第15話『赤色雷砲弾(レッドベリル・カノン)』
気づけば世界は一つの区切りを迎え、悪魔とやらがのさばる時期となった今日日。一人の人間はうなだれていた。自分一人だけが取り残されてしまったこの世界で、どう生きればいいのかを模索していた。
それとこれは全く関係ないが、狐火木ノ葉もまた、彼と同様に異世界に取り残され、そして今に至る。
「説明がざっとし過ぎて伝わってないんですが?!」
では初めから説明しよう。
天候は朱膜、西からの荒風が酷い日だ。始まりの日としてはこれ以上にないほどの最悪なコンディションとなってしまったらしい。こうなってしまうんだったら昨日に『やっぱり昼飯の味が恋しいから出発は明日にしよう』なんて妥協しなければ良かったと、今になって後悔してるよ。
「プロローグから再スタートするやり口はアニメ制作会社の尺取りだからね?」
その発言は炎上に繋がりかけなかった。炎上するのが得意なフレンズなんだね?! 確かに火属性だった。
「語り口調がムカつく狐火であった」
では初めからーー
「15話の初めから、ね!!」
気がつけば令和を迎え、花粉がきつい季節になりました(執筆時期4月)。僕は最近、創作意欲が湧かなかったり、創作意欲に反してアイディア不足に陥ったりしていた。小説に加え、音楽やイラストなどと幅広い分野に手を伸ばした結果、投稿頻度が悪くなるのも仕方はない。
「そしてまさかの作者語りであった。ちょっとお?! 尺取りじゃん、これ!」
尺取り虫とはまさにこれ。尺取り虫といえば、前回の話(第14話)でルフがワーム系? か、土竜系の何かによって地下に落とされてたね、忘れてた忘れてた。
「伏線回収甚だしいね!」
さて、僕もそろそろ黙ってナレーションでもしますか、第15話のはじまりはじまりー。
「キマシタワー、私のターン!! ーーーって、あれ? ここは……」
メタに塗れた夢から脱出し、驚異的な目覚めを見せつけた狐火木ノ葉こと主人公の私は、暗い空間に寝転がっていた。声の反響的に広い空間だと言うことと、ぼんやりと霞む視界の中で、目の前に二人ほどの人の存在を確認する。
「……おはよう、異世界人」
声から察するにショタ、そう、私好みのちょっと落ち着きのある一方で中性の癒しボイスを放つ、身長はウィンディーネほどくらいだろうか、つい、いじめたくなる小さな男の子とみた。暗くてよく分からないけど、私の耳に狂いはない!
「つまり、おねショタ的展開キマシタワー!!!!!」
暗闇で一人、燃え上がっている私。いや、強いて言うなら萌え上がるだろうか。
「確認したいことがあります」
背後からの唐突な声にさすがの私もビビりました。聞き覚えのある声はギルド嬢とみた。
「あれ?! いたの?!」
「いました。さて、誘拐犯に問いますが、あなた方は先程、狐火木ノ葉を異世界人と称しましたが、なぜ?」
先程、私が暴走したために、状況把握を怠り、どういう状況なのか読者が把握できてないために、メタを取りつつ確認をする。私とこのギルド嬢は前回、つまり話数の言うところの第13話に当たる回にて、ウィンディーネもどきに襲われて捕らえられた、といったところ。
そして暗闇の中で、ショタっ子の発した『異世界人』のワードについてギルド嬢が問いただし、その答えを口にする。
「自覚してないようだから、簡単に説明しますと、この世界に引っ張ってきた張本人と言おうか。まあ、僕の力ではないですがね」
と、発言したショタ声の主。つまり、今、目の前にいる彼は私を異世界転移させた犯人であり、解決策を持っている事になる。という事は? そう、この物語が終焉を迎えようとしている! 私、狐火木ノ葉の異世界転移物語のピリオドが打たれる! 大事な事なので二回言いました。
「じゃあ、逆に言うと元の世界へと飛ばすこともーー」
「もちろん可能ですが、彼が許さないだろう。どうだ、ヘルシャフト?」
彼の声に、隣にいるだろうもう一人の人物は答える。
「……当然です。転移の意味がありませんからね」
落ち着いた、どこか聞き覚えがある声に、私は脳の隅に寄せてるであろう記憶の破片を引っ張り出そうと悩み込んでいた。ただ一つだけ確実に理解してるのは敵である事のみ。逃してくれそうにもない。頼りになるのはギルド嬢のみ。
「あなたたちの魂、私にくれませんか?」
「はい?」
それは単純に死ねと言われているようなもの。そんな事は、
「断じて断わる!!」
「狐火、それは二重表現になります。まあ、そういう事なので、さよなら」
ギルド嬢が手を構えて魔法陣を展開する。緑色に発光する魔法陣が前に立つ二人を薄らと照らし、外見が何となくだが把握できる。その魔法陣から放たれたのは風。空を切り裂く音、一定速度を超えて空気を圧縮し破裂させる時になる、落雷と同様の破裂音を響かせて飛翔したそれは、敵に着弾する直前で急激に高度を上げて天井にヒビを入れた。
「厄災纏、学習しないんですか、君たちは? 攻撃は一切通じはしない、僕の前では」
ギルド嬢がわざと外したわけでなく、狙いが逸れたわけでもない。薄暗いとはいえ、上方と前方を間違えることなんてないはずだ。弾かれてもないなら、操作されたのだろうか。
ギルド嬢の放った風の魔法は天井の岩を破壊して崩落させる。上から降り注ぐ落石。私は慌てて長筆に手をかけようとしたが、所持してない事に気づいて慌てふためく。そんな私を引っ張って左手で抱擁し、ギルド嬢は上方向に風のバリアのようなものを張った。降り注ぐ岩石群は風のバリアによって削られて粉微塵になる。一方の敵サイド二人はと言うと微動だにせずに立ち尽くしているだけ。というのに、なぜか彼らの立つ位置には一個も岩石が落ちることは無かった。かわりに、
「魔弾ルベライト・フォーカス」
落石に混じり、一人の人間が落下してきて突如、火災旋風が巻き起こった。予想だにしない出来事に、真下に仁王立ちの二人は反応出来ず巻き込まれた。爆煙が落石を吹き飛ばし、辺りが煙幕に包まれる。
「……何なんだよ、一体……いててて。咄嗟に魔弾撃ってなかったら落下死するとこ……」
聞き覚えのある声、気がつくと『聞き覚えのある声』を多用しすぎている現状について、語彙力皆無の作者は必死こいて類義語を検索しているが、どうしたものだろうか。ついでに舞っている煙幕が落ち、視界が開けてくるとそこには、ルフの姿があった。
「あれ?! こんなとこで何してるの?! はっ?! ひょっとして、この私の事が好きすぎるあまり、私の存在感というオーラを感知して着いてきてしまったというの?! ふふふ、良いのよ、ルフちゃん。私の心の準備はいつだってーー」
「いや、何してんだよはこっちのセリフだろ?! 色々と気になる事があるが、それよりも、あそこの物騒な奴らからだな、狐火」
たまたまルフが受け身で放った魔弾、それは二人の人間の隙をつき、一撃を与えていた。服が焦げ、肌に火傷が見られる。そして、天井に大穴が空いたおかげで、その人物の外見が目の当たりとなった。一人は完全に黒のローブで顔などを隠しているため、どこの誰かも分からなかった。一方で、隣にいる人物は青くて艶やかな長髪、小さめの体躯をしている。あぁ、別に胸がないとかそういう意味の『小さい』じゃないんだからね、勘違いしないでよね! まあ、小さめのお胸も大歓迎だよ?! そんな小さめの胸、改めて体躯の彼の外見はどう見てもウィンディーネそのものだった。
「あれ? ウィンちゃん?!」
「狐火木ノ葉、行ってはいけない」
デジャブを感じた。私の見ているあの子の姿は確実にウィンディーネなのに、違うということなのだろうか。
黒ローブの男が口を開く。
「いやいや、まさか頭上から第三者に隙を突かれてしまうとは思いませんでした、お見事。ゼロ、後処理は頼みました」
黒ローブの男は隣に立つウィンディーネをゼロと呼び、そう伝えるとそのまま透明になって消えてしまった。恐らくレイヤー丸ごと透過率を100%にしたのだろう。なるほど、私のビジュアルも透過率を100%にしたら透明化して女の子のお風呂覗き放題できるんだろうか。
「……ウィンディーネ、じゃないな。誰だ、お前?!」
銃口をゼロに向けてルフが牽制する。大したこともなさそうに彼は、
「答える義理はない」
そう答えた。
「じゃあ、食らってくたばっとけ! 魔弾ラズライト・クラスター!」
ルフの放った魔弾は発砲直後、ゼロの周囲に無数の水の塊のようなものを出現させ、瞬間的にゼロを包み込んでから収縮して圧殺した! はずだった。普通なら今ので終わっているはずだったが、この作者はそうはさせてくれないらしい。
「厄災纏」
収縮していたはずの魔弾の水属性攻撃は突然破裂してしまい、この空間に雨を降らせた。
「……は?」
何もしていないゼロ。無効化させられた魔弾に頭が追いついてないルフは、二度目の魔弾を発砲するも、同じように無効化させられてしまった。
「……強力なバリアでも張ってるっつーわけか? いや、そもそもあいつは……ウィンディーネ、じゃないにしても、恐らく水属性だよな。そんな奴に水属性魔弾が効くわけないか。ならば……」
魔弾を装填し直し、再びゼロへと発砲を試みる。今度の魔弾の属性は雷。
「……やるしかないか。狐火とそこのギルド嬢、少し離れていてくれ」
そう言うと、魔弾が装填された拳銃をゼロに向け……なかった。ゼロに合わさるはずの照準はルフ自身のこめかみに合わせられた。私が止めようと声をかける間もなく、トリガーが引かれて雷管が爆発し、魔弾がルフのこめかみに炸裂する。全く謎でしかない行為に私は脳の処理が間に合わず混乱した。突然の自殺行為の引き金が見当たらない私。
引き金を引いてしまったルフは体勢が崩れて倒れる、寸前、何と足を突っ張って倒れるのを堪えたのだった。こめかみに銃撃を受けてなお、死なずに生きている。理解が追いつく前に、ルフに異変が起きていった。
ルフの身体に電撃が走り、帯電状態になった。そう、恐らく魔弾の能力なのだろう。でなければ、自ら死ぬような真似はしない。
「「ーーさぁ、トドメを刺してやる! 覚悟しなさい、ノーグ! あ……あれ?」」
口を開いたと思ったら意味不明なセリフ。さすがの私もこの連鎖に黙りこくってしまう。
ルフは戸惑ったように辺りを見渡し、それから自身の拳銃と身体を確認して謎の納得感を得ていた。
「「そっかー……なるほど、そういうことね。まさか本当に実践するなんて」」
心做しか、ルフの声がダブって聞こえるような気がした。
「「ルフ、ところで何用なの? あぁ、俺は雷属性は使えないから呼んだ。全く姉使いの荒い弟なんだから」」
さっきから自問自答をしているルフは、後ろを振り向き、私たちの姿を視認するとまるで、そこにいたのを知らないかのように驚いた顔をした。
「「あれ?! アンタ、狐火じゃない?! 何してるのよ?!」」
オネェ口調になってしまったルフ。キャラ崩壊が否めない。よく見ると左目の瞳色が黄色に変わっている。
「え? その、ルフ?」
「「あぁ、俺から説明するぜ。ノヴァの事は覚えてるか?」」
ノヴァと言えば、第1章第14話にて登場した新キャラクターで静電気人間の異名を持つルフの姉の事だろう。
「「ノヴァの魂と今、リンクしてる状態だ。全くー、危なっかしい事するよね、この子ってば」」
「あの、同時に話さないでくれますか?」
ルフの装填した魔弾の能力が、脳波を通信電波のように送信して対象の脳波とリンクする、失敗すれば脳が電波に耐えれず死滅してしまうとか。ノヴァの属性が雷であるが故の成功策。ただ、独り言のように自問自答してるようにしか見えないのが難点だろうか。
「おもしろい。研究に使えそうだ、少し素材を分けて貰えないか?」
ゼロが興味深そうにこちらへと歩み寄ってくる。ルフの魔弾が物珍しいようで、実験素材にしたいらしい。
「「あげるかよ、バーカ。欲しいなら力づくで奪えば良いだろ。できるならな」」
ルフは右手の拳銃を近づいてくるゼロに向け、狙いを定める。全身から電流が走り始め、首に巻いている赤のマフラーが構えている右腕に巻き付いた。
「「なんか憑依解いたら全身痺れて動けなくなりそーだな。それは覚悟の上じゃなくて? まあ、そうなんだけどよ。誰もお前みたいに静電気人間じゃねぇからな。好き好んでこの体質になったわけじゃないわよ」」
独り言のように会話するルフとノヴァ。マフラーは拳銃を飲み込んで右腕にグルグルと巻き付いてしまった。全身に走っている電流が、その構えた右腕のマフラーに帯電し始め、赤く輝き出す。バチバチと空を割く音が耳につく。ついに地すら共振し、地響きを立てながら揺れ動き始めた。
「こ、これは名作画シーンになる、ね。大変そーだな、アニメーション制作会社は」
まるでアニメ化されているような物言いだった。
「「最大出力! 赤色雷砲弾!!」」
右腕に巻きついたマフラーへの帯電がピークを迎え、太陽のごとき光量を放ち始める。視界全てが白に染まっていく。さすがの光量にゼロも歩みを止めて目をしかめていた。
「ル、ルフ!!」
「「任せとけよ、狐火ーーーー」」
ーーーーーーーーーー
時が止まった、そんな気がした。
執筆時期が4月で? 投稿時期は8月? おやおやおやおや? 時が飛ばされてしまったのか?
どうも、星野夜です。夏の終わりに差し掛かり、数多の課題を残して、絶望と怠惰に苛まれている星野夜です。
全てにおいて中途半端に終わった夏。今更感のある小説投稿。誰が待っているんだと言いたげな読者。いや、読者がいるだけマシだと満足する星野夜。
さて、今回もまたメタの塊を投げつけた感じが否めない。
次回投稿はいつなんだ、星野夜? 気が向いたら。




