第2話『第23話『メテオ討伐戦決着』』
私が現在異世界にて暮らしている街『ガルモーニャ』その頭上、雲が広がる限界高度を突き抜け、虚空を浮遊する魔昇船が一隻。その船は見るからに、とてもじゃないけど再起不能なほどに大破してしまっていたが、墜落することなく浮上していた。
その船首に一羽の鳥が留まっていた。それが普通の小鳥であれば『かわいい』の一言で終わるのだが、その鳥は皆から恐れられて、その外見から『メテオ』と呼ばれていた。
ある日ある時、初心者で何もできない役立たずな主人公、狐火木ノ葉はその不死鳥『メテオ』と対峙することとなった。メンバーは私含めの総勢六名。私のお友達であり、私の道具である火属性のショタっ子、ルフちゃんもそのメンバーに含まれていた。
「何か背筋が凍りそうだぜ」
「ほほぉ、ルフが凍るレベルの冷たいオーラがあるならメテオにぶつけたいくらいだよね」
恐らくその冷気は私の生温い目である。
ルフは異世界初心者の妄想女子とは違い、そこそこ経験のある……子供ではあった。ダンジョンだって地下四階層に通じるレベルの実力を持ってはいた。
しかし、今回の高難易度クエストであるメテオ討伐で、ルフは瀕死まで追いやられてしまう。私の『幻想壁』はいともたやすくメテオの火属性ブレスに破られてしまい、どうにもならずクエスト失敗パーティー全滅――になるところだった。
メテオの、一撃で街を壊滅できる破壊力を持つ脅威のブレス(火属性)が私の頭部を貫き死に至らしめるその瞬間に、ルフの特殊能力が開花した。
それは『吸収』である。メテオのブレスが私を襲うその瞬間、倒れていたルフが立ち上がり、メテオのブレスに食らいついたのだった!
「ルフっ?!」
吸収、すなわち自分のエネルギーへの変換。瀕死状態であるルフはメテオのブレスによって大回復。
それに伴い、茶髪だったはずの髪や緑色の瞳が、燃え盛る業火のように真紅に染まっていた。回復というよりは暴走にしか見えなかった。なぜかって? その後のルフの行動が人外であったからだ。
人の言語とは遠い、猛獣の猛りのような叫び声を上げながら、四足歩行で駆け出すルフ。というか、四足歩行だったことに気付いた時には、船首にいたメテオはルフの口の中でスクラップされていた。時間差で猛烈な突風により、私は甲板から船内へと吹き飛ばされ、そのまま船内へ。転がり転がって、そのまま船底に大きく空いた穴からフライアウェイ。
「ぎゃあああああああああああああああああああ――」
背中を強打してなぜか不時着する私の身体。着地点になぜかルフ。そしてルフの真下に【もう一体】のメテオの姿。私が落下していくその軌道上にたまたまいたメテオ。そして私がメテオにぶつかる瞬間に、暴走状態のルフがそのメテオに飛びかかったのだった。結果、私の下にルフ、の下にメテオ、という形になった訳である。【もう一体】のメテオは最初のメテオと違い、インコサイズではなく、巨大化していたため落下せずに済んだのは不幸中の幸いというものだろうか。
「そこで何やってるんだ、お前?!」
「あ、師匠発見」
船底に呆然と立ち尽くす師匠の姿を発見。なるほど、てっきり逃げてたかと。あの無責任クソ人間、末代まで呪い祟ってやろうかと思ってたよ。まさかここで一人孤独に戦っていたとは……見直したよ、師匠。
「狐火、後で説教だな。とりあえず、狐火! 絶対にルフから手を離すなよ!」
「そりゃあもう――っわ?!」
メテオ、暴走開始。猛スピードで上昇を始める。全身に強烈な重力がかかる中、命綱と言えるルフの衣服に必死でしがみつく私。藁にもすがる思いとはまさにこれのことだろうと思った。異世界転移で常人より順応性が高い私。異世界に来て、それはもう数え切れるほどの死にそうな思いをしたよ……数え切れました。今のこの状況、手動シートベルトメテオコースターが恐らく、人生最大の恐怖を覚えた瞬間だね。死んでもおかしくは――
伏線回収終了です。あっははは、もうおしまいだ。いやー、良い眺めだな、あっははははははっ! 人生で一回はやりたかったことがまさか最期に叶うとはねー、スカイダイビング。
読者と会話しながらだったので、つい手を離してしまったんだよ。普通なら――
「ぎゃああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
となるのが普通だけどさ。実際、地面に叩きつけられて圧死するまでは数分の猶予があるわけですよー。その間ずっと――
「ぎゃああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
なんて発狂続けれるわけないんですよー。だからこの時間帯、私は今までの妄想人生を振り返っているんですよー。
「なーんてね。秘技、幻想……えっとー……」
こんな時に限って技名を忘れる主人公失格者。なんて呑気に脳をフルスピードで回転させ、名前なんかを思い出す。とっくに魔昇船からはかなり離れてしまっていた。
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「どーせ死ぬなら、一花咲いて死にやがれぇっ!!! 炎柱長筆、極大解放!!!」
長筆を下へと振り下ろす。全身全霊の灼熱の炎をイメージ。筆先を名の通り炎の柱へと変化させる。以前、フィノとの模擬戦で見せた技であり、あまりの火力に使用者本人が吹き飛ばされた技、その勢いを利用して急上昇! 上空に浮く火の鳥メテオへとめがけて反動で吹っ飛び、勢い任せに一撃叩き込む。
「幻想色彩・深海!!!」
バーナー状態を解除、水属性に変化した青い筆先をメテオへ。メテオも抗うためのブレスを口から吐き出そうと身構えた。その時、背中にしがみ付いていたルフがメテオの首筋に食らいつき、ブレスを中断させた!
「ナイス、ルフ! 美味しい人工水でも喰らえぇぇぇぇぇっ!!!!!」
メテオの首をへし折る覚悟で長筆を叩きつけ、メテオの巨体をルフごと吹っ飛ばした。ごめん、ルフ!
マイナスイオンの水飛沫を感じながら、役目を終えた私はそのまま逆さまに落下していく。これで良い、どうせ船までは届かなかったのは分かってたし。メテオを魔昇船まで吹っ飛ばせたから、しがみついてたルフは助かったかな……。とても清々しい空だね。落下の風と水属性の飛沫が疲れた身体には心地良いや。異世界、なかなか楽しかったよ? それにしても異世界なめてましたわー。
メテオのブレスにより、魔昇船船底に空いてしまった大穴のから真下の状況を確認していた師匠。狐火木ノ葉がメテオの首に強烈な一撃を決め、グッドポーズを自然にしてしまい、手を引っ込める。
「や、やったな……お、おい、ちょっ――」
次の瞬間、吹っ飛ばされたメテオが魔昇船の大穴から師匠へと衝突した。木材を木っ端微塵にして煙を巻き上げながら乗船。咄嗟に階段側へと回避していた師匠は巻き込まれずには済んだが、背中にしがみついてたルフはメテオの下敷きに。メテオが起き上がる前に身構えておく師匠。メテオが首を上げ、師匠を睨む。メテオ相手に半分以上の魔力を消費しており、体力もだいぶ磨り減っている師匠。この近距離でブレスなんてされたらひとたまりもない。緊張の汗が滲む。師匠はメテオの動きを一瞬一秒見逃さずに意識を統一させる。メテオが嘴を開け、ブレスを放つモーションに入る、かと思っていた師匠だったが、メテオはそのまま硬直。そんなメテオの腹部を突き破って、ルフが飛び出してきた! あまりの衝撃にポカンとなる。絶叫を響かせながら暴走するルフ。メテオの身体にのしかかり、炎である身体に食らいついた。ルフと同様絶叫をあげるメテオ。師匠はそんな状況で唖然とするしかなかった。不死鳥のメテオを『喰らう』という形で殺した。……殺せてしまった。暴走してたルフは殺したことにも何とも思わず、何もなかったように眠りに就く。
「ぎゃぁああああああああああだああああああああああああああああああああああああああずぅううううううううううううげぇええええええええええええええええっでぇえええええええええええええごほごほごほごほっ、うわぁあああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
上空からの高高度降下地表落下する十秒前の私。感情崩壊。いや、当然のリアクションであった。十秒後に死ぬのであるから。街中に血肉脳漿贓物五臓六腑をぶちまけ、運悪ければ誰かにぶつかって死者を増やしてしまう。でもごめんなさい、どうしようもないんです。
目をつぶろうとした時、私の目に映ったのは煌びやかで艶かしい……水色の髪。
「スプラトラ」
激流。水飛沫とは程遠い膨大な量の水が着地間近の私へと襲いかかり、その落下の勢いを……止めた。噴水のように街へと水飛沫の霧を巻き上げて、私は地面に軽く強打した。弱めに強打した。大事なので二回言った。
「お帰りなさい、狐火さん」
「……ははっ……た、ただいま」
パソコンの充電切れにより、あとがき中止(誰も望んじゃいないよ、あとがきなど)。




