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第12話『消失』

「早く逃げなよ」

 真っ暗闇を切り裂き、降り注ぐ光の筋のような、透明で清らかな水の波紋のような、その声は私の中に渦巻いていた負の感情全てを洗い流してくれた。かき消された心の蝋燭へ、彼女が小さな火種を与えてくれた。私よりも歳下のまだ小さな子が、狂い荒れる男の前に立ちはだかり、私を保護しようとしている。その姿は自分なんかよりもよっぽど大人だった。その背中を見て、この子がどれだけの実力者なのか伝わってくる。彼女だったら、もしかするとあの男に勝てるかもしれない。どこかでそんな希望が湧いていた。

「……あの時の、女の子……だよね?」

「そう、私は君の敵」

「……へ?」

「君を殺すためにきた」

 話の辻褄が噛み合わずにツッコミ入れる余裕はなく、私はただただ戸惑うだけしかなかった。

「よぉ、クソガキ二号! お前が殺すなら俺が殺すのも同じだよなあ! そこどけよ、お前も殺すぞ?」

 ギラついた目で彼女を見下す男。ゆっくりと歩み寄ってくる敵は、敵意を剥き出しにしている彼女に全く危機感を感じてない。

「リセットって名前でいいかな? この旅人を殺すのは私。人の獲物を横取り? どうなるか分かってる?」

 リセットと呼ばれた男と謎の少女との睨みっこになってるけど、私としては生きた心地がしない。どちらにしても、殺されるのは確定事項だった。逃げないといけないが、身体は言うことを聞かないパターンらしい。二人の会話を最後まで聞くことなく、歪み始めた視界が暗転していく様をただ呆然と見つめるだけだった。

「ぎひひぃいっ! さては、反乱でも起こそうっつーのかぁ?! ぎゃはははっ!」

「口封じに殺す」

「それもまあ、悪くねぇーなぁ、おいっ!」


「……お、おい? これはどういうことだよ?! フィノが敵と一緒に消えちまったぞ?!」

 リセットという男と狐火が二人きりになっている頃、ルフは狐火木ノ葉と二人きりになっていた。

「やぁー、ルフ」

「な、何だよ?」

「喰らえ! 炎柱長筆バーナーステッキ!」

「っ?!」

 突如、狐火木ノ葉がルフへと長筆を向け、バーナーを放射した! 狐火はなぜか攻撃の際、毎度の様に宣言を懲りずに行うので、予測は難ではないが、また戯れのつもりなのだろうか。ルフは即座に魔弾をセット、狐火のバーナーに類似した火属性の魔弾を放ち、相殺させた!

「やれやれ、今はそれどころじゃ……なっ?!」

 火属性のバーナーを飲み込むような形で、水属性のレーザーがルフへと猛威を振るおうとしている。ルフは狐火が本気で自分を倒そうとしに来ている、その敵意を受け取り、一時的に熱意に駆られてしまった。

「へへっ! そうかよ! なら遠慮しないぜ?! ルベライト・フォーカス!」

 次弾に装填した魔弾ルベライト・フォーカスは火属性と風属性の合わさった魔弾。銃身から飛び出した魔力が空気中で膨張し、銃口から1センチを経過した途端に巨大な火災旋風となって標的に襲い掛かる仕組み。圧倒的火力は時に水よりも強く、狐火の水属性レーザーを瞬時に蒸発させ、余った火力は狐火本体を吹っ飛ばした!

「うおっと?! やべぇ、つい!」

 予想よりも遥かに高火力を維持した魔弾は地面を掘削しつつ、狐火を民家の壁に叩きつけるような形で止まった。風圧で飛ばされただけで、大火傷は間逃れているが、狐火木ノ葉は立つ気配はなく地面に仰向けのままでいる。そこに、突然小さな女の子が一人、あたかも瞬間移動したかのように目の前に現れたのだった。


(……あ、そういうこと……)


ーーキィィィィィンーー


 空から降り注ぐ響音。音叉を思い切り叩いたような、透き通った高音域が澱んでいた脳内を揺さぶり、本来の機能を取り戻す。

 鏡が飛び散るように夜闇が弾け、世界に再び光が差し込んだ。そして彼らは気づくことになる、自身の過ちを。

「あ、晴れたね。敵様ながらアッパレー、ありがとねー」

 昼の日向の中、煙を吐きながら破損しているフォルターの横でフィノちゃんがのんきにあくびをしつつ、ヒビの入った民家の壁下に倒れる私、狐火木ノ葉の前に立つ小さな女の子へと目線をやる。女の子は魔法か何かで灰色のマフラーを出現させて口元を隠すように巻いた。

「……おぃ、狐火、おい……し、死んで、ねぇよな……」

 不安げに真っ青な顔で駆け寄ってきたルフが私の安否確認をして、ホッとしつつ、謎の女の子の登場に警戒していた。

「あはは、あの時の女の子だねー? 色々聞きたいことがあるけど、まずは……君が幻覚解除したんだよねー? 敵が何で助太刀なんかを?」

 ニコニコ笑みを振り撒きながらゆっくりと女の子の元へ近づいていくフィノちゃんに対し、女の子は微動だにせず、質問への回答を口にする。

「元は君たちを殺す目的だった。ただ、気が変わった。殺すにはもったいない。……侵食心眼、なぜここにいる?」

 女の子の回答を聞いたフィノちゃんの歩みが止まる。ニコニコした笑顔のまま、突如女の子へとステータスの刃を突きつけた! 女の子を囲むようにして宙に十枚のステータス。それですら微動だにしない女の子は宙に浮かぶステータスの刃を見上げ、

「能力は健在、な感じね……」

「っ?!」

 その言葉はフィノちゃんの背後から。耳元で囁かれて珍しくビクリと身体を震わせたフィノちゃん。先程までステータスで狙っていた箇所にはうっすらと残像があって、消えてく様を確認した。フィノちゃんが女の子相手にまさかの逆手を取られている。

「……あはは、君が何者かは知らないけどー、ここにいる理由なんて説明の必要ないんじゃないかなー?」

「……目線が逸れてる。ステータスでも覗き見して、情報を奪うつもり?」

 見抜かれてしまっていた。彼女はフィノちゃんの特殊能力を、フィノちゃん本人を知っているらしい口振りをしている。フィノちゃんは必死に彼女について探りを入れようとしているのだろうか。

「ははっ、つい癖でねー。……ナチャーロは驚きが止まらなくて楽しいねー」

「……君たちに奇襲をしたのはリセットと言う男で、幻覚の能力を持っている……私の身内です」

 そう言うと、彼女は目の前から消え去ってしまった。やはり瞬間移動の力だろうか。敵であるリセットと言う男の存在も、気付かぬうちにいなくなっていた。

 フィノは気絶した狐火をステータスに乗せ、浮遊して運ぶことに。狐火に銃撃を加えてしまったと罪悪感に取り憑かれたルフは暗い顔でフィノの後に付いてく。煙を吹くフォルターと三人が取り残された大通りは不思議な程に静寂が取り巻いていた。

 どうも、最近執筆速度と語彙力が比例して低下中の星野夜です!

 花粉症の脅威が過ぎ去った今、なぜだろうか、未だに花粉症の様な症状に襲われつつあります。そして、投稿ペースが遅くなってるのはネタ切れとかじゃなく、花粉症のせいだと、そう言っておきます、言い訳じゃないもん!!


 仲間同士の戦闘になりました、第12話。リセットの幻覚により、互いが敵同士になると言うからくりでしたが、なぜかフィノちゃんだけは一人取り残されてしまう。いや、むしろフィノちゃんだけは幻覚に気づいてた節があるから、彼女だけ無視は正解かなと思いました、星野夜です。

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