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第14話『突発エレクトリカル』

 風吹く大陸、そう呼ばれていた。一年間、春夏秋冬、その大陸は風がやむことはない。春には心地の良いそよ風を、夏には涼しげな魔界側の冷気の風を、秋には草原からのナチュラルな乾いた風を、冬には人口密度の高い大陸からの暖気の風を運ぶ。常に人体に負担のかからない常温を保つ大陸は……現在、凍てつく風に支配され、冬の大陸と化していた。

 その大陸のとある人けのない場所に存在する観測所。普段は気候や天体などの観測、情報を更新し、人々の生活に役立てている。そんな観測所も予測不能の寒気には気づけず、風吹く大陸では病気をこじらせる国民が増加している。

「……クシュンっ! ……何なのよ、この寒気ぃ~……寒い寒い寒い寒い」

 一人の少女が雪降る中、観測所を訪れてきた。白景色に浮かぶ金色のツインテールをした、言えばまぁ、ありきたりなツンデレ系を予想させるキャラクター。一枚の鉄扉のドアノブを開けば、暖かい観測室。異常なまでの長さの解れがかった赤マフラーを首にぐるぐると巻きつけ、服装も五十重ねの重装備をしているその少女は、フカフカの手袋越しに冷え切った冷たいドアノブを回そうと触れる、その瞬間、

 バチンッ!

「っひぎぃ?! ぎゃぁああああああああああ?!」

 身体をビクつかせ、少女は突如、背中から倒れて雪に埋もれた。その声を聞いたのだろう、観測室の人間がドアノブを開けて外を確認する。

「またか、ノヴァ。お前さんは静電気人間なのか?」

「いたたたた……私だって起こしたくて起こしてるわけじゃないんだから!」

 私はノヴァ。観測所内ではみんな、私を面白がって、『静電気人間』と、そう呼ぶ。とにかく人一倍以上に静電気に苦しんでいる人間だろう。なぜかは分からないけれど、静電気が起こる。これがさ、本当に……いったいんだから、もぉー!

 急激に発生した寒気にも関わらず、今日は夜勤。寒い中、必死になってやってきたのに、静電気の洗礼ってないでしょ……。今日も変わらず、機械を眺めたり操作したりだけでしょうけどね。もう慣れた操作だし、適当にボタンをっとぉー……。

 バチンッ!

「っいだぁああああああああああっ?!」


 同時刻、ウィンディーネの家。

「あ……」

 突如、視界が暗転する。部屋の電気が瀕死しました。電気爆死のお知らせです。

「停電かなー? 魔法が蔓延る異世界にも停電とかあるんだねー」

 この手の停電は地球とほぼ同じかな? 恐らく、突如発生した大寒波による影響で降り始めた大雪のせいだねー。はっ?! つ、つまりはテレビがあったらあの番組も映らないということ?! くっ?! こ、これは違法電波による攻撃か?!

「……なんか、三日前のセリフが懐かしいやー、あはは」

「何のことですか?」


 さて、今宵集まり頂いたのは他でもない……。

「何か突如発生した大停電の原因を取り除くべく、大氷海の氷をぶち割るぞぉ! 題して! 『氷海なんて燃やしちゃえ! 海水温泉大計画!』」

「は?」

 と、呆れ顔の男の子――もとい! 男の娘! 季節違いと思えてた赤いマフラーが何と役立ってるではないか、ルフちゃーん!

「心の声漏れ半端ないな。防音材でも張り付けとけ」

 ルフ、茶髪に緑眼の可愛らしい男の子なんだけど、火属性といえば君以外思いつかないなとね! いや、正確に言えば、三日間で会えた人間が少なすぎて限られているだけなのだ! だっだっだっ!

「……無茶なやつだなー、相変わらず」

 真っ暗なギルド集会所、今は焔液流動警報でクエストには出れないので、集会所内に残っているパーティーは数少ない。その中での私とルフの二人。どんな状況下に陥っても、大衆相手に話すがごとく堂々たるスタンスは変わらずいくよぉ!

「……で? 俺ら二人であの大海全部溶かそうってわけか? 無茶じゃん。本気出しても五割が限界だな」

「いや、五割も?!」

「俺とお前で十割だぞ?」

 今回のこの策は修行の一貫なんだけどね。と、フィノちゃんに言われました、シュン……。まぁ、あれを溶かさない限りは食料はないと同然なのだから仕方ないのだ。

「そこで、この天才木ノ葉に良い考えがある!」

 呆れ顔のルフは暗くて見えませーん。

「いや、ロウソク使ってるだろ、見えてんだろ、なぁ?」

 あの氷海を下から熱して気圧でぶち壊すという策さ!

「……ざっとした説明だけど、原理は分かったぜ。どーせ、やることないし。変態木ノ葉の妄想に少しばかり付き合ってやるよ」

 あれ? 変態扱い?

 こうして、私とルフの二人で、無茶だろう氷海解凍作戦が始まりの音を告げるのだった! と、良い感じに締めよう!


「ノヴァ! また停電させたのかぁあ?!」

「私のせいじゃないもん! 静電気だもん!」

 静電気人間との由来はこれである。触れるものものに電気を放ってしまう能力なのだ! つまり、静電気発生率が高いだけなのだ! それが原因で、機械に触れた途端に電気を放ってブレーカーを良く落としてしまう。なのに、この職業を選んじゃったんだけどね。

「……もういいじゃん。私の電力で生活しなさい!」

「それ、お前の生命エネルギー全部吸い取ることになるんだが?」

「じゃあ、省エネしなさい!」

「こんな寒いのに暖房なしは無理だ」

「じゃあ、この寒波をどうにかしなさい!」

「それができたらやってるんだよぉおおおおおお!」

 ということで、観測者である私がこの原因不明の大寒波を攻略すべく、寒い寒い大吹雪の中、少女は一人、孤独にこの大寒波と戦わなければならないのね。寒くて寒くて凍りつきそうで、独り身で心までもが凍りついて、あぁ、私は――

「はいはいはいはいはいっ! 分かった! 俺もついてく! だから黙っていくぞ、おら!」

 ということで、今夜は危険なので翌朝、私とこの男とで、この寒波の観測と解決に向かうことになった。


 風吹く大陸の西の遥か向こうには、二倍三倍もの大きな大陸があるらしい。この氷海は向こうの大陸まで続いているのかな……。今まで観測した中でも最も凶悪な気象かもしれない。この大寒波を巻き起こす原因を突き止めるまでは、この氷は永久凍土と化してしまうわね。とりあえず、観測所の電力は私で賄っているから今は良いとして、この寒波をどうにかしないと。

「……モジュール8でも使う?」

「あれ、使うのか? だが――」

「ものは試しって言うじゃない! やる価値はあるよ」

 モジュール8、それは『天候を支配する』ことを可能とした、私たち観測所の作り出してしまった違法物。打ち上げた魔弾の爆発により、上空へと天候に影響を与える物質を放射。ものの数十秒で天候を切り替えてしまう。ゆえに政府に違法と認められ、研究以外では使用不能となった。名前の通り、入れ替えられる天候は今のところは全てで8つ。そのうちの一つ、晴れのモジュールを打ち上げれば、とりあえず大雪は過ぎ去り、太陽が顔を出すことでしょう。ついでに氷海も溶かしてくれると――

「――って考えてるな? ……研究という体で、使うつもりだな、ノヴァ?」

「モジュールセット!」

「おい?! マジかよ?!」

 私は事前に用意していたモジュールガンに黄色い弾丸をセットする。隣でアタフタする同業者は無視して遠慮なくぶっぱなした。

「天候転換! モジュールパージ!」

 火薬の破裂音が一切せずに、その弾丸は上空へと放たれる。天候科学による特殊な方法で打ち出しているので破裂音はしない。打ち出された黄色い弾丸は上空へと飛翔していくと、次の瞬間爆裂し、煙幕のような黒煙を吹き始めた。

「おぉい……ノヴァ、あれって『晴れ』のモジュールじゃないな……?」

「えへ」

 その瞬間、視界を閃光が走った。

「うん、これは『雷雲』のモジュール」

「はぁ?!」

 私はモジュールガンを同業者の男に渡すと一言、

「決着は私が一人で付けるわ。アンタは早く観測所に逃げてなさい」

「お前?! またアレやるのか?!」

 同業者はモジュールガンを持って、即座に室内へと逃げ込む。私は氷海の上に立つ。足で氷を踏みしめて硬さを確認。綺麗に凍りついた海面は透き通っていて、真下に冷凍された魚類が良く見える。

「自称他称静電気人間、実力発揮ね」

(作者:自称他称って結局通称ってことじゃない?)

「お黙りぃ!」


 昨夜の密接な濃厚な会議を経て、私とルフの二人でいかに氷海を溶かせるかを考え、そして今日、ここに立っている。

「最近、語彙力のなさを痛感する年頃になりました。どうも、主人公役の狐火木ノ葉と、」

「こんにちは、ルフです」

 さぁて、始まりました。いかにしてこの氷海を私たちが壊すのか! そこが今回の見所ですね。私は氷海を割るのは初めてなんで、非常に楽しみですねー。

「さて、狐火さん。今回はどういった作戦でこの氷海を攻略していくつもりですか?」

「そーですね、やっぱりぃー……」

 私は長筆を引き抜き、構える。

「力技、ですね、ニコリ」

「了解!」

 ルフも拳銃を引き抜き、構えた。

「以下のゴミ実況は全て海に投げ捨て、今からが本番だよ! ぬぉおおおおおおおお、萌えろぉおおおおおおお、我が小宇宙ぉおおおおおおおおおおおおおおっ!」

「しゃーっ! 全身全霊! 遠慮なくぶっ壊させていただくぜぇっ!!!」

 私はいつも通り、長筆を背中まで振り上げ、今回はそこで停止。力を溜める作戦にした。筆が真っ赤に変色し、さらに力を。火力が最大まで増したその瞬間、

「炎上爆裂! 幻想色彩・夕景!」「魔弾! ルベライト・フォーカス!」

 筆を縦に、瞬間的になぎ落とす!高火力によって金色に変化した赤絵の具が直線に広がり、ルフの魔弾による火災旋風が絵の具を巻き込む。その旋風が氷をえぐりながら進み、私の金色の絵の具を巻き上げた。私の絵の具が周囲を爆裂させ、ルフの魔弾がそれを補助してくれる! これは私とルフの合わせ技!

「「魔弾! 火焼旋風ロゼライト金環サンライズ!!」」


 天候は大雪から悪天の雷雲に入れ替わる。氷海の上、私は一人で遠くの見えるはずのない彼方にあるだろう大陸を見つめていた。それからひと呼吸を置き、

「さ、始めよっか!」

 右腕を頭上へと掲げる。雷はさ、避雷針と呼ばれる屋根などに取り付けられた突起物に良く落ちやすい。今回の避雷針はこの私! 静電気人間は名前だけじゃないとこを見せてあげるわ! 私のジョブは装甲アーマー。名の通り、防御型のジョブで、攻撃には不向きな職種。守りは攻めのうちってね。

 私は魔力を媒体に、身体内部から電気を発生させる。その電気の力で、首に巻いてる解れた赤マフラーを掲げた右腕にまとわせる。そのための長いマフラーってこと。魔力硬化も含め、完全に右腕は装甲。そして最後は――

 直後、私の右腕に落雷が落ちた。いえ、落としたの。落雷の電力を右腕へと供給するために。

「最大出力、赤色電流放射!」

 掲げていたその右腕を前へと突き出し、勢いを抑えるために左腕で固定。グルグル巻きになってた赤マフラーが瞬間的に回転して解け、赤色の電撃が前方へ一直線を描きながら氷海を横に切り裂く。

「無茶すんなー、毎度のことによぉ……」

 観測所の扉をゆっくりと開き、ノヴァの確認をする男。電撃が止んだのと同時に、ノヴァは氷海の上で、倒れた。


 魔弾、火焼旋風・金環を繰り出してから数分が経過し、氷海を横に裂いていった火災旋風は遠く彼方、既に視覚では捉えられない水平線の向こうへ。それを呆然と佇んで眺める私とルフ。そろそろ飽きてきたし、そろそろ寒くて風邪ひきそうなんですけど。

「……思うんだけど、あの技……直線しか氷溶かせないって……効率悪っ!」

「お前が考えた技だろ」

「どーせならもっとこー広範囲を爆発できる技とか――」

 ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!

「きたぁああああああああああああ! って何が?」

 その爆発音は沖合から。遠目でも分かるほどに巨大なキノコ雲が出現しているのが良く見えている。あまりの爆発に、雲が広がって太陽光が差していた。もしかして、あの技……結構やってくれた?! 大爆発来ました?! 今まで炎上させてきた何よりも素晴らしい炎上率だ! これならネット社会追放記録最速も間違いないね!

「まぁ、何だか分かんねぇけど、爆発のおかげでよぉ、ほら見ろ」

 浅瀬に巨大な亀裂が走っているのをルフが見つけた。亀裂は水平線の彼方へ。そう、さっきの爆発が氷海の奥深くまでを破壊した証拠。だけどね、問題が一つ。

「おい、結局これ、亀裂入っただけじゃね?」

「ふふふふふっ……」

「キモイ」

「ヒドイ?!」

 勝利を確信した時、そう、自然とこう笑みが溢れるものなのさ、あふっ……あ、あふれ、いや、漏れる? あ、漏れるものなのさ! ……違うなー。

「キランッ! 真を貫いたその心中に煮えたぎるその感情が我の身体を勝手に動かさせるのさ!」

 違うなー。

「どーでも良い。つーか、噛んだろ、今」


 観測所内部。気絶してたノヴァを無理やりたたき起こす男。

「ぬぁ? ――っ?!」

 気がつき飛び起き、勢い余って、覗き込んでた男の顔面に頭突きをクリーンヒットさせるノヴァ。

「「ぐぁぁぁぁぁあああああああああああああっ?!」」

 それから――


 湿布なるものをオデコに貼る私とこの男。何でよりによってこの男と湿布おそろなのよ。

「そこ問題じゃないだろうがよぉ! いってぇ……」

 私が気絶している間に色々あったらしい。えっと、なんかーズバババってなってドカーンってなってバキバキっってなって、で今に至る。


「赤色電流放射が相殺された?! でっ、でも何で――」

「レーダーが反対方向からの魔力を検知した。お前さんの赤色電流放射の魔力と相対する謎の魔力が発生してたんだよ」


狐火木ノ葉「シャキーン!」

ルフ「キモイ」

狐火木ノ葉「ヒドイ!」

 じゃーん。↑犯人。


 相対する魔力のぶつかり合い。それが大爆発を誘発させてしまったらしい。けれど、おかげで氷海には巨大な亀裂が走った。それは良いとして、新たに問題を作り出してしまった私たち。この展開は予測してなかった。今までの観測でも記録はされていなかったこと。恐らく、焔液流動による溶岩の噴出などが原因になっていると仮定する。

 爆発発生地点、二つの大陸のちょうど真ん中あたり。先ほどまでキノコ雲が昇っていたその地点上空に『穴』の発生を観測。それは一般ではこう呼ばれている。

「……オゾンホール?! ったく、面倒事に巻き込まれるわね、今日は、本当に!」

 悪態を吐いて、私は急に身支度をする。男はそれを見て、察してくれたのか、大きくため息を吐いて、同じく身支度を始めてくれた。目指すは相対する魔力を放った西に位置する彼方の大陸。向こう側の大陸が放った魔力は私と同じ目的で、偶然……本当に偶然ぶつかり合ってしまった。向こう側も気づいてるはず。同じ目的で向こうと手を組む、これが一番の策。向こうの大陸は外人を弾かず、審査さえ通れば上陸できる、友好的な大陸と聞いてるし。それにこの異常時は二つの大陸間だけの問題じゃない。いずれ、惑星的問題になる。早めの対処が重要ね……。間に合わなければこの世界は――

 新キャラきたぁああああああああ!

 今回のキャラは静電気人間がテーマかな? 触れるものにすぐ電気を放出してしまうツンデレ少女、ノヴァ。自身がなぜ静電気ばかり発生してしまうのか分かってはいない。観測所にこの齢で就いてる時点で相当頭脳は良い。はずなのに、電気属性体質だから静電気が発生しやすいことはなぜ分からないのだろうか?


 今回登場したワードが少し現実味のあるワードたちに、異世界感が失われつつある当小説です。我ながら思います。


「展開無理やりすぎんだろぉおおおおおおおおおっ!!!!!」


 次回、観測チームのノヴァと主人公狐火木ノ葉が出会う……といいな。

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