第13話『レインズブロウ海底神殿からの脱出』
数百年前……魔界に一番近い大陸に存在する国『アポスト』で『魔族大戦』と呼ばれる世界規模の大戦争が起きた。魔界から送り込まれた幾千もの魔族たちが人間界を攻め入り乗っ取ろうとしていたらしい。最も近い国『アポスト』は当然最初に狙われ、壊滅の危機に瀕した。『アポスト』の都市『ラーヴル』は特に深刻で、そもそも敵に対抗する策も持ち合わせてはなく、全滅を待つだけだった。
「諦めてはいけない。きっと何か策はある。私たちは無力ではあるが、無知ではない。力では切り開けない道があるはずだ」
国『クルィーロ』の首都『ローク』のギルド内。一人の男がそう叫び散らす。また変人の独想ワールドが切り開かれるんだとギルド内のパーティーたちは呆れ顔で見つめる。その男はごく普通の服装にごく普通のズボンを履いていて、良く言えば紳士、悪く言えばモブキャラのような風体をしていた。ギルド内では『千年に一度の変人による変人のための変人』とまで言われていたそうで。つまり『変人』である。
その変人は遥か離れた国で起こっている『魔族大戦』を止めるべく、一人で動き出す。この時、『アポスト』の国民以外で、魔族たちの侵攻に気づいていたのはこの男だけであった。彼の役職は『呪術師』であり、彼の呪術が『魔族大戦』を予言していたのだった。
誰一人として信用していないこの状況下、彼は一人、呪術による救済を考えていた。とても救済とは程遠い役職の呪術師に何ができるか、彼は頭を悩ませる。こうしている間にも『アポスト』へと魔族たちが侵攻し、死者が増え続けている。焦りつつも冷静に、彼は呪術による道しるべを切り開いた。
その時に訪れた神殿こそがレインズブロウ海底神殿。彼の呪術が発見したその神殿で彼は、ある一枚の壁画を見つける。四属の人間たちが戯れるその壁画。刻みつけられた古代文字。全世界的に有名な『ヌッルム』の壁画である。
「それこそが、こちらにあります、壁画でございます」
「あ、あのー……脱出しようとしてるのに、なぜ観光?」
私とウィンディーネは水没し続けるレインズブロウ海底神殿を脱出しようと試みていたが、いつの間にか観光に回っていた。のんきに観光案内をするウィンディーネが指し示す先には巨大な『ヌッルム』の壁画。
「ずぅーっと見たかったんです! こんな状況なのにどうしても見たくて、つい。あの壁画はですねぇ――」
「と、とりあえずぅー、その話は後で聞くから……まずは、逃げようよ!」
壁画のことは後にして、私とウィンディーネは大急ぎで捜索を続けるが、一向に見つからず水位が増していくばかり。
「ちょ、まずくない?!」
「……ちょっときつくなってきました、ね」
水位は私の腰ほどまで増して、ウィンディーネの首ほどまでに。このまま行くと、ウィンディーネは泳がなければ息ができなくなる。
「……もはや、歩行というよりは遊泳状態なんだけど……。ウィンちゃんは泳げる?」
「もちろんです!」
「あ、あはは……それはすごいねえー、あははは」
「あれ? ひょっとして――」
「あははは、タイムリミットは残り三十分。それまでに私が脱出できなければ、ウィンディーネ一人。私は水没にて溺死、というわけね……」
ここで主人公である私の頭脳が打開策を閃くのさ。キーワードは恐らく、あの壁画。こんな状況下でもあの壁画にすがるウィンディーネの好奇心がヒントをくれてた、としたら? そう、イベントはヒントへの道!
「所で、あの壁画って何?」
「今聞くんですか? ……あれは『ヌッルム』と呼ばれる精霊たちの壁画で、精霊たちが『魔族大戦』を終結させたって伝説です」
思うんだけど『ヌッルム』って呼びづら! そして関係なくね?! 終結しそうなのこっちなんだけど! レインズブロウ海底神殿と共に終結を迎えそうなんですけど! ……それだぁぁあああああ!!!
(作者:は?)
全く作者は鈍感だねぇー。終わらせるんだよ、海底神殿を!
まだ足のつくこの水位でしか動けない、今しかできないこと!
「はぁああああああああ!!!」
「ふぇ?! どどどどど、どうしたんですかぁ?!」
「いっくよぉおおおおお! 爆ぜて穿て! 幻想色彩・夕景! 絶賛、上方多めに排出中! いっけぇえええええええ!」
構えた長筆を上方へとフルスイング!
グキッ!
「はぅあ?! ぐふぁっ?!」
重心が先端よりの長筆をフルスイングした勢いで手首をひねってしまう残念なひ弱少女。フルスイングの一撃は普段より数倍増しの赤絵の具を排出しながら上方へと飛翔していき、天井部を赤く染め上げて爆発した!
「ななななな、何でぇええええ?!」
あまりの衝撃にウィンちゃんが絶叫。これでいいのだ! 壊れた天井から海水が侵入して、そのまま神殿を完全水没させる。その海流の勢いは下から上へ。流れに乗って水没しきった神殿から浮上。そのまま海上へ! さぁ、恵みの雨を!
「ってあれ? もしかして……」
爆煙が消え去った天井。そこにヒビは見当たらず。
「ぎゃあああああああああミスったああああああああああ?! あっ?! こ、この神殿……深い! ボボボボッ! ボッボォオッ! た、助けてぇ――溺れボボボボッ!」
「き、狐火さん?! 今、助けます!」
「あ、いや、そんなんじゃないよ」
「あれ? 溺れてましたよね、今……」
とにかくネタも作戦もミスってしまった。もうおしまいだ。手首はひねって使い物にならなくなっちゃったしね。
バキッ!
「ん? うおあっ?!」
「……狐火さん、もしかして……」
天井に亀裂が走る。
「何してるんですか?! 狐火さん、店に続けて神殿まで壊すんですか?!」
「その過去は掘り出さないでくれます?! だって、こうでもしないとぉ――」
その瞬間、天井が崩落し、膨大な量の海水が神殿へと流れ出した!
「「ぎゃああああああああああああっ!」」
私とウィンちゃんとで抱きしめ合って死を覚悟する。というか、そのノリにはついてくるんだね、ウィンちゃん。ぎゃああああああああああ、しんだあああああああああああああああああああっ!!!
《時間は永遠じゃない。でもね、僕ならそれができる。ほら、そんな笑顔じゃつまらないよ? 君の笑顔をずっと守ってたいんだ、永遠に》
「――っ? ……うわっ?!」
死んでない。というか、溺れてない。というか……これ、凍ってるんですけどぉ?! 上から流れ出てきた膨大な量の海水までもが時間停止したみたいに凍ってる?!
「完全に凍ってます……さ、寒い、です」
お互いに全身凍りつき、身動きが取れない状況に。このままだと二人とも凍死してしまう。まぁ、それも悪くはないけど、今回は脱出できるから。水属性のウィンディーネだけじゃ、厳しいとこだけど、私なら!
「マッチの灯りに相対せ……幻想色彩・夕景」
これがある。灯された筆が私とウィンディーネの周りの氷だけを溶かして水に変えた。全方位氷で敷き詰められた空間に二人、水浸し。
「ブェクションッ――あー、寒い。これ何? ウィンちゃん?」
「私じゃないです……」
それから氷を叩き割りながら――
(前提として神殿の天井を突き破ったのは黙っておこう)
私とウィンちゃんは海面へと這い出る。一面白い氷が張り詰めた氷海。暖かい太陽の光が照りつけるその気候と風景が不釣合いな景色である。
「ナニコレー?」
「……これほどまでの広範囲を一瞬で凍らせるなんて神業ですよ。膨大な魔力と技術が必要です……。一体誰がこれを……」
瞬間的に春から冬へと逆戻り。南極に似た景色が目の前に広がっていた。波の形に綺麗に凍り付いた海面が瞬間冷凍を物語っている。春の涼しげな風が一転、寒々しく凍てついた風が体に刺さって、
「ブェクションッ! ……あー、寒い」
「……ややこしくなりそうだから、帰りましょうか」
その言葉の通りに、この海水凍結の事件は人を介し、ネズミ算式に広まりっていった。政府は海水凍結の真相を探るべく、レインズブロウ海底神殿海面へ。私たちの空けた氷を穿つ穴については謎のまま。というか、バレたら私たち完全に檻にぶち込まれちゃうから、それでいいのさ。
ただ、この海水凍結がまた問題を発生させてしまう。焔液流動によるアイテムの枯渇に加え、水系食品も出荷不能になり、飢餓が深刻化。賑わっているはずの街中では空腹に彷徨う人々が屯い始めていた。地方によっては餓死する人も少なくはなく、政府は数少ない『創造者』を緊急招集。魔力による食料生成を試みるが、その食料は行き渡るのにはとても少なすぎていた。
「三日目にしてこれって……異世界ちょっと厳しすぎるんじゃないんですか、神様ぁー」
日が落ちて寒気が降りる寒夜。帰ってウィンディーネの部屋でゴロゴロとしている。ソファーに寝そべり、私は空腹に悶えていた。疲労困憊だし空腹だしで、もう気だるいんですけどー。なぜ、仲間の中に『創造者』がいないんですかー? せべて猫型ロボット一つくらい置いてくれても良いんじゃないんですか、神様、仏様、作者様?
バチンッ。
「あ……」
訳の分からない展開になっておりますが、安心してください。フラグですw
どうも、こんにちは。k本的にコミュ症ボッチで非リアな小説作家こと星野夜です。
ただいまの時刻……午前四時半。ずぅーっと第13話のタイトルを考えるのに時間を食わせておりました。おそらく、無駄に文章力をあげようとして脳内をフル回転させたのが原因で副作用として思考回路がフリーズしてしまったのでしょう。物語通りにフリーズです。
さーて、次回の第14話。波乱の予感ですね。なんて言っておこう。僕にも先は読めない! そう、僕が波乱させなければならぬ! それこそが僕の使命なのだから!
(注:当作者は常人ではありません)
ネタバレはあまりしたくなくてね。次のお話はもう脳内妄想で作り上げているのだよ。
絶望的状況下からのスタートです!
さぁ、次回第14話! 痺れるほどにクーリッシュ!
(注:本人は自分でも何言ってるか理解しておりません。前述の文章はタイトルではありません。当作品はバカが見ても分かるフィクションです。登場人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。と、いう体です)




