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第9話『女の子が夜襲されて、女の子が夜襲します』

 ナチャーロ南第二第一地区ホテル内、二階の一室に私、狐火木ノ葉は泊まっている。ベッドの上で布団を蹴飛ばし、大の字で豪快ないびきをかいていた。ウィンディーネを追って街を訪れ、山道を登り続けて心身共に疲労した身体を存分にフカフカなベッドに預け、夢の世界へと溶け込んでいる最中であった。

 時刻は日が昇る一時間前くらい。ぐっすりと眠りに就いている私は気づいていないが、室内に異様な気配が近づいていた。姿形なく気配のみが、眠る私の前に寄ってきて、なんと空中に右手が出現し、右拳が私に襲いかかろうとしていた。

 バシッ!

「んー? ふぁあああ……何事?」

 打撃音によって目を覚ました私はスイッチで部屋に明かりを灯し、眼前で繰り広げられている光景に思考が停止してしまった。二つの拳が宙に浮いている、全く理解できない状況。異世界だから何でもありとは心してたけど、拳の幽霊なんてどうリアクションすれば良いわけ? 二つの拳が打ち合いし始めたんですけど、なぜ敵対してるの、あれ? 何か? 拳で抵抗してるんですか、拳で?

 一方の拳はまるで私に襲いかかろうとしているように見えたが、もう一方の拳がそれを防いでいるように見える。とにかく思うことは緊急事態であって、今敵襲を受けているということ。久しぶりに通信魔法を使うか。

『あなたは私、狐火木ノ葉の従僕としてこれからも社畜として私につきなさーい』

『悪いけどー、寝てないから頭の中に問いかけても催眠術になんかかからないよー?』

『起きてたんだね、フィノちゃん』

『通信魔法でどうしたんだい?』

『なんかー、部屋の中に敵が』

 そもそも拳の幽霊だから敵ではないのでは? 幽霊が敵だったら私はどうすれば良いんですか? 塩振りまいた方が良いですか?

『狐火ちゃんが力士なら塩でもオーケーじゃなーい』

『力士じゃねぇーよ!』

『まあ、力士がちゃんこ鍋の具材にされる前に向かうから待っててー』

『つみれじゃねぇーよ!』

 物騒な言葉を投げかけて助けに来るつもりあるのだろうか、彼女は? こちらへ向かうまで敵と対立しろって言われたけどさーー

「幽霊にどう攻撃しろと?」

 とりあえずテキトーに魔法でも……あ。ベッドの横に置いてきたぁ! 無意識で扉前まで逃げてきたんだった。では、逃げるんだよぉおおおお!

 鍵回す、開かず。なんでぇええええええええ?! ま、まさか、これっていわゆる心霊現象?!

 発狂寸前の女はドアノブをガチャることをやめて、拳たちの対決を眺めようと背後を振り向き、そこで拳の他に口らしきものが登場したのを確認、口がポッカリと空いたとはこの事かと実感した瞬間だった、らしい。

「早く逃げなよ」

 幼女の声が私へと喋りかけた。

「しゃべったぁああああああああああ!」

 いつかのCMみたいな反応しておきつつ、口の言うことに従ってドアノブガチャガチャ、開くわけねぇえええだろぉっ!

「開かないんですけどぉおおお」

「少し待ってて、ぐっ……」

「ど、どどど、どっどぉおおおしたぁあブッ!!!」

 突然の衝撃、浮いていた片方の拳が私の頬にクリーンヒットして発狂を押し鎮めてくれたようだ。いいのか、主人公である私を押し鎮めるということはこの小説にてネタ発言がなくなり、暴走少女もなくなり、作者は闇堕ちすることになるんだぞ!

(作者:僕は既に闇堕ちさ)

 Shut up!! Get outta here!!! 無駄口吐いてる暇あるなら仕事しろ、仕事! こっちは小説が進まなくて困ってるんだよ! 暇人だったら今すぐ策を私に与えるがいい!

 こうして私と作者による討論が幕を開け、結果は見出された。ちなみにここまで一秒以下。

操作暴発コントロールアウト炎柱バーナー!」

 それはパッと思いついた、かっこ作者と共に膨大な時間を費やした結果の果てに、こうするしかないという諸刃の剣的なアイデアだった。まだ魔法を習得して最初の頃、長筆を操作しきれていない私がいつも通りに暴走した際に、触れずに長筆に炎を灯してしまったあの原理の利用。長筆は使用者の精神と連結されていて、気分の高まりによって異なった技が発動される。今回は『暴発』を利用して、敵を倒そうと考えたのだ。私の意思はベッド横に置かれた筆に伝わり、筆毛に火属性の魔力を点火させ、エネルギーを放出させた。普段は使用者自身の体を吹っ飛ばせるだけの威力を誇るバーナーは、使用者と言う枷がない今、この部屋の中で乱雑に乱れ舞い、乱方向に炎柱を撒き散らす。よく風呂場のシャワーの水圧が高くて手を離した時に暴れまくるアレとしていることは変わらない。反動に任せて大暴れする長筆から放たれた炎柱は浮いていた拳に火傷を負わすことに成功する。ちなみに私は玄関近くだったのですぐ横のトイレに閉じこもって落ち着くまで待っていた。

 このドタバタ騒ぎは当然ホテル内全域にすぐに伝わるかと思っていたが、どうやらこのホテル、魔法によって完全防音完全不燃無傷の加工が施されているようだ。おかげで敵襲のことは誰にも伝えれそうにない。あとはフィノちゃんが来るまで時間稼ぎかな。

「くそやろうがぁあああ! 殺してやるから待ってろ!」

 トイレの扉越しに聞こえたのは男の怒声だった。先程の攻撃が挑発になったらしい。そう言えば、幼女の声を発してた口の存在はどうなったのだろうか? そもそも、単体で考えているのがおかしいことだろうか? 例えば幽霊と考えて、口や拳だけを人間に見えるように映像化することは可能だろうか? もし可能だとしたら、この場にいるのは、私の味方らしき幼女と、私の敵らしき男性の二人。そして、多分二人とも巻き込んで、味方だけやっつけてしまったらしい。おい、何してんの、私?!

 思考を巡らせに巡らせていて、背後に現れた気配に気づかず、蹴りを背中に決められてドアを弾いて廊下に叩きつけられた。トイレの扉は開かれていないのに、なぜか男は背後から現れていた。私は痛みを堪えながら、燃焼を終えた長筆の転がる寝室へと駆け出す。しかし、間に合う訳もなく男に背中を踏みつけられて押さえられた。

「ぐふっ……女の子に手を出すなんてサイテーだよ!」

「ほざけ、クソガキが」

 目線を上へ、敵の正体を確認する。体も頭も無いのに、口と両拳、そして押さえつけている右足だけがそこにあった。しかし、なぜか火傷を負っているのは右拳だけ。部屋の壁や天井が変色しているのを見るに、炎柱は全域を燃やすほどの攻撃範囲で拳一つだけが火傷するなんて不自然だ。

「狐火ちゃーん、きたよー。敵だるま作ろー、ドアを開けてー」

 来るの遅い! シンプルに黒い発言してくるんじゃないよ! このままじゃ私が血だるまになるから早く助けてくれない?!

「無駄だ。ドアは霊力で封印している。一般人がこじ開けることなど無理に等しい」

「……霊力、つまり予想通り、あんたは悪霊ってわけ!」

「外にいるお仲間さんも時期に会えるだろうさ、幽霊となってだけどなぁ!」

 男のら左拳にナイフが現れ、そのまま私の首を掻き切ろうとギラついていた。させるものか! このまま死ぬくらいなら、一か八かでもう一度あの技を!

「お前の武器もさっき封印してやった、無駄だ」

「ジーザス!」


「……狐火ちゃーん? ……はぁ、仕方ないなー、まったくー」

 私が襲われそうになっているその最中、部屋の前にフィノちゃんは立っていた。鍵が開かずに困っている、あくまで困っている設定で、強行突破でドアを突き破ろうかと考えている。フィノちゃんにかかれば、こんな扉は一撃で粉微塵にされるだろう、そうフラグを立てておき、彼女は扉破壊に尽力する、あくまで尽力しているという形で。

 右手で扉に触れるフィノちゃん。一人ニコリと笑みを浮かべつつ、ステータスを起動させる。

「まったくー、今日はたくさん攻撃魔法を使う日だねー。今宵も楽しませてくれるのかなー、あっはは! テレスト……インパクト」

 狂喜を浮かべるフィノ。手のひらからステータスを展開し、短間隔で同じようにステータスを配置、重複させて一点に高圧エネルギーを出そうとしている。手と扉の隙間に何重にも重なり合うステータス。普段からフィノが絶対防御で展開させているステータスは、反動や威力を全て防ぐ不動の防御壁。それらが反発し合い、その場に留まる性質を持続させようとする抵抗力を利用し、直線に強烈な一撃をお見舞いする、フィノちゃんにとっての禁止技の一つ。なぜそこまでして扉を破壊しようとしているかは謎だけど、この幼女は何かを悟っているのだろう。

 私、狐火木ノ葉に魔の手が(?)触れようとしたその時、耳をつんざく破砕音と共に扉が吹き飛び、敵ごと窓から外の世界へフライアウェイしていった。幸い、敵の土台にされていた私は吹っ飛んだ扉に巻き込まれずに済んだが、破砕の仕方によっては私ごと道ずれにする気だったね、あの幼女め。部屋を一直線に大穴が開通していた。賠償金とか一切考えずに容赦のない器物損壊であったが、まあ異世界ならこれぐらい日常茶飯事なのだろう。ホテルの廊下が人の声で騒がしくなっているが、これぐらい日常茶飯事なのだろう。

「あっはは! 楽しいねー!」

「あははは……そ、そだねー」

「さ、狐火ちゃん、逃げるよ」

 当たり前のように逃げる手段に出るフィノちゃん。ステータスで私と武器の長筆を無理やり持ち上げてその場から逃走を図った。ちなみにぐっすりと眠るルフだけ置いてきぼりにしておいた。いわゆる放置プレイと言うものさ。それに無理に起こすのは可哀想だもんね。


 私とフィノちゃんが逃走を図っている頃、ホテル裏、暗い路地のゴミ集積所の上に一人の男の姿があった。フィノのステータスによって破壊されたドアにぶつかり窓の外へと放り出された敵である。その姿は部分的に欠損してるわけでもなく、五体満足の姿をしているが、なぜか部分的にだけ怪我を負っていた。かなりの重症らしく、しばらく動けそうにないが、死には至らないだろう。ゴミ集積所に落下したおかげで、ゴミのクッションにより一命を取り留めていた。

「……ぁああ゛あ? 霊力、封印したはずだ……。なぜ、壊された……?」

 意識が朦朧としている中、彼はフィノちゃんが扉を破壊したことに疑問を持っていた。本来壊れるはずのない扉を壊されて困惑状態になっているようだ。

 口から血を吐き出して男はふらつきながら立ち上がり、壁にもたれかかりながら私たちの追跡を始めようとして、その動きを止めた。私たちが目の前に現れてしまったからだろう。

「敵発見! あとは頼んだよ、フィノ隊員!」

「あっはは! 狐火補欠はそこで見ててねー」

「シンプルに酷いっ!」

 男に悠々と近づいていくフィノちゃん。夜間と言うこともあって男の顔までは確認できない。彼は小さくため息を吐くと、目の前から突然姿を消した。まるで透明化したように消えていった。しかし気配だけは残っている。この街に来る前に出会った女の子と同様に。

「……幽霊の街、ね」

 笑顔で呟いたフィノの顔に敵の拳が決まった。

 投稿頻度は不確定、執筆速度は晩成系! ゴミ小説作家、星野夜きたぁー!


 ……はい、今回は第9話、幽霊の街にて敵襲に遭う主人公たちの話でした。説明不足によって状況判断ができない頃合だと思いますが、恐らく伏線回収するとネタバレ発言して、この先も読み続けてもらえると僕としては嬉しいです。


 なんか、厨二臭くて初々しいけれど、それでも映像化した際にカッコよく感じる、そんな戦闘を繰り広げていく心構えで執筆させてもらってます、当小説。語彙力なしの、読者の想像力任せ。それでも、バカやっている彼らを楽しんでくれれば、もう僕としては感謝感激です。


 さぁ、次話は敵襲の後半戦! まだ結果は未定ですが、お楽しみに!

 投稿日は不定!

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