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第19話『波打の波動』

 焔液流動警報が解除され、ダンジョンが解放されたことによって商業関連は再び潤いを取り戻した。食料枯渇による飢餓状態も治り、平和な日常が訪れる。

 ずっと気にしていたのか、ウィンディーネは薬草屋で全ての解熱アイテムを買い占めていた。

「お、お嬢ちゃん……随分と大人買い、だね、ははは」

 あまりの購入額に店主のおじさん苦笑い。ウィンディーネはなぜか頬を膨らませて怒っていた。

「私は子供じゃないもんっ!!!」

 なんて指を突きたてて怒るウィンディーネ。

「まいどありぃいっ!」

 大量の解熱アイテムを魔法で収縮させポケットにしまうと、ウィンディーネは薬草屋を出た。満足げに街中を歩く。特にすることもないウィンディーネ。宅配のバイトは最近入ってなく、休日ばかりですることもない。狐火木ノ葉という厄介者も今日はフィノちゃんとダンジョン走破中でいないため、静かで何もない。静かな方が良いウィンディーネだけれど、急に静かになりすぎて寂しい様子だった。

 家に帰り、買った解熱アイテムを全て倉庫にしまう。それからソファーに深々と座り込んで、小さくため息を吐いた。暇で暇で仕方なく、何もせずにボーッと一時間程を過ごした頃――

 ピンポーン。

「あ」

 インターホンの音で我に返り、玄関へ。扉を開くと、そこに立っていたのは一人の男性。目深に被る帽子、口をマスクで隠し、服装は目立たない黒一色。しかしどことなく怪しい男だった。ポカーンと無表情で見上げるウィンディーネ。

「やぁ、久しぶりだな……こんなところに移住していたのか」

「あ――」


 ダンジョン四階層荒地。修行中の狐火と引率役のフィノがそこで模擬戦を行っていた、その最中、遥か上空に浮かぶ火の鳥メテオの、気まぐれに放ったブレスが二人を襲う。以前に発生した焔液流動の原因であるメテオのブレス、そのブレスが再び焔液流動を起こしてしまった。二人は咄嗟にその焔液流動を止めるために動くが、今回のブレスは一撃だけではなく、とめどなく降り注ぐ。地上、街の住民たちはそれにすら気づかない。メテオのブレスは極めて細く、そして着弾地点で大爆発を起こす代物。そして厄介な点は、地面に着弾してから、地下四階層まで貫けることにある。それゆえに、地上の住民は全く気付かない。ダンジョンは四階層以降、時空間が歪んでいる構造。四階層に天井ではなく、大空が広がるのは解明はされていないが、そういう理論らしい。その構造ですら関係なしの時空間を貫く圧倒的破壊力のブレス。狐火とフィノの二人だけでは止めることができなかった。ブレスが止まらないのなら、いくら流出ポイントを凝固させようともブレスで再び壊されてしまう。

「あはは……ちょーっと間に合わないかなー?」

「どどどどどど、どうする?! どうしよう?!」

「メテオを……討伐するしかなさそーだねー」

 苦笑いでそう答えるフィノ。顔半分、大火傷で負傷してるため、簡易的に包帯で処理している。

 狐火とフィノはブレスが降り注ぐ四階層を抜け出し、ギルドにこの現状の報告を急いだ。二人の力ではどうにもならないなら、ギルドに報告して救援を送ってもらう他ない。

「――ということは、あの口うるさいギルド嬢ねー。全く、やれやれだぜ」

 狐火はカウンターに肘を突き、微動だにしないギルド嬢にこう言った。

「やぁ、愛しの可愛い我が子猫ちゃん。今日も綺麗な黒髪が私を恋という螺旋の迷路に誘って――」

「要件はなんですか?」

 ちょっ、途中で割り込みは心に来るから!

「君の瞳を奪いに来た」

「……」

 無表情過ぎて睨んでいるような表情のギルド嬢は、私に向けて呪文を放とうとしていた。ちょっと待ってぇえええええっ?!

「しょうがないなー、子猫ちゃんったら。その無機質な表情も、嫌いじゃないよ」

「嫌い」

「嫌いは好きの裏返しってね♪」

 完全に呆れられ目線を逸らされる私。しかしそれでも諦めないねちっこいキャラクターである。それこそが私のプライド的な、そう的なあれである。クラスメイトからは『諦めの悪さがネオジム磁石並だよね。ネオジム磁石擬人化したら狐火だよね。つまり狐火って磁石だよね』って言われる。それ完全に磁石じゃん! 人の要素消えたよね?!

「狐火さんは人なんですか?」

 ってギルド嬢に言われる始末。

「ずっと変人の一種かと」

 それただの変人! っていうかそれ一応人間! 社会的に消される対象だとしても一応人間だから!

変人ゴミは消えないといけません、徹底的に」

 今、変人の読みがゴミになってたよね?! 結局人の要素消えたよね?! っていうか、本気で消そうとしてるよね?! 再び魔法放とうとしてるよね?!

 そんな私とギルド嬢の会話を椅子に座って見物するフィノ。完全にくつろいでいる。フィノちゃーん!

「何だい、狐火くん?」

「やっぱり報告めんどくさいよー」

「めんどくさいのはそちらです」

 だって、ほら、コミュ症みたいにさ――


「そ、そそ、そのっ、あ、あの、ほう、報告、あの、は――」

「はい?」

「あ、な、何でも、ない、ですはいっ」


「結局会話ができなきゃ意味ないない! だから私はグイグイ行くのさ! ついでにスキンシップ」

(作者:そのついでがいらないんだよ、そのついでが)

 Shut up!! Get outta here!!! コミュ症は引っ込んでな!

(作者:最近僕の扱いがヒドイ)


 突っ込み役不在により作者が無理やり突っ込む状況。結局あのあと、フィノちゃんが二人を止めに入り、報告もフィノちゃんがした。かなりの重要な要件に、ギルド嬢の無表情が少し引きつったような顔に変わる。

「すぐさま政府に通達しておきます。ご報告ありがとうございました、フィノ様、磁石さん」

「結局磁石になったぁあああああああ!!!」

「じゃ、家に帰ろっかー、マグネット狐火」

「その芸人風の呼び方やめぇええええ!!!」

 再び発生した焔液流動により、家に帰るざるを得ない二人。ただ今回は厄介事がもう一つできてしまった。メテオの出現。メテオは、数々のパーティーたちを死へと誘ったボスキャラ。つまりはこの小説第一章のボスに位置すると私は見た。そして、主人公である私がそれを討伐しなきゃならない、流れだ。

「じゃあ、いち早く水属性攻撃の習得をしなくちゃね。メテオは火属性、狐火ちゃんの攻撃は逆効果だからねー」

 フィノちゃんの店へと直行。武具屋の奥にある演習場を借りることに。そういえば、フィノちゃんって子供なのに店なんて持ってるんだね。しかも本人店主という。いや、裏をかけば……実はフィノちゃんは人類ではなくて『年齢は二百歳なのか?』と聞いたけどそれはなんか無視された、的なやつ?

「あながち間違いじゃないけどさすがに年齢は二百歳じゃないかなー」

 そんな謎多き妖精のような少女に連れられ、演習場に足を踏み入れる。そうだね、やっぱり妖精種なのかもしれないね、フィノちゃん。

 その演習場はコンクリートのような材質で覆われたシェルターのよう、な単純な真四角の空間。ただ壁や床、天井部に歴戦の傷が見えます。これは数々の武闘家たちが集い、共に戦い競い合った場。そう、つまりはコロシアム、なのだ!

「喰らえぇ、不意打ちインク!」

 背後を向いてるフィノちゃんに容赦なく襲いかかる鬼畜な私。炎属性の絵の具でフィノちゃんの頭部を思いっきり叩き潰した! そしてそれが、まさかのヒットしてしまい、フィノちゃんを吹っ飛ばして壁に叩きつけてしまう。えぇえええええ?! いや、そんな破壊力が?!

「フィノちゃん?!」

「んー? どしたの?」

 平然と立ち上がるフィノ。今、察しました。私、狐火木ノ葉はフィノちゃんを倒すことはできません汗。

「ふふーん、狐火ちゃんの攻撃は初級レベルだからねー」

 グサッ!

「それに属性が火属性だけじゃあねー」

 グサッ!

「一番治すべきは妄想症のとこだよねー」

 グサッ!

「それに、攻撃の――」

「もうやめたげてぇえええええええええ!!!」

 肉体的にではなく、精神的に攻撃を仕掛けてきたフィノちゃん。こう見えても結構打たれ弱く、心はガラス以下の紙くずの心ですから。ナイフなんかで簡単に裂かれちゃう紙くずですから。っていうかゴミクズですからぁ!!!

「うわぁあああああああんっ、くらえええええ」

 適当に絵の具の筆で殴る。とりあえず水属性に変化中。それをフィノちゃんは全段綺麗にいなすと、私の腕を掴んで攻撃をやめさせる。

「君の弱点、それは感情任せにしか発動できない属性変化。君は妄想による成長速度は尋常じゃないけど、妄想に頼りすぎで、妄想状態じゃないと属性が変化できない」

「へ?」

「だから君は『妄想』じゃなくて『想像』しないといけないんだよ。ほら考えてごらん。全てを包み込む深海の蒼」

 あ、そう言えば……一回目の模擬戦でもそんなこと言ってたっけ。深海の、ぐふぁっ?!

 急にフィノちゃんの蹴りが背中に入る。

「不意打ち卑怯だぞー!」

「それ、さっきの狐火ちゃんだよ」

「それは私じゃない私じゃないの! 幻想色彩・夕景!」

「おおっと」

 火属性の筆殴りを軽々と避けるフィノちゃん。のちに、散らばった絵の具は地雷として起動するのは知られてないかな、ふふふ……。

「心の声が漏れちゃってるよー」

「あ!」

 失敗したぁあ! ならば――

「狐火ちゃんの次のセリフは『作戦変更だ! 力でねじ伏せる』だね」

「作戦変更だ! 力でねじ伏せる! あっ!」

 キラーン、ステータス覗き見の力だよー。どう? 狐火ちゃん?

 やるじゃーん。ついに貴様も、この高みにたどり着いたというわけか。

 バチバチバチ←効果音です。

(作者:お前らテレパシーで会話するなよ)


 右下上右右下右右、上上下下左右左右。フィノちゃんの具現化ステータスが無数に飛翔してくるのを避けるのは簡単。なんせ私はドッジボールの王子様と呼ばれていた。何で王子様なのさっ?! なぜお嬢様とかにしないのさ?! 絶対に『テ○スの王子様』寄せてきてるよ、あいつら!

「避けるのうまくなってきたねー、狐火ちゃん」

「ふっふっふっ、そんなステータスでこの私に歯向かおうと言うのかね」

「じゃあ、これはどう?」

 縦二十五メートル、横十五メートルの演習場。その演習場の中、突如空中に無数のステータスが出現する! ざっと数えれないレベルの量。ちょっ、それはチートじゃん。

「レインステート。さぁ、避けてみなよ」

 宙に浮かぶステータスたちが一斉に私へと飛翔していく。無理無理無理無理無理無理!!!

「にっげるんだよぉおおおおお!!!」

 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!

「うわあああああああああああ!!!」

 私の逃走経路を表すようにステータスたちが地面に刺さって、軌道を描いていた。まずいまずいまずい! こんなの避けようが……あ。

 その時、私は気づいてしまった。いや、良く良く考えたらそうじゃん。ステータスには文字が記載されていた。それはフィノちゃん本人のステータス内訳。事細かに見てはいけない内容までもが書かれていた。私は逃走しながら、飛翔するステータスをフリスビーの容量でキャッチして、それを逃げながら確認する。

「こっ、これは……!」

 唖然、それは唖然という言葉がお似合いの、衝撃な内容だった。天候で表すと雷。私はこの記憶をこれからの生涯一生忘れることはないのだろう。それほどに私の心の中に刺さり、自然と足を止めさせる。もし、これが狙いだったのなら、フィノちゃんは相当頭が切れるのだろう。けど、これは――

「フィノちゃん……」

 ステータスは私を狙い続けるが――

「メリッサって?」

 その瞬間、飛翔してきたステータスの軌道がブレて、私の真横の地面に突き刺さる。追撃で動いていたステータスは宙で停止する。

「……」

 黙って動かないフィノ。これ来たんじゃない?! これスクープじゃない?! もしや、フィノちゃんの彼氏! って彼氏いたの?!

「メリッサとはどんな仲だったのさぁー? ねぇねぇ」

 ゲスい笑顔で煽りを入れる変態女子。フィノちゃんが珍しく深刻な表情をしている。知られたくない、しかも恥ずかしい情報だもんねー。あのフィノちゃんが、あのフィノちゃんが! そう、あのフィノちゃんが!

「……何で、それを知ってるの……?」

 プルプル震えながら小さく呟くフィノ。

「ほら、これフィノちゃんのステータス。色んな情報、乗っちゃってるよ~?」

 それを教えるとフィノは大急ぎでステータスを消滅させる。その隙、フィノちゃんが珍しく見せた油断の香り。その隙を狙う私の一撃。思い出す、私は水没しかける海底神殿にいたんだ。そう、考える。深海の蒼……。

「……幻想色彩フィクションカラー深海アクア

 全身全霊、長筆を横薙ぎする。その筆の色は蒼! 波状に広がっていく青いインクがフィノちゃんの隙を突き、腹部に水属性の衝撃を与える。かろうじて覚えていた情報を駆使した長筆だからこそ使える必殺技――


波動『波打なみうち

(詳しくは『フィノの熱弁:バランスタイプ』を参照)


 演習場の壁を蒼一筋に塗りたくり、フィノちゃんを再び吹き飛ばす。今回のは完全にクリーンヒットした実感が湧く。水属性ならではのマイナスイオンが演習場を包み込み、疲れた身体に心地いい。

「ふぅー……勝利! 第一部完っ!」

 フィノちゃんの負担半端ないような気がするんだけど、異世界だとむしろ少ないくらいなんだろうなー。

 メテオの一撃で顔半分包帯巻いてる状態からの模擬戦で狐火に良い一撃もらっちゃったけど、あれ大丈夫なんだろうか? そして、なぜこの主人公ってこんなにも容赦ないのだろうか?



 どーも、k本的にコミュ症ボッチで非リアな小説作家こと星野夜です。

 メテオそっちのけで物語が進んでおります。メテオの件はどうなったかだって? あ、そ、それはですね、当局が全力で対応させてもらってますので、はい、はい、大丈夫でございます、はい。かなり遅くなってしまいます、はい、すいません、はい、もうしわけございません、はい、はい!

 さて、主人公補正があるとは言え、成長速度の異常さ加減には呆れるね、はい。僕もこれぐらい成長速度早かったら頭悪くなかったのかもなーとか思ったりしてー。はっ! 狐火は頭悪いんだった!


狐火「失礼な! ほぼ、君の脳内と同レベルだから!」

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