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第10話『ひき肉専用パンドラボックス展開』

 人類の技術の結晶。時間を切り取り、保有することを許した記憶する機械。この異世界には存在するはずのない物品。それが『映像記憶装置カメラ』である。

 カメラは発明されてから数多の記憶を撮影し続けてきた。人であり、物であり、動物であり、景色であり、それらの事実をありのままに記憶し保管する。

 ただ、その際に誤算が生じてあるものを撮影することになってしまう。一般人である私などが肉眼によって確認することはできず、その存在は今日に至っても半信半疑で、人類を恐怖に至らしめている。見た目通りに信憑性も薄く、科学的にも証明されてない彼らは『幽霊』と呼ばれるようになった。

 カメラは偶然の副産物で、死者の魂を切り取ることに成功したのだった。

 そして今宵もその技術は活用され、人々の役に立つことになる。


「フィノちゃん?!」

 幽霊の街ナチャーロにて寝泊まりに使っていたホテル、その裏路地。私とフィノちゃんの二人は、透明化した敵と対峙していた。

 私の視界の中で、フィノちゃんが吹っ飛ばされ、壁に激突して倒れる、らしくない無様な姿を晒していた。フィノちゃんは頬に一撃を食らって赤く腫れているが、なぜかその表情は平然と笑みを浮かべていて、まさしくドMの所業。何だ、何ともないじゃない。

「あっはは……狐火ちゃん、怒っちゃうよ?」

 笑顔で呟くフィノちゃんの頭に、突如出現した『右足』が容赦のない強烈な蹴りを加え、フィノちゃんに血を噴かせた。鼻が折れて血が飛び散ったのだろう。許せない、幼女をこんなにされて黙ってる私じゃない。

 私はフィノちゃんに覆い被さるようにガードを固め、背中を思い切り踏みつけられるが、まあ悪くない。ドMじゃないからね! あくまでフェミニストです……小さい子向けの。

 敵は実体化し、視界に捉えれる範囲のみ攻撃が通用する仕組みと見た。部位的に損傷するのは実体化している部分としてない部分があるから。それは私の炎柱が証明してくれた。あとはーー

「いててて……フィノちゃん、無事?!」

「あっはは……そちらこそ」

 フィノちゃんが簡単にやられるわけなかった。そうだ、彼女はメテオの強烈なレーザーブレスを顔にもらったとしてもヘラヘラと笑みを浮かべるような人外だったもんね。顔完全に溶けてたけど、あの時は。

「私の頭の上、今だよ!」

「パンドラボックス展開」

 敵が私を踏みつけるために出現するよりも前に、私はフィノちゃんへと合図を送った。

フィノちゃんは攻撃するために現れた右足を捉え、六枚のステータスによって動きを封じることに成功する。フィノちゃんは珍しく目を見開いていた。まさか、この役立たずのクズ主人公が敵の動きを予測しているとは思わないもんね。って誰がモテ女だよ、バーロー!

「ふーん、ネタだけしか取り柄のない頭だと思ってたけどそうじゃないんだねー、感心感心」

「ネタを作るのにも頭使うんだから覚えておきなさい!」

 敵の攻撃はフィノちゃんのステータスにヒットして終わった。

「あははは! さぁーて、仕返ししちゃうよおー? ボックスミキサー!」

 あ……。これはモザイク候補かもしれない。

 六面体となったステータスは、右足を囲ったまま浮遊し、宙で高速回転を始めた。動きが遅く見えて残像が残るほど素早く乱回転をする六面体の中で、右足はステータスの壁に何度も何度も叩きつけられて複雑骨折どころの騒ぎではなくなっていた。やはりモザイク処理を施して正解だったか。恐ろしい技を使いよる、この幼女。

 しばらくして、半透明のステータスが鮮血で赤く染まる頃ーー怖っ、右足だけとはいえミンチにされちゃ、ひとたまりもないね。ステータスにぶつかってたはずの右足の音が消えて、風を切るステータスの回転音だけになった。

「しばらくひき肉には困らないね、狐火ちゃん」

「……」

 さすがの私でもこれを受け入れるのには少々、脳内容量を消費する。最近、無駄に説明文ばかりで低速かかってるのに、さらに負荷をかけないでほしいものだよ。

「あ、そーだそーだ、狐火ちゃん。一体どーやってあの男を見つけたんだい?」

「ふっふっふっ……それはだねー、この人類の結晶『情報凝縮通信機器スマートフォン』の『映像記憶装置カメラ』を利用して映し出したのさ!」

 カメラ機能に任せて幽霊の姿を映し出した、 ただそれだけのことであった。

「へー、地球ではそんな機械があるんだねー」

 すんなりバラされる。

 結局、男は重症を負い、戦闘不能で逃げ帰ってしまったようだ。カメラで確認したが男が映ることはなく、その日、男が再び奇襲を仕掛けることはなかった。

 私とフィノちゃんは緊張感なしでぐっすりと眠る天使のような寝顔をしているルフのみぞおちに拳を叩き込み、むせ返ってパニック状態の彼を無理やり移送した。


 南第二第一地区から北上、ナチャーロ中央区へ。中央区は最も人口密度が高く、そして最も商業激戦区として大繁盛しているが、その一方で犯罪、騒乱など物騒な事件が多発する区域でもあった。初心ものがこの区域に足を踏み入れようものなら、その日の夜には貴重品が消え去ることとなる。ゆえに、この区域にいる人口の九割以上は熟練者で埋め尽くされている。

 早朝、変わらぬ喧騒の祭りが繰り広げられる中央区で三人は食事処を探して辺りをうろついていた。ルフだけはどうやら腹を下したようで、お腹を押さえている。変なキノコでも食べたのだろうか?

「お前、本当に分かってないなら相当な馬鹿だよな」

 ちなみに私たちが平然と中央区を歩けているのはフィノちゃんが引率係としてそばにいて、スリをしようものならステータスでその手を切断しにかかるからだ。今のところ腕を切り落とされた犠牲者はいないが。そしてやっぱり、いつまで経っても私は引率係にはなれないらしい。異世界に来て、まだ一度も子供たちの引率係になっていない。それどころか子供たちが引率係になっておる。確かに、あんな可愛い幼女たちに引率されるのは個人的にアリですよ? しかし、やっぱり幼女を犯してこその主人公じゃん? 引率してあげくに二人きりでねぇ、あんなことや、こんなことをぉおおデュフフフ……。

「スリの皆様方、今ならー、狐火ちゃん盗み放題ぃー、というか本体お持ち帰りオーケー」

「うわぁあああ、私だけハブらないでぇえええ!!!」

 ひとまずは誰もスられることはなく、無事に朝食を済ますことができた。ちなみにお金はフィノちゃん持ち。石ころでお支払いしておいたようで。まるで朝食をスってきた気分だった。

 犯罪者三人組はバレる前にさっさと退散することにし、席を立ったのだがある人物に声をかけられてしまう。ゆるふわな軽装をした、白髪の女性。この中央区に満ちている雑草たちとは違い、武器を所持せず手ぶらで、しかも厄介なことにこの女性、顔つきや雰囲気から警戒心が全くとして存在せず、まるで小動物でも見ているかのような錯覚すらしてしまう。でも、この私にはおみとうし! そもそも、こんな危険極まりない中央区にて、この女性がふらついている事がおかしいことで、彼女は相当な実力者。かなりの危険人物として脳内アラームが鳴り響いているよ。たとえ、ゆるふわ小動物系女の子だとしても、この女子キラー持ちの私がむやみやたらに関わるとでも?! そう、彼女は顔こそは可愛げあるが、絶対に関わりたくないランキングベスト10位に入賞しているはずであり、嫉妬というわけではないがただ単に嫌いであり、嫉妬ではないが大っ嫌いであり、嫉妬ではないが!! とにかくきら――

 ポスッ。

「へ? え? な、なに?!」

 脳内妄想で謎の嫉妬心を燃やす私の目の前に、その人物が突如現れ、無断で頭をポンと優しく叩いてきた。そしてニコリと笑って一言。

「美味しそうね、あなた」

「はい?」

 デジャブに陥った。なんか以前もこんな状況に出くわしたような気がする。禁断の箱のような何か手を出さない方が良い気がしてならない。

「た、食べ物でしたら、私以外にも美味しそうな者がありますよ?」

「おい、者って何だよ? 俺らに振ろうとすんな」

 いや、誰も可愛らしくて全身舐め回したいショタっ子と、全身愛撫して愛で倒したいロリっ子を食べ物として彼女に献上した? むしろ私の上級非常食であって、そんな高級品をいとも容易く今であったばかりの赤の他人に渡すほど私も馬鹿ではないのでね。

「私は二回目なんですけど……狐火木ノ葉」

「あ、あれ? どこかで会いました?」

 店内の机に座っている私の横の席に座ってきたゆるふわ系の女性は私へと距離を詰めてくる、自然と違和感なく。恐ろしい共有力!

「噂で聞いたよ、木ノ葉ちゃん。一緒にパーティーでも組んでクエストにでも出ない?」

 それは告白ですか?! 確かに可愛くて小動物感あってモフモフしたら気持ちの良さそうな柔い髪質をしているけれど、ここで気を許せば飲み込まれてしまう闇。それに気づいている私は丁重にお断り申し上げます。

「ぜひご一緒しましょう、お姉さん!」

「おい」

 つい口をついて出てしまった本音が! ルフにジト目で睨みつけられるが、それも悪くない。

「ま、いいんじゃない、あはは! 楽しそーだし、狐火ちゃんに引率しよーかな」

 やはりフィノちゃんが引率係なのですね!

「じゃあ決まり。少し遠いけど、ナチャーロ最北東端にある唯一の集会所、そこで待ってるね」

 なぜか本筋からズレて唐突にクエスト出撃が決まってしまったが、これはこれで良い機会かなとポジティブシンキングに行こうか。なんせ主人公はいつだってポジティブまっしぐらのバカなのだから!

「誰がバカだと許せん!」

「誰も言ってねぇーよ」


「……ふふ、美味しそうね……」

 彼女の怪しくギラつく眼光に気づくものはいなかった。

「……なーんてね、あはは」

 フィノの怪しくギラつく……ことはないが、卑しいジト目に気づくものはいなかった。

「……私以外は、ね」

 この主人公こと狐火木ノ葉のイヤらしい目線に気づくものはーー

「……いや、お前だけバレバレなんだよ」

 ルフだけ空気読めずに流れからハブられていることを気づくものはいなかった。

 実は主人公と同等にフィノちゃん大好き、星野夜!

 ひき肉業者には驚きました。いや、まさかあの小さな小さな幼女にあんな残酷な一面があるとは!

 人選びって大切ってことを気付かされることはないですが、やはり幼女は素晴らしいという事が分かりました(分かってない)。

 なんかチートキャラって自然と気に入ってしまうものなんですかね?


 実は私、星野夜は旅物系はかなり苦手と見ています。その場その場の情景を文章に載せるのも、妄想するのも苦手なのです!

 つまりなんか最近、たるい気がしてなりませぬぞぉおおおおお!

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