第3話『筆を求めて』
手違いで筆使いになってしまった私。一度決めてしまった職は変更できないということで、夕闇のように落胆していた。でもすぐに立ち直るスタイルだ。こうしていても何も始まらない。
ウィンディーネに案内されながら街中を行く。この街はかなり大規模に広がっていて、ほぼ全職業に対応した道具類が集積する。そのためか、街中のほとんどの店舗は道具屋が占めていた。人ごみをかき分けて、とにかく物色タイム。
「筆っていっても、具体的にどんなの? そんなマニアックなジャンルの知識なんて持ち合わせてないんですけど」
「う~ん……私も筆はあまりって感じなんです……。でもあの店に行けば何とかなるよ」
そして案内されたのはオンボロな館だった。都会な街中には不似合いで浮いてしまっている木造建築物。ホラー映画とかで良く見るタイプのやつだ。西洋風のお高い絢爛たる館だ。
「すいません、ちょっと探してるものが――」
ウィンディーネが中へと押しかけ、後に続いて足を踏み入れた私に突如、無慈悲な攻撃が飛んできて潰された。腹部に多大なダメージを受けた――かと思ったら、良く見ると誰かも分からない一人の少女が私の上に乗っかっていて、一瞬にしてダメージが吹き飛び、脳世界ビックバンが発生してしまった。プシューっと頭部から湯煙が昇る。
「あっはは! ランク5筆使いですって?! ついに刻が来たんだ! ずぅ~っと待ってたんだよ! 久々に忙しくなりそうで、腕振るっちゃうよ~! もぅ竜巻き起こすぐらいに振り回しちゃうぞぉ~!」
「ちょっと落ち着いて、フィノちゃん!」
私と同格かそれ以上にハイテンションな少女は爆発レベルに興奮状態で腕を振り回しまくっていた。ウィンディーネがフィノと呼ぶ少女を私の上から引き剥がし、完全に逝ってしまっているだろう私を引き起こした。安否確認をされてようやく我に返る。
「フィノって……ウィンディーネの友達?」
「うん、私の幼なじみ」
「どーも、フィノでーす。よろしくね、狐火君」
フィノは真紅色の長髪に蒼い瞳をしていて、ウィンディーネとは全くの正反対、逆色だった。身長はウィンディーネと変わらず。
「私も自己紹介をっと。私は狐火木ノ葉……ってあれ? 何で私の名前を知ってるの、フィノちゃん?!」
「フィノはステータスを覗き見ることができちゃう、すごい力の持ち主なのです!」
ウィンディーネが自信満々の笑みで紹介をした。何しても憎めないね、この子ったら。もう、うちに来なさい、可愛がってあげるわ、うふふ。
なぜかオネェ化しておく私。
「そういうこと。波動『ステートブレイク』といってね、対象者の個人情報から過去の記憶まで、幅広く見取ることができるんだよ。それにしても、君って随分とおもしろい境遇をたどっているね。出身地は『地球』という惑星なんだ、ふ~ん♪ 何よりおもしろいのは波動が『(封印)』だってところだよ。これって――もごがっ!」
波動が何やらと説明をしようとしたところで、ウィンディーネが焦った様子で口を閉じさせた。
「そうなんだーっ! 確かに狐火さんの波動はまだ封印中で現れてないんだねーっ!」
「はぁ~……そう考えると落ち込むよねー。私も早く波動とかいう必殺技? を覚醒させたいなー」
「で、ですよね! がんばっていきましょーっ! おー!」
何か変なウィンディーネではあるけど、こんな姿も可愛いと思ってしまうほどに中毒化しちゃったね、私って……。うん、ヤバイ人だ。
「そ、それで筆選びに来たわけでしょ? うちは自分で言うのもおこがましいけど、質は上等だからね。君に合うものをチョイスしてあげるよ」
押さえられた口が開放されて、フィノは話題をリセットさせる。職業熱がくすぐられたのか、フィノは熱々長々と筆についての説明をしてくれた。
前回の答え発表!
ゴーレムは『ジャイアントキング』でした!
……すいません、そんなわけはありません。本当はあまり考えてなかったのでして……『ゴレーム』とかで良いんじゃないんですか?
(何でお前が読者に聞くんだ?)
今回は第3話、この後にフィノちゃんの熱弁があるんだけど、見たい方はどうぞ。ただ長くて説明嫌いな方は飛ばしてくれてどうぞ!
フィノは私的に良いキャラだと思ってるんですよね。かなり好きなキャラ設定なんです。このハチャメチャな感じ、純粋にハイテンションでかわいいキャラって……良いですよね? 別にロリコンじゃありませんよ、フェミニストです。いや違うけど!