第4話『静寂の街、チシナー』
ガルモーニャの街中は年中雑踏で煩わしい。人々のうねりの中、フィノとルフの二人は一人の少女を引き連れてギルドへと向かっていた。その少女はひねくれた茶髪のロングヘアーをした、赤い瞳をしている。身長が120センチ代でフィノと同じくらいの少女だ。三人はこれからギルドに申請して隣町へと旅に出る予定。
雑踏の中を歩いていると、彼らは狐火木ノ葉の師匠アリアに出会った。
「お前ら、久しぶりだな」
「やぁー、お師匠さーん」
「フィノ、そいつは誰だ?」
師匠の質問に、茶髪の少女は答える。
「私はき……じゃなくて、えーっと、あー、そうだった! 私はメリッサ?」
少女は戸惑いつつも自己紹介をした。
「しばらく、ルフとメリッサちゃんで隣街へと行ってくるよー」
「引率は頼んだ、フィノ」
「やっぱりフィノちゃん引率係?! あ……」
メリッサの唐突なツッコミで変な空気になってしまったが、師匠はガン無視でそのまま去っていった。師匠は師匠で別の仕事があるらしい。はたまた、指名手配の狐火木ノ葉でも探しているのだろうか。
「私はそう考えてるよ、フィノちゃん」
「じゃあ、旅が終わったらメリッサちゃんには死んでもらわないと、ね」
え?
ギルドで三人は申請を提出、許可を得て隣街『チシナー』へと向かう。フィノは既にチシナーへ何度か足を踏み入れた事があるが、チシナーは何度踏み入れても荒廃した街並みしか目に入らない。人は暮らしいているようだが、その姿を見たものは誰もいないらしく、ガルモーニャの街ではチシナーの住民を見てしまうと存在自体を消されてしまう、という都市伝説までできている。世界地図にはいつまで経ってもチシナーの街は消えることがなく、やはり住民がいるらしいが、それを知るものは世界地図を発行している者のみだろう。
「で? そこにあの水女がいるっつーわけか?」
「ワールドステートによれば、ね。目的は分からないけど」
「フィノちゃあーん、そろそろ戻してよぉー」
メリッサは気だるそうに言った。
「だーめ。ウィンディーネを引き連れて戻らない限りは、その姿で一生を過ごしてもらうよー」
くっ、この赤髪の悪魔め。不意打ちペイント、これでも喰らえ!
こっそりフィノちゃんの背中に赤い絵の具を塗りつけたメリッサ。
「その技は効かないよー? メリッサ、ちゃん」
な、なぜバレごふっ!
突然、メリッサが吹き飛ばされて地面に転がり落ちた! ルフもフィノも何も手は出していなかった。
「敵襲?! いてててて、背中ぁー……」
「落ち着きなよー、メリッサちゃん。自分の技を自分で受けた気分はどうかな? カウンターステート、技をそのままそっくりお返し♪」
メリッサは砂埃を払って立ち上がり、フィノちゃんへと長筆を構える。その顔は狂喜に歪んでいた。確実に楽しんでいるように見える。
「お前らー、旅の最中だぜ? 仲間割れしてんなよ。特に引率係、お前もやる気になってステータス構えようとしてんなよ!」
最終的に引率係は一番真面目なルフの役目となった。ちなみに、メリッサはフィノちゃんによって数秒で押し鎮められた。
「……対象を確認。そちらへと向かってます」
『りょーかい、今日も綺麗な声だねー。僕と一緒に今夜をーー』
「死ね。ひとまず大空に舞ってから転落死しろ」
『きっついねー、あはは』
ガルモーニャの北側に位置する街『チシナー』は、住民が誰一人見当たらないにも関わらず、人のいる痕跡が残っている不気味な街。森を抜けると突如出現する荒廃したような街並み、真っ直ぐと続いていく大路地。家々の壁は風化してボロついている。商店はあるようだが昼になっても開店する気配なし。クルィーロ国内ではチシナーのことを『静寂の街』と呼んでいる者も。
フィノちゃん率いる三人組は静寂の街チシナーに到着していた。当然、誰もいないので許可なしでの入街となってしまった。
フィノが再びワールドステートを展開し、ウィンディーネの位置情報を確認する。やはり、この街のどこかにいるらしい。
「つーか、誰一人いないってどうよ?」
適当に街を徘徊してみるも、人けすらなし。
「チシナーが静寂の街と呼ばれる由縁はこれ。ウィンちゃんは街の北側にいるみたいだよー。大路地を突っ切ってこー♪」
三人はフィノの展開したステータスに乗り、街を縦断することにした。
「毎回思うけど、ステータス薄すぎて折れそうだよね」
「メリッサちゃんは体重が重いからねー」
「シンプルな侮辱?! こう見えても痩せ型体型と自負してるよ?! 一日五食は欠かせないよ?!」
「それ普通にデブぐふぅ?!」
ルフの腹に衝撃走る。メリッサの火属性攻撃がクリティカルヒットしてルフに大ダメージ。
「何か言いましたか、ルフくぅん?」
「何でもございません、メリッサ殿!」
「標的確認、排除します」
一人の女性がそう呟き、寝室の窓を開いた。壁に立て掛けていた一丁のスナイパーライフルを取り、窓枠に銃身を乗せた。スコープごしに見る一人の人間に照準を合わせていく。その人は大路地を一人、悠々と歩いていた。
「死んであの世で悔いて死ね」
女性はライフルの引き金をゆっくりと押した。装填されていた20ミリ口径弾の雷管が装薬に火をつけ、瞬間的に銃口から吐き出される。しかし、なぜか発射音は一切無く、弾丸は標的の頭部にヒットして頭に大穴を空け、貫いて地面に突き刺さった。
しかし、標的の人間は死なずに立ち止まっていた! 頭に空いた大穴は液状化してすぐに修復された。狙撃手の女は絶句する。
「……んー、あはっ、あっははは……あぁそぉぼっ」
標的の首がネジ曲がり、屋内二階で唖然とする女を見つめた。紫色の眼光が怪しく光る。
「ターゲット殺害失敗、撤退します」
「待てよ、女」
スナイパーライフルを手に背を向けた女の真後ろで、標的の声がした。
「遊ぼうよ、暇だし、ね?」
「……っ?!」
液状化した標的の腕が彼女の逃げる足を掴み、そのまま引っ張って勢い任せに地面へと叩きつけた。
「っつー……」
「あっははは! 楽しませてくれるのかなぁ?」
標的は不気味な笑顔で狂喜する。彼女は砂埃を払い、ふらつきながら立ち上がった。
「波動『無反動の風』」
彼女の波動の力。標的の目の前から彼女の姿が跡形もなく消えてなくなった。
「へぇー、おもしろーい」
「死ね」
標的の顔が弾け飛んだ! 彼女の拳が吹き飛ばしたのだが、その姿を確認することは出来ない。しかし、標的の吹き飛んだ顔は瞬間的に修復した。まるで全身が液体で出来ているような感覚を味わった彼女。
「見えなくてもよ、そこにいるならぁ!」
標的は右手から膨大な量の水を生成して、空中に巨大は水の塊を作り上げた。直径にしておよそ50メートル。大路地を一瞬で飲み込むことのできる水の塊。
「……笑えない、な」
「まとめて潰せば良いじゃーん! インベル・アドウェルサ」
標的は腕を振り下ろし、水の塊を自分ごと巻き込んで大路地に叩きつけた! 水の塊は落下と同時に爆砕して大洪水を引き起こし、周囲の民家を削り取っていく。それはまさしく津波のような破壊力、それ以上。真下にいた彼女は水の塊に巻き込まれてどこかへと流されて行った。
「じゃあねー、楽しかったよー」
その水の流れは街の大路地を覆い尽くして用水路のようになっていた。
「うわっ?! 危なーい!」
街の大路地を三人はフィノのステータスに乗って移動していた。その最中、前方から突如津波が迫ってきた! ありえない出来事に予測してなかったフィノは慌ててステータスを急上昇させて避けた。
「何これ何これぇ?! フィノちゃん?!」
「分からない、けど、この洪水はひょっとして……」
新年明けましておめでとうございます!
どうも、新年明けても明けないコミュ症、僕の名前は星野夜!
隣街チシナーへの到達、ウィンディーネの捜索の回でした。
侵入者VS暗殺人の戦闘が繰り広げられ、チシナーが水に覆われて終わりました。
新年明けて初っ端物騒なスタートとなってしまいました。
ところで、今年の抱負の方なんですが、第二章完結にしようと思います! 今年も頑張って執筆してくので、この小説を見てくれているごく一部の人達へ、この小説をこれからもよろしくなのです!
さぁ、次回! ネタバレするので次回予告無し!




