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第11話『女の子が夜襲される昼』

 鬱蒼と言う表現が雑草に扱われるとしたら、今あるこの状況は雑踏で表すべきだろうか。人間砂漠とはよく言ったものだ。人間たちによる雑踏の音をお楽しみいただける雑踏の中、私たちは集会所を目指して歩いていた。中央区から北東へとまっすぐ城門に続く大路地を沿っていき、出撃門付近にナチャーロの集会所が存在する。ナチャーロ住民の勇者たちは唯一存在するその集会所でクエストを受注、出撃門から外の世界へと旅立つとのこと。中央区住民の勇者たちは、魔力を用いて自動運転する『フォルター』と呼ばれる、低浮上する乗り物に乗って集会所へと向かうらしい。なんせ中央区から集会所のある北東端へは四地区ほどの距離があるので、歩いて向かう者などいないらしい。

 そこで、フィノちゃんの能力に任せ、擬似硬貨を偽造してフォルターにただ乗りすることにした。

「言っておくけど、偽造した硬貨はあくまで視覚操作によって硬貨と勘違いさせてるだけだから、このフォルターと言う無人式魔法車には通用しないからね」

 ということでこの策は失敗に陥る。フィノちゃん曰く、フォルターは魔力ではなく霊力を利用してるらしい。

「この世界線とは全く別の物体だねー。まるで狐火ちゃんみたいだよー」

 誰が無人式の働き続ける社畜車だよ、コノヤロー! まあ、フィノちゃんが私の上司ならまた別の話だけどね。さぁ、私と一緒に別の世界に堕ちようか。

「さて、狐火ちゃんは別の世界に独り堕ちるらしいから、ルフと共にフォルターで集会所へと向かおうかー。大丈夫、あのフォルターもステートコントロールで硬貨を支払ったことにしておくからー、あはは」

「ちょ、待てよ」


 一言で言うとフォルターと言う乗り物はバスからタイヤを取り除き、浮上させたようなものだった。内装は汚れ一つなく綺麗に掃除され、座席は縦二列計二十四席。運転席は無人式なので当然存在しない。

 フィノちゃんの能力でただ乗りできたものの、なぜかフォルター内は私たち以外、誰も乗ることはなかった。完全貸切状態、この車内なら何しても逮捕されない、安全フラグはここに今、立ったよ!

 空気の抜けるような効果音と共にフォルターの扉が閉まり、集会所へ向けて動き出した。浮遊しているので感覚的には飛行機に乗っているのと変わらない。つまりーー

「ぅお゛ろろろろろろろろろろろっ!」

 嘔吐物による匂いとせせらぎをお楽しみください。

「うぉあ?! きったねぇ! 何してんだよ?!」

「あ゛? これはぁ、ダイナミック反芻だよ」

 確実に言い逃れできない、嘔吐物のナイアガラであった。私、狐火木ノ葉は飛行機酔いしやすい体質である。長筆で飛行した時は吐かなかったくせにと矛盾的欠点を見つけたそこの読者……勘のいいガキは嫌いだよ。

「ダイナミック反芻か、なーんだ。ならお前、これ食うんだよな?」

「狐火ちゃんは雌牛なんだねー」

 はい、あなたの雌牛でございます! フィノちゃん専用でお使いいただければ私としては幸いでございます!

「床が汚れちゃうから狐火ちゃん、早めに反芻終わらせてねー。狐火ちゃんのことだから食べ物は残さず処理するもんねー」

「そりゃそーだわー。この女に限って残すとかないわー、ははは! そもそも食べ物を残すとかーー」

幻想熱処理フィクションブレイズ

 水分が一瞬にして蒸気に変化する音。私の放出した火属性のインクが吐瀉物とドッキングし、空気と化す。汚物と引き換えに、足元には焦げた跡だけが残っていた。

「私に召されて食物たちは天へと昇っていった、すなわち処理してあげたのだ! はっはっは!」

 ガガガガガガガガッ!

 高らかに笑い声を上げた私を抑圧するかのようにフォルターが突如、大きく揺れ始めた。体勢を崩し、座席にヘッドショットしてしまう始末。あの低火力でフォルターがやられたというのだろうか? またつまらぬ公共物を壊してしまった。フォルターは浮遊機能を失い、摩擦音を響かせつつ無事停止した。いや、フォルター自体は無事どころではないが。

「お、お前ぇ……フォルターごと天に召してどーすんだよ……」

「私が壊したのではない! フォルターが弱かっただけだ!」

 昔から良く、触れる物々を瞬時に破砕する程度の力を持ち、友人達からは消しゴム一つすら貸してもらえず、ちまたでは『破壊神』とまで呼ばれる始末である。いや、ちまたにほとんど認識されてしまったのだ。もしかしたら、私の真の力は触れる物を破壊する『全てを無に帰す』力なのでは?!

「ぎゃはははああっ!!!!! よおっ! 放浪人ども!」

 外から響く狂喜に満ちた男の声。フォルターの割れたフロントガラスごしに立つ、良く言えばストリートファッションに身を包んだ背の高い男が、フォルターを片腕で受け止めている姿をこの目に押さえ、私は窓を叩き割って飛び出し、言い放った。

「うわー、お前! フォルターが壊れて止まった後に、あたかも自分で止めました感出してるぅー! 恥ずかしくないんですかぁああああ?!」

「あぁ゛? んなんじゃねぇよ! てめぇ、殺してやるからな!」

「つまり、認めるんだー! うわー、恥ずっ! 見てられなーい!」

「うっせ! うっせ! ばあーか!」

 久々に学生ノリみたいな会話を繰り広げられ、身も心も謎の満足感に駆られつつ、煮え滾る闘志の炎を不意打ちという形で叩き込んでくれるぅ!

器物破損型光線炎柱タイプダメージレーザーバーナー!」

 それは、厨二病チックに名乗っているが、単なるスピードアップしたバーナーである。構えた筆先から敵までの距離およそ五メートル間に一本の垂線ができあがった。そして私はと言うと、

「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!」

 毎度のこと、反動で吹っ飛んでタイヤと化していた。あ、今ちょうど壁に激突してぐほあっ?!!!

「……毎回思うけどお前、本当に馬鹿だよな……」

 私の奇行に対し、ルフはやれやれと溜息をついた。ちなみに、敵は無傷。私は重症。

「ぎゃはははは! なんだそのカスみてェな攻撃はよぉおお!」

 狂喜する男は白煙を払い除け、こちらへと急接近してきた! どうやったのかは不明だが、瞬時に数メートルを縮めたように思えた。砂埃に塗れて天を見上げていた私の視界に男の顔が映り込み、その殺意と快楽の表情に私は珍しく青ざめる。逃げる、その意識が身体に指令を出そうとしていたその前に、見下していた狂喜の表情が爆煙に包み込まれた。

「早く起きろよ、ばーか!」

 ルフの魔弾が敵の後頭部にクリーンヒットしたらしい。今すぐはね起きて敵から距離を取りたいとこではあるが、私は魔弾を後頭部に受けた男が倒れず仁王立ちしたままでいることに疑念を抱いていた。爆煙に紛れ、男の鋭い眼光を視認し、私は行動に出る。

「炎柱……え……?」

 長筆の絵の具に火を灯した時、周囲の異変に私は気づいた。先程まで明るかった空が一転、夜の帳が落ちている。それだけではなく、身体を起こして周囲を確認しても男と私の二人きり。フィノもルフの姿もなく、壊れたはずのフォルターすら消え去っていた。

「ひひっ……怖いか、女?」

「……何これ……?」

 閑静な街中に私たち二人だけが取り残されたような感覚。夜ですら喧騒で溢れる街ナチャーロがこの黙りよう。電灯の灯りが一定間隔で光っている様が、人のいない街に不釣り合いで不気味だった。

「よぉ、女ぁ。二人きりだなあ、おい!」

「……とりま、炎柱長筆!」

「遅せぇな、ぎゃははぁ!」

 男は私のバーナーと似たような技で攻撃を相殺した。相手が火属性の可能性を考慮し、私は次弾を放つ。火をかき消すような水流を。

水柱長筆ハイドロステッキ!」

 筆毛の色を青に変化させ、消防車の放水のごとき勢いで水属性のレーザーを放った。しかし、直撃寸前でそれは白い煙となって蒸発し、消え去ってしまった。とてつもない熱量によって瞬間的に蒸発させられたらしい。気を抜いてしまったその一瞬に、煙の中から突出してきた火属性の旋風が私を巻き込んで地面を掘削しながら民家に激突して私は力尽きた。水属性攻撃の飛沫で身体が濡れていた私は軽い火傷で住んだが、手足に力は入らず。長筆は数メートル先に落ちて届かない。

「ルベライト・フォーカス。ざまあーねぇな、おいおい!」

 聞き覚えのある魔弾の名前を敵の男が零した。ルフの使っていた火属性の魔弾。それが私に猛威を奮ったのだった。

「……いっ……た…………ぁヤ、バい、えへへ……」

 この状況で私は何故か笑みを浮かべている。衝突の痛みと孤独の恐怖にそれどころではないはずだった。絶望的とはまさにこの事だろう。打開策なんて思いつくはずもなく、死へのカウントダウンを待つのみ。男が私へと歩み寄るこの時間が死刑執行猶予となっていた。そんな私の目の前に、あの子が現れたのだった。

「……あ、あれ? 君は……」

 黒髪の艶やかな可愛らしい幼女がそこにいた。彼女は一言、聞こえるか聞こえないかの瀬戸際くらいの小さな声で一言、呟く。

「早く逃げなよ」

 デジャブを感じた。

 一ヶ月半の時を超え、今再びここに帰ってきたぞ、お前ら。


 どうも、k本的に一ヶ月休み定期な小説作家、星野夜です! そして、ただのサボり……ではないです!

 ここ一ヶ月半、僕は小説を全力で漫画家させていたわけで、一時小説執筆を停止していただけ!

(決して、ネタが無いから休みます、ってわけではない!!)

 とまあ、久々に投稿できて嬉しい限り。読者も諦めず待っててくれたようで何よりです!


 さて、今回、またしても敵キャラ登場。僕は前々から小説を書いていて思うことがあるんですが、戦闘相手がほとんど人類! いや、喋れない動物系と戦うのも良いんですが、会話がね、ほとんどなくなってしまうので(僕の執筆能力の低さ依存)それゆえに人VS人がありがちになっています。

 つーことで、彼らが無事に集会所へ辿りつければ、きっと動物系の敵が出ると! 一応、頭の中では構想されてます。


 はい! 次回!

 助っ人登場!

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