔物を吹き飛ばさずに貫き、大穴をその身体に残した。そして、二人の攻撃の余波は後方遠方にまで影響を及ぼし、後追いの魔物たちのその命を削り取っていった。

「やったねー、らくしょーだったでしょ?」

「こちとら肩外れかけたぞ」

「問題範囲内です」

 化け物揃いのメンツだなと改めて気が引ける私であったが、やはり戦闘に混ざれないやりきれなさがしていた。もし長筆がここにあれば、私も参加できるのにと。

 気づけば付近にいる生命は全て地に帰していた。トルネの風のバリアが解け、私たちの周囲円周を風の魔法が切りつけた跡が地面の深く残っていて、その円周を越えた先は赤い血の海と死体の山で飾り付けられていた。どれほどの命が亡くなったかは知らないけど、あまり見ていて気分の良いものではないのは確かだろう。魔物が動物を模しているのが余計に気が悪くなる。

「んー、おかしーねー」

 フィノちゃんはその光景に疑問があるらしい。

「魔物の数があまりに少ないよねー? 全体の三、四割程度じゃない? これだけ派手にやっておいてさー、他の魔物が気づかないわけないもんねー」

 その通りだ。こんなにアッサリと高難易度クエストをクリアさせられたものなら、その時は読者も打ち切りを疑わずには居られないだろう。無論、そんなことはさせない。なぜなら、まだストーリーが残っているからだ。存分に堪能して存分に味わってもらおう。

「で? 肝心の魔物どもはどこにいるってんだよ? 地面にでも逃げたのか?」

「それならーー」

「この旧都市の最東端に集まってる」

 フィノの口に割り込んでギルド嬢はそう答えた。

「この旧都市『コンキロス』は、東西にそれぞれ出入口があり、この大通りは真っ直ぐ出入口同士で繋がっている。今は草木が生え茂っているのが原因で出入口まで視界には入らないが、進んでいけばその出入口付近にたむろしている化け物が見つかるでしょう」

 平坦に淡々と答えた。

 魔物は出入口から侵入するのは当たり前のことだ。それなら出入口に屯うのもまた必然と言える。フィノたちが『コンキロス』到着後、初っ端から魔物退治に立ち会うことになったのは出入口付近だったからと推測ができる。

「しかし、東口へ向かえば必ず、第6階層級程の魔物がでてきてもおかしくはない」

 第6階層級、それはダンジョン第6階層に到達して初めて相対する事になるモンスター達のレベルで例え、強さの階級を示すもの。第6階層級となれば、熟練者のパーティーでなければ捌くのも難しい。当然、苦戦が強いられる事が容易に思いつく。

「分からない狐火ちゃんのためにー、例えるとねー、さっき倒した猪型魔物がだいたい第3階層級かな?」

「ぉお! つまりさっきの奴の二倍強いだけか! じゃあ、勝てるって! 頑張れ、二人共!!」

 にこやかにルフとギルド嬢の肩に手を乗せる。ギルド嬢には弾かれてしまう。

「あのなあ、勘違いしてるよーだけどな……1階層降下事に倍数で難易度が上がるんだよ」


 フィノとウィンディーネの二人は戦闘の足を引っ張るとの事で、先にフォルターに乗ってナチャーロへと帰還となった。集会所でラーヴァが『生きて帰れた者がいない』と言うジレンマは今日壊されることになるが、多分あれは彼女なりの脅かしだったのかもと考えていた。

 私はルフの引率の元、ってやっぱり引率されている私。そんな私たちは東口へと向かっていた。閑散とする大通りと、左右に広がる民家や商業施設だっただろう廃墟と残骸。植物で覆われた瓦礫たち。舗装されていたはずの道路もヒビ割れてしまい、見るも無残とはまさにだ。

 東口へと近づいていくにつれ、植物などの自然が増していき、やがては街と言うより森のような環境下に変化し出し、もう街の外へと出てしまったかのような感覚を覚えるが、大通りの痕跡を見るに、まだ街中なのは理解ができた。廃墟の代わりに周囲に生い茂る木々が死角になるため、この環境下は非常に厄介だ。加えて、まもなく日が落ちて夜間に入る。そのため、この光を抑えられる木々の中、魔物と一戦交えるのは分が悪い。

「ルフ」

「なんだよ、狐火」

「お腹空いた!! お腹が空いては戦にならぬや、今すぐ食事を取ろう、今! ここで!」

 突如大声でそう告げると私はじたばたと駄々っ子のように暴れだした。って何だこの他人行儀なナレーションは?!

「敵地で飯なんか食ってられるかよ、ばーか」

 呆れたルフに無理やり引っ張られて先へと進められそうになる。そこに、

「……魔力供給が必要です。このまま夜間の戦闘に移る際、魔力不足で相手と対峙しても狩られてしまうでしょう。ここで一旦、休憩でもとってみては?」

 ギルド嬢のナイスアシストにより、一行は一旦休憩を取る事になった。


 大通りから路地裏へと一旦道を逸れ、そこで三人は火を炊き、休憩をしていた。日はすっかり落ちて夜が訪れる。

「そう言えばよ、飯なんか持ってきてねぇぞ?」

 初歩的なミスであった。そこに、

「……いわゆる、急速回復用軽食なら持っています」

 ギルド嬢のナイスアシストにより、一行は魔力補給をする事ができた。ちなみに、急速回復用軽食と言うのはボソボソとしたビスケットのようなもので、正直美味しくはない。ギルド嬢曰く、一つで通常魔法十回の魔力が補給できるとか。

「って言うか、お前は武器ないのに魔力補給の意味あるのか?」

 初歩的ミスであった。私はフィノちゃんと一緒に素直に戻るべきだったが、私はつい武器を持ってると錯覚してしまったのだった。もはや癖の何物でもない。

「では、簡易的な魔法を教えます」

 ギルド嬢のナイスアシスト略。

「狐火木ノ葉、あなたは火属性に富んだ体質をしている。火属性魔法なら即席で可能でしょう」

 つまり、いよいよいよいよ私の願望である魔術師のスタートを切ることとなったのだが、結論から言うとそう言う事だった。つまり何にも出なかった。魔力すら放出できていない模様だった。まるで魔力を持ち合わせていないようなものだった。

「お前のステータス、どーなってんだよ?」



狐火木ノ葉 Lv18


体力    150

物理攻撃  240

魔法力   0

特殊攻撃  0

物理防御  140

魔抗力   220

特殊防御  0

速度    450

回避    300

補正    80%

加護    なし

幸運    +1


ジョブ:ランク5筆使い Lv2

波動:(封印)



「あれ?! なんかステータスある?!」

 ルフに言われて久しぶりに展開させたステータス。この世界ではステータス表示が誰でもできるらしく、魂を持って生まれてきた時点でステータスは手足を扱うのと同じように自在に出す事ができる、と言う設定らしい。

 私が初めてこの世界に転移させられた時、初めてステータス展開をした時は数値がゼロすら表記せずにNODATE扱いになっていた。無論、数値がデータなしであって、実際は何らかしらの数値が振り分けられているらしい、と私の師匠はそう言っていた。

 そのステータスが今、初めて数値として表されていた。思わず感極まってギルド嬢の胸に飛び込んでモフモフしちゃう勢いだった。そして無表情で魔法陣を展開するギルド嬢がそこに。何で心読んでんのさ?!

「魔法力がゼロなのかよ、狐火。初めて見たぜ、魔法力ゼロの奴なんて」

 急速回復用軽食を口に咥えながら、ルフは腑に落ちない表情で呟く。ルフも私も同じ事を考えていると思う。それは、

「つまり私は唯一無二の存在という訳だね、ルフちゃん!!」

 それは違うと言いたげな顔をするルフ。

「唯一無二の雑魚キャラには違いないです」

 ギルド嬢のナイスアシストにより、いや、ナイスアシストとは?

「……ただ、魔法力がゼロだとすると、狐火木ノ葉ーー」

「狐っちっと呼んでくれ!!」

 それはどこぞのたま〇っちなのだろうか。

「分かりました。家畜野郎」

「いや、深刻なまでに辛辣なんですけどぉ?!」

 とりあえずギルド嬢の家畜になれるならありよりのありとは思った。

「あなたに魔法力がないのであれば……あなたは一体、どうやって長筆を使ったのですか?」

 史上最も難問な謎がそこにはあった。

 おはよう、こんにちは、こんばんは!

 星野夜、こちらの時刻は午後11時前! ゆったりとYouTube見ながらティータイムなう! 仕事したくない! めんどうなことしたくない! 何より楽してたい!


 と、gdgd思考の小説家なんですけども、よろしくお願いします。


 さて、今回は第17話となりましたが、今更だけど個人的に良く続いて書けているな、えらいえらいと自分を褒めちぎってやろうかと思いますが、一応脳内ではストーリー自体は完成してます。あ、完結まではしてないが。そのストーリーにどれだけの色、魅力を付けられるかが勝負所だと踏んでます。


 あと関係ないけど、最近モンスターハンター新作出ましたよね。スイッチ欲しい。

 でも、多分買ったら小説執筆が疎かになってしまいそうでならない、いや、なる! 確実に疎かに!! 僕はいつ狩猟解禁できるのだろうか。


 いや、全く持って関係ないたわいない話ってやつです。


 さて! 第18話でも執筆してきます。またのお越しをお待ちしております、星野夜でした!

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