第6話『チシナーの狙撃手』
「っああぁ?! 壊れてんじゃねぇえええかぁあああっ!!!!!」
フィノのステータスに乗っていた狐火とルフ。上空を浮遊してるところをチシナーの狙撃手による攻撃によってステータスから振り落とされた。ルフは空中で反転し、民家の屋根に着地した。屋根が少し壊れて瓦礫が大路地に満たされた水の上に落ちて水しぶきを上げる。
目前の大路地に立つ狙撃手の女はステータスを破壊した無反動砲を投げ捨て、瞬時に別の銃器を出した。出したと言うより突如出現したように見えた。それは恐らく、女の職業が『魔銃士』ゆえの生成能力。彼女の持つ武器は連射性能重視の小銃。装填数は不明だが、魔銃士だとした場合、装填数は魔力に依存する。よって射程距離も不明。
ルフも太ももに付けていたホルスターから拳銃を引き抜いた。ルフの職種は『銃士』であり、『魔銃士』とは同系職である。つまり、今から始まるのは弾きVS弾きのドンパチ。この状況下、確実にルフの方が不利であった。魔銃士は魔力で使用武器の幅が広がる一方、銃士は実物を使用するため手持ちに収まる量でしか使用できない。
「侵入者を排除します」
小銃をルフに向ける女。
「死んであの世で悔いて死ね」
「そのままお返しすんぜ! ルベライト・フォーカス!」
ルフの構えた拳銃から、女へと巨大な炎の渦が真っ直ぐ放たれた。女は体勢を崩して水に沈み、水中からルフに狙いを定めてトリガーを引いた。ルフの放った魔弾は火属性なので水中には影響なく、小銃から放たれた弾丸はルフの身体に突き刺さった! 左肩と右腹に一発ずつ受けて、痛みに呻きつつ、屋根に倒れることで後の弾丸を避け切った。だが、ダメージは深刻でだいぶ体力を持ってかれている。
普段なら簡単に回避できるはずの弾丸。そもそも本来は避ける必要のなかった攻撃だった。ルベライト・フォーカスを貫く前に弾丸は焼け落ちるはずだったのだ。それゆえ、完全に油断してしまったルフ。
「っくそ……ぃてーなー……あの女、何か隠してるな」
倒れたまま、次の攻撃に備えて魔弾を装填しようとポーチを確認する。その時、ルフは日が陰ったことに気づいて上を見上げた。その目線の先に、小銃を真下へ構える女の姿があった! しかし、落下してくる様子はなく、浮遊してるらしい。上空100メートルからの狙撃がルフへと襲いかかる。
「ぅおわぁっ?! っぶねぇ!」
痛む体に鞭を打ち、横に転がって回避。そのまま民家の路地に着水して背中を強打した。あくまで緊急回避に過ぎず、傷口をさらに開いてしまった。血液が滲んで水を赤く染める。
ルフは動けない身体を無理やり動かすべく魔弾を装填し、大路地側へと銃を向けた。装填した魔弾の反動を利用して路地の奥へと逃げることを考えたらしい。もちろん、緊急回避と同様にダメージは大きいが死ぬよりはマシだろう。ルフは女の次弾が来るよりも前に行動に出た。引き金を引き、魔弾は雷管により発火、銃筒から魔弾は放たれる、ことはなかった。
「……ま、まさか……」
それは路地に落下した際、水に浸かってしまったことによって、弾丸内の火薬が湿気ったのだろう。魔弾は着火することなく装填されたままになっていた。
その隙を狙い、宙に浮いている女は再びトリガーを引いた。距離にしておよそ200メートル。なぜか距離が開いていたが、女の弾丸は一発残さず綺麗にターゲットであるルフの元へ落ちていく。腰ほどの高さまで水中に浸かっているルフには、先程のように転がって回避するのは不可能。この攻撃を避ける手段はなかった。
「避けれないならーー」
キィィィンーーーーー。
その音は、金属の響音。鉄の打撃音が辺りに響いて、女の頬に一筋の切り傷ができた。女の真下、200メートル下のルフの持つ拳銃が壊れて散っていた。ルフは直撃寸前に銃弾起動上へと自分の拳銃を合わせ、銃弾を弾き返したのだった。その跳弾が偶然、女の頬を抉ったが、弾けたのは一部だけで、ルフにも右足に一発被弾していた。
「ーーってぇえええっ! 被弾したか、クソっ!」
「……へぇ、なかなか……」
女はルフに関心の意を示し、少しだけ微笑した。その顔はすぐに無表情に戻り、地上へと落下して屋根上に着地する。屋根の破片がルフに降り注いで、女が屋根上に乗ったのを察知し、銃器を構えた。
「あっ?!」
癖で完全に無意識で構えていた銃だが、それは無理やりガードに使って壊れてしまっていた。仕方なく、出血量が増えるのを覚悟で動くことを決める。しかし、左肩と右腹部、右足に銃撃を決められた今の身体では、這うことが限界で逃げるには速度足らず。そんなルフは少しずつ意識が薄れていた。水中にしばらく浸かっていたせいで出血多量、血圧低下状態になっていた。早く止血しなければ失血死で結局死んでしまう。
「今日は侵入者が多い。君たちはあの水の悪魔の仲間か?」
屋根から飛び下り、路地に着地した女は小銃で狙いを固定しつつ、ルフへと問いかけた。尋問、というものだろう。
「……さぁな、その水女とやらは知らねーよ」
「……詮索は無駄ですか……ならば死んであの世で悔いて死ね」
銃声が一発、静寂の街に響き渡って静まり返る。小銃から放たれた弾丸は今度こそルフの命を奪い去る……ことはなく、またしてもルフによって弾丸は弾かれた。軽く舌打ちをする女の前には、手にガラス片のようなものを持ち構えているルフの姿。その破片はフィノの落し物、ステータスの破片。
「へへ……今回、は……壊れなかったな、ステータ、ス……」
「悪あがきも程々にしてください」
呆れ果て、ため息を吐く女。ルフは衰弱状態だと言うのに引き攣り気味の笑顔を見せていた。女はルフがどうしても気に食わないらしく、無表情だが不機嫌そうにしている。
「……悪あがき? 勝てば、それって……悪あがき、じゃあ、ねぇだろ?!」
ルフはポーチから湿気てしまった魔弾を取り出し、女へと構えた。
「湿気た弾丸なんて、拳銃がない上で使えるわけもなーー」
「えい」
バンッ!
発砲音ーーーーー。
「……かはっ……?!」
吐血、水に物体の落ちる音、呻き声。それは女から発せられた音たち。ルフの構えた湿気た弾丸が火を噴いた、ということだろう。むしろーー
「俺が、火を噴いたっつー……わけだ」
「ぐっ……自身の手から、火を放つとは……銃士、じゃなく、魔銃士……同じ職業」
弾丸は胸部を的確に貫いた。女の持っていた小銃は水に浸かって使用できなくなっている。魔銃士は銃を生成する力があるが、瀕死状態ではもう一丁も生成することはできないだろう。時期にその命の炎は途絶える。
「……俺は、ただの銃士、だ」
「ふっ……そうか。隠し玉、と言うわ……け……」
微笑した女はふらつき、体勢を崩して背中から倒れかけていた。ルフは何を思ったか、動かないはずの身体を動かし、倒れる前に女の身体を抱えて救い出した。たった3メートルの距離であったが、重症の身体を無理して動かしたために出血量が増してしまった。
「……っつぅー、無理させんなよなー……」
もうすぐ尽きる命、溺死でも衰弱死でも変わらないと言うのに、なぜルフは彼女のことを助けたのか。無駄な労力とダメージを彼女と共に抱え込んだルフは震える足で立ち上がり、路地裏へと回って家の裏側に置かれた機器の上に彼女を横たわらせた。この機器の上なら水に浸かることはない。
「……どうせ、死ぬけど、な……。ここで、ゆっくり……死んでいけ。ごめんな……悪いのは、俺の方なのにな……ごめんな……」
謝りつつ、眠くなり始めたルフはそのまま機器の上、女の横に座り込んで死ぬように眠りに就いてしまった。先程までの戦闘が一転し、静寂が再び辺りを包み始めていた。
どうも、こんにちわ。k本的にコミュ症ボッチな小説作家こと、星野夜ですぅううううう!
ルフとチシナーの狙撃手との戦闘シーンだったんですが、僕としては戦闘シーンを執筆することはかなりの苦手分野で、気づくと段落が一つまとめになってしまっていることに後々気づきました。戦闘シーンで一話完結になっているから良しとするけど、一息で読むにはちょいと長めになったかな、と思いました。
今回は活躍無しのルフちゃんに活躍の場を上げるべく執筆しました、ということにしておきます! ルフに関してはまだ謎がかなり残ってて、僕自身でも伏線回収が追いつく前に忘れそうで心配なとこですよ。
ちなみに、最も伏線回収が大変なキャラは僕の推しでもあるウィンディーネちゃんですね。第2章早々、謎を置いていきましたよ、あの子は本当にもぉー。世話のかかる子だこと。
次回! またしても僕の苦手な戦闘シーンです。狐火VSウィンディーネ!
日に日に語彙力低下に恐れを覚える星野夜でした……。




