第20話『第一部完っ! とか言っておいて終わってないってどういうことさぁああああああああっ!!! あぁ……ご注文はメテオですか?』
「…………」
「まぁ、座りたまえ。別に毒など仕込んではないぞ?」
王座に座す悪魔のような外見をした人間と、無駄に長くて広い机を挟んで反対側に一人の少女。無言で座る男を睨みつけていた。机の上には豪華絢爛な、一般人ではとてもじゃないけど食べることのできないような高級料理がズラリと並ぶ。しかし、この空間は食欲を減滅させるような紫の内装であり、なぜか灯りが薄暗い。
「今更何用? 和解でも?」
少女は敵対心むき出しでそう呟いた。男はバカバカしいと言いたげに嘲笑し、グラスを手に謎の液体を嗜む。
「和解などせずとも、お前に攻撃の意思がないのは分かっている。その姿がそれの表れ、なのだろう?」
少女は黙ったまま。ただ睨むことはやめず、椅子に座ることも、料理に手を付けることもしない。
「私からお前に、一つ提案がある。私の配下にならないか?」
「……随分とまた、無謀な取引をするものですねー。一つ教えてあげなきゃいけないことがあるみたいです。私とあなたでは――」
少女が男へと手を向けた直後、男の持つグラスが大破しガラスが散った。
「――『次元』が違うでしょ?」
「まだまだ血に飢えているのは変わらず、ということか。では、認めさせるためのアイテムを提示させてもらおう」
男は大破したグラスを投げ捨て、
「数ヵ月後、『ガルモーニャ』に私たちは侵攻する」
曇りひとつない表情で少女にそう告げる。
「……」
「目的は『ガルモーニャ』の街ではない。そんなもの、持っていても意味はない」
「……」
「ただ、あの街には『根源』がある。お前もそれを知っていて、わざわざあの街まで遠出していたんだろう? ならば同じ者同士、手を組もうじゃないか」
「……あなたと同類? 冗談も度が過ぎるとただの妄言ね。忠告しておく、あの街に侵攻するならば即座にあなた含めて全員、消し飛ばすから」
「おおっと、それこそ冗談に聞こえないな」
睨みつける少女を煽るように男はオーバーリアクションで驚く。少女はため息を吐くと目線を逸らし、そのまま何もせずに部屋を出て、扉をわざと力強く閉めた。叩きつけられた扉が打撃音を響かせる。
「お前はやはり若すぎる。力があっても知が足りない。お前一人で『根源』をどうにかできると? 不可能だ、いずれ『ガルモーニャ』も共に滅ぶ。とても、愚かだ……リドゥラ」
フィノちゃんの武具屋店内奥に設置されている演習場。そこで私はフィノちゃんと模擬戦を行い、何とあのフィノちゃんに素人の私が勝利を収めてしまう。ずっと倒れているフィノちゃん。最初は演技してるんだと思ってたけど、良く見ると……完全に意識が飛んでしまっていたのに気づく。
「あ、あれぇ?! ほっ、ホントにやられてるぅ?!」
しまった! 隙を突いたとは言え、フィノちゃんだから全力で殴らないとなってことで全身全霊の攻撃を仕掛けたら、ま、まさか本当にやられちゃうなんて!
「ふははははは! 私って天才、いや天災ではないか! なぁ、フィノよ。悔しいだろう? 我が力の前に手も出なかったその惨めな姿がなぁ、ふぅーはっはははっ!」
しーん……。あ、あれ? おっかしいなー……。ってよく見ると、フィノちゃん……服、破れてない?! 私の攻撃した腹部付近の服が刃物で切られたように――って流血してる?! うわぁあああああああ、どどどどどどどどどおどどどどどっどおどおどどどどどどうしよぉぉおおおおおお?!
長筆は打撃型。絵の具は切断とは程遠い。恐らく長筆特有の必殺技である波動『波打』に切断属性が含まれていたんだ。ノリでダメ元で放った技だったんだけど、本当に成功するって……演習とは言え、こ、これはまずい……。ウィンディーネ! ヒーラーといえばウィンディーネだ! 通信魔法! え、えっとぉ、何となくー、テレパシー!
『ウィンちゃーん』
『はい、何ですか?』
『で、できた?! こ、これはもしや、私って本当の天才なのでは?! ふふふふふはははは! そうこなくっちゃ主人公じゃない! そう、私はフィノちゃんですら敵わない最強の――』
『通信魔法は心の声がダダ漏れになるんですよ、狐火さん。話が長くなるから要件だけ』
『あ、ごめんごめん。心なしか、ウィンディーネがいつもより冷たく感じる。通信魔法特有のってのもあるかもしれないけど、なんか――』
『全部聞こえてますよ?』
『うおあああああああああああああああああああああああ! フィノちゃんが死にそうなんだ! 大至急、フィノの演習場へと向かってくれ!』
とりま発狂で全てを誤魔化しにかかる私の絶叫がウィンディーネへと伝わり、天然なウィンちゃんはその絶叫で大焦り。
『今すぐ向かいますから』
そこで通信魔法が切れた。
救難信号を発信してからおよそ五分ほどで、ウィンちゃんが演習場に到着し、すぐさまフィノの傷を修復、薬草の包帯を巻きつけて処理を終える。一方の私は罪悪感も感じずにフィノちゃんの裸体にハスハスしていた。いや、最低だな、私。案の定、ウィンディーネに睨まれてしまう。いや、訳があったんです、色々訳がですね――
「おめでと、狐火さん」
「え?」
睨んでいた目が笑顔に変わる。まるで天使の微笑みで、とてもじゃないけど私にはもったいない価値のある、その表情が今ここに。幸せだ、このまま氏にたい。
「水属性……と必殺技の波動の習得、完了ですね。フィノちゃんも大喜びですよ、きっと」
なぜかウィンちゃんに演習のことが悟られ、そして負傷させておいて喜ばれた。いや、それでいいんですか?! いいんですか?!
あまりに突拍子も無い想定外の状況に、なんか安堵した私。放心状態で嬉し涙を流してしまった。いや、本当にしんでもいいやー。
なんて呆然としてた私の目の前に師匠が現れ――?! なん、だと?!
「死神くそじじいのくせに背後じゃなくて前から現れやがったなぁー!!!」
「誰が死神くそじじいだ、毒素具現化生物が」
さらりと返して、さらりと侮辱されましたー。はい、私乙。
そんな毒物質を師匠が突如、襲いかかり腹に一撃を加える! いや、何でぐほぁあっ?! 吹っ飛んで地面に不時着、と見せかけての綺麗な後転から伸膝後転で立ち上がりフィニッシュ!
「何するのさ、おっさん?」
「誰がおっさんだ、腐女子。……フィノの演習の成果が少しは出ているわけか」
「この私を甘く見てもらっては困るな。こう見えても中学時代は――」
「お前の過去話はどーでも良い。さてと……行くか」
「んだ、どこさ行くだ?」
ってなぜか方言のとこはスルーで変態紳士に、いや変態紳士って何? 何で反対同士が一致団結してるのさ?! なぜかスルーで、死神に連れられてきたのはギルド集会所。以前、焔液流動を止めるべく立ち上がり、見事に壊滅に追いやられていた数名のパーティーたちが無様にも集まっている。いやー、とっても良い眺めだ。ほらぁ、我を見よ。焔液流動を止めてみせたスーパールーキーこと、狐火木ノ葉はこの私のことだぁ! 崇め奉れ!
「まぁ、俺とノヴァなしでは無理だったろうけどな」
そう言葉をかける聞き覚えしかない声。席に着き、悠々とディナータイムのルフの姿があった。火属性専門家の男の娘が、どう考えても場違いの男の娘が、なぜこんな水属性固定のパーティー編成の中に?
「うるせぇっつーか、相変わらずのダダ漏れっぷりだよな、狐火。そういう能力か?」
「どんな負属性?! はははっ、君たち異世界人にはできんだろう? これは主人公の私に課せられた能力であり――」
「どちらかで言うと負属性ってよりは腐属性だよな。どちらかで言うと異世界人はお前だよなー」
確かに。
そんな異世界人を含め、総勢――六名。
皮肉面で明らかに皮肉を吐きそうな顔をしてて、息を吸うように皮肉を出しそうな、もうどう見ても仲良くできそうにない、いやむしろ、こちらから願い下げなんですけど、氏ねばいいのに――ゴホッゴホッ、つまりは悪女らしいというか、そんな残念なお顔の持ち主こと、リーナ。
「この人畜有害はどこの子でして? 喧嘩売ってる? 買うけど」
「すいません、心の声がつい」
その皮肉面の横に座る相棒。は、まぁ、モブキャラだからどうでもいいや。
「さらっとヒドイこと言われた気がすんだけど」
そして、影が薄くて一瞬気づかなかったけど、壁側の席で一人座るボッチの女の子。もう関わらないでほしい感満載、だけどね、ああいうボッチキャラに限って可愛いというのは私の腐女子眼が見切っている! ←キランッという効果音付き。
「・・・・・・」
む、無視ぃっ?! 心が傷つくんじゃあー……。
私と変態と、あとルフを含めて総勢六名だが、関連性が見当たらない。
「変態発言は取り消せ、狐火。さて、今回集まってもらったのは他でもない――」
軽く受け流されて、ありきたりな言葉で説明を始める変態。っていうか私の師匠。
「――メテオ討伐」
「ん?」
「は?」
「……」
「はぁ?!」
「へー」
そんなリアクションだった。ページを埋める目的が目に見える構成でお送りしております。読者に分かりやすく説明すると、一番手から順番に、リーナ、相棒、ボッチ、ルフ、そして私の順番。分かりやすく説明するのが必要なくらい下手くそな表現をする当作者のせいで無駄な文字数を稼いでしまったことを深く反省してみます、すいませんでした。
(作者:聞き捨てなら――)
と、作者を無視し、師匠は話を進める。
「以前、焔液流動をこのクソガキが引き止め――」
クソガキ?! 確かに。
(ルフ:納得した!)
「――ラッキーパンチだとしても、色々な現象を同時に引き止めた。街が再び機能し始めた、その矢先……メテオのブレスが再び、地下四階層草原を襲った」
「……再び……だと? じゃあ、一回目もメテオが原因だったと?」
相棒の言葉を師匠は肯定する。
「メテオのブレスが四階層の岩盤を割り、再び焔液流動が始まった。だが、今回のブレスは一撃では終わらなかった。現在も立て続けに放ち続けている……。目的は知らないがな。もう分かるな。メテオ討伐、これを成し得なければ――」
「ジ・エンドってわけだよ! さぁ、者共! 貴様らの力が必要だ! そのあるかないかの力を全て捧げ、メテオをぶっ潰してやろうじゃないかぁあああああっ!」
なんて机に立って見下していくスタイルの私を、背後からルフが押し潰し、粛清させられる。
「あははっ! このバカはほっといて、メテオ、みんなで倒そうぜ、な! 俺らならできる!」
ルフの必死のフォロー。中身のない言葉に、呆れられてはいたが、とりあえず収拾がついた。
と、まぁ、こうしてメテオ討伐隊が編成され、今回はダンジョンではなく、逆に上空へと駆り出るらしい。上空へは魔昇船と呼ばれる乗り物で向かうとのこと。もちろん、メテオのブレスが船を襲えば、一撃で撃沈するらしい。つまり、船をやられれば、全員死亡。そのため、クエスト難易度は初心者の私には不向きの上級コース。なぜ、私?! なぜなら主人公だからさ! ってなことで! 次回、メテオ討伐!
第一部完っ! と発言してからおよそ一ヶ月が経過して、まさかの第一部終わってません宣言ときました。
ついに主人公狐火木ノ葉がまさかのメタ発言からの次回予告ときました。
メテオ討伐と来ましたか。
はい、読者様方々! 本当のエンドロールまで、もうしばらくお待ちください。というか、メテオ討伐したら絶対終わる気がする! そんな気がする! だからもうしばらく待っててくだされぇええ!!!
第一部ラストステージ、メテオ討伐。
に、なってほしいと願う僕。




