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第9話『幻想色彩・紅葉?』

「地点X、異常歪曲! 地殻変動上方15.3メートル!」

「馬鹿な……この時期だぞ?!」

「焔液流動警報が関与しているんでしょう。情報部! ギルドに速達を」


 私、狐火木ノ葉はウィンディーネと共に、ダンジョン地下二階層にいた。本来の目的である薬草採取から離れ、一人突っ走っていた私は気づかぬうちに一階下の階へと降りてしまっていたらしい。私が、初期の雑魚キャラであるジェマイル(地球名:スライム)に勝てなかったのは、階層が下がったために難易度が上がったからである。

「つまり私がダンジョンで負けるのはどう考えても私は悪くな――」

「突っ走り屋の狐火さん自身が悪いです」

「わ、分かってます……」

 技が使えるようになっても命中精度が残念な近眼老眼遠眼盲目女子。って最近自重がすごい脳内自蔑女子だよね。

「にしても――」

「にしても?」

「――ジェマイルってなかなかのテクニシャンだったよぉ?! なんか、意外と悪くなかったかもなんて思ったり! いやー、確かに気持ち悪かったけど、あのヌルヌルも少しは――」

 前話でも見せた、ブルーベリーの化物のような真っ青な顔で引くウィンちゃんがそこに。


「おい、突っ込みしかないぞ、今のシーン。とにかくメタ発言やめい! 作者出てきたらもう、この小説が小説として終わるから!」

「はいはーい、すいませんすんませーん、当作者『厨病黒王子』どの」

「厨二病で黒の王子であってカッコよくてイケメンで完璧すぎるパーフェクトヒューマンなとこは認めるけど。それより仕切り直し!」

「ありえないほどの過度修正だね。実際はコミュ症ボッチで非リアでヒキニートで趣味は部屋にこもってゲームばかりのザ・ダメンズの非行男子組筆頭のくせにね」

「さぁ、やる!」

「はいはーい」


「にしても――」

「にしても?」

「――ジェマイルってなかなかのテクニシャンだったよぉ?! なんか、意外と悪くなかったかもなんて思ったり! いやー、確かに気持ち悪かったけど、あのヌルヌルも少しは――」

 青い顔で引いたままのウィンちゃんが冷酷に私を見つめる。き、キモイのは分かってるよ自分で? だけど、その目はやめてぇぇぇぇ!

「あのままでいたら消化されてたと思――」

 その瞬間だった。重力がなくなったかと錯覚してしまう寸劇。地盤に亀裂が入って隆起し、破裂した! 私とウィンちゃんの二人は予測できない状況に回避の余地なく吹き飛ばされ、地面に落下した。

「いてっ?! なになになにぃ?! ちょっとぉぉおおウィンちゃああああん?!」

「いたたたたた……無事ですか、狐火さ――」

 ウィンちゃんの声が止まった。巻き起こる砂埃で辺り一帯視界不良。近くにいるウィンちゃんだけは何とか認識できる。目の前、砂埃の景色を見つめていた。私はその表情を何度も見たことがある。その表情は絶望。終焉を目の当たりにしてどうにもできない、何もできないと確信し、死を認めて硬直する、あの有名作家『夕闇』氏の名作アニメ『ヘタレ魔王とゴミ勇者』第115話の魔王のようだね!

「に、逃げ、逃げましょう……」

「ふぇ? あ、何か、や、ば、い、予感がぁ――」

 突如巻き起こる暴風。再び吹き飛ばされる私たち。転がって転がってー、少女たちは転がり続け、ぐふっ! が、岩壁……。

 砂埃が暴風で晴れると、そこには一頭の巨大な翼竜の姿。地盤を突き破って出てきた翼竜はダンジョン地下二階層より下の強者の区域に生息する。さすがのウィンちゃんでも勝てないとなったら――

「私の腕の見せ所じゃないか、あっははははは!」

「ま、待ってくだ――

 ゴガァァァァァアアアアアッ!

 ゲームでしか聞かないようなつんざく強烈な咆哮。うわぁっふぅ~いぃっ! すっげーや、これが異世界かー! なんて関心してる暇はなさそうだね。

 私はウィンちゃんの小さな身体を軽々と持ち上げて抱えて走る。

「そう、にっげるんだよぉぉぉぉおおおおおおっ♪」

 大慌てで大脱走! 嬉しそうな苦笑いを浮かべながら走る私。いや、これが結構しんどいんだけどね。後ろが凄まじいことになってるのを背中で感じながら、ただひたすらに前だけ向いて走る。そう、学生時代は前しか見ないポジティヴさを売りに生きてきた。教師からは『サッカー部に入れたら試合が崩壊する』と言われてサッカー部の入部を虐げられるレベルで! まぁ、サッカー部なんて興味ないし、私の力なんて貸すつもりはないけどね! なんせ、私がサッカー部に入ったら可憐なステップで皆を翻弄させ――

「――おわぁっ?! ぶふっ!」

 不注意になっていた私は地面にできていた小さな穴に足を引っ掛け、華麗なるステップで顔からスライディング着地を決める。

「いだだだだだだだだだだだっ?!」「いてっ……」

 ウィンちゃんを落としてしまうなんて私としたことがぁっ?!

「ウィンディーネどのぉ、お体は大丈夫ですかぁっ?!」

 なんて叫んで起き上がり振り向く私のお顔が真っ赤っか。頭を押さえながら起き上がるウィンちゃんが引きつった顔を見せる。

「その言葉、そのままあなたにお返しします」

「そ、そそそ、それってどういう意味ですか?! 私の頭ってそんなに重症ですか?! 完治できません。どうしましょう、名医? うーん、救いようがない。的な展開ですか?! 私ってそこまで――

 重症です。

 その時だった。背後から迫っていた翼竜が、背を向けたウィンディーネへと一直線に突っ込んでくるのを見る。私は咄嗟に飛び出してウィンディーネの前へ。それと同時に持ってた武器を構える。

「狐火さん?! む、無理です!」

「やってみなくちゃあ、何とやらって言うでしょおおおおおっ!」

 長さ170センチの長筆を構え、そしてあることを思い出す。そう、この構えは、野球九回裏ツーアウト満塁の最終バッターとして、ホームベースに立った私が見事にボールを――

「――外して負けてしまうあの時の感覚だ!」

「ダメダメじゃないですか!」

「ええい! 今回は背負うものが違うのじゃー!」

 翼竜の滑空に合わせ、私は長筆を振り――抜いて一回転! その勢い任せに全体重を乗せて翼竜の顔に会心の一撃を!

「食らって爆ぜろ! 幻想色――」

 その瞬間だった。ウィンディーネ一人だけがそれに気づく。洞窟の天井部、そこから落ちてくる拳大の何か。振り抜く狐火の筆と突撃する翼竜の顔の間に落ちたそれは挟まれて――

幻想色彩フィクションカラー・夕――」

 その瞬間……大爆発を起こした。周囲を一瞬で爆煙が包み込み、轟音と暴風でウィンディーネは身動きが取れずに屈み込んだ。

「き……狐火、さん……?」

 ズザザザザザザザザッ!

「いだだだだだだだだだだっ! がっ――」

 爆発の勢いで吹っ飛んできた狐火。屈んでたウィンディーネと衝突して背中を思いっきり強打する。

「……え、え? あ、あの?」

「……あ、あはは、あっはははははああっ! ど、どうだ、コノヤロー……名づけて……幻想色彩フィクションカラー紅葉プロミネンス

 煙越しにピースをして、倒れたまま煙る頭上を仰ぐ。呆然とするウィンディーネ。少しずつ爆煙が晴れていくと、目の前に顔が膨れた翼竜の巨体があった。驚愕しつつホッとするウィンディーネ。

「……と……とりあえず、帰りましょうか」

「ふふふ、ついに私の力が覚醒したのだな。分かってはいたが少しばかり力を入れすぎてしまったかな? はっはっはっはっ!」

「すいませーん、妄想から帰ってきてくださーい」


 それから無事に帰還した私たちをギルドの役員が問い詰める。わ、悪いことはしてないですよ? というかボスキャラ倒しました、はーい。私がボスキャラをですね、一撃で! そう一撃で! いちげ――

「うるさいな、さっきから。どーせラッキーパンチなんだろ?」

「病患者はお黙りぃ!」

 くだらないと首を振って呆れる男の子は無視して、私とウィンディーネはギルドに報告を終える。今回は薬草類の回収。無事に快熱アイテムも……フィノが回収してる。

「うわぁぁぁぁああああん、ふぃぃぃぃいいいいのぉぉぉぉぉぉぉちゃあああああああんんん!」

 泣きじゃくってフィノちゃんに抱きつくウィンディーネ。な、なにこの幻想風景。意識がどこか遠くに逝きそうなんですけど。

「よしよし、こわかったねー。えらいえらい」

 てか絶対フィノちゃん楽しんでるよね! この状況を機に弄んでるじゃん!

「フィノちゃんいなかったら死んでたよぉぉぉお!」

 あれ? 倒したの私じゃなかったっけ? 私じゃないの?!


 泣き止んだウィンディーネから話を聞くに、どうやら落ちてきた拳大の何かのおかげで助かった模様。その物体がフィノの作った爆弾だったらしい。偶然穴に落としてしまったフィノの爆弾が、偶然に私たちの真下に降ってきたと。何という幸運なんだか。俗に言う『主人公補正』というものかな。実感が湧いて、初めてリアリティを感じた気がするよ。

「じゃあ、結局あれは私の技じゃなくて……」

「フィノちゃんの爆弾」

「えぇぇぇぇぇええええー」

 緑色の翼竜を一撃で仕留めたフィノの爆弾。異世界に来て間もない私でも、普通に異常なことぐらい分かる。あれはただの爆弾なんかじゃないことがオーラとして伝わるのさ。なんせ、現世界のRPGをやりにやりつくしたヒキニートな私が言うのだから!

「なんかドヤってるけど、どうかしたかい、木ノ葉ちゃん?」

「あー、そのフィノの爆弾ってー……」

「ステータ・ボムっていう爆弾で、あれは――」

「――フィノちゃんにしか作り出せない、敵のステータスを崩壊させるアイテムなのだ!」

 ドヤ顔かまして横槍入れるウィンちゃん。まるであたかも自分が先ほどまで説明していたかのように、鼻高に説明されてしまった説明役フィノちゃんがウィンディーネを唖然と見つめる。

 なるほどね。じゃあ要するに、私の攻撃は単なるゴミアタックであって、ステータスが崩壊して体力が激減してたから一撃で仕留めれた、ということね。

 しかしながら、トドメを刺したのは誰でもないこの私! そう、私であるのだ! 噂はインフルエンザのようにすぐに蔓延するものだよ。現に、ギルド内の目線は私に釘付け……あれ? というか別の人物の方に目線が……。

 ギルド内ホールの複数置かれた座席、の一つに座る一人の人物。ゆるふわな軽装をした、白髪の人物。どこにも武器を所持している様子がないので、恐らく魔法使いなど魔力を駆使したジョブ使いと私の脳内は推測する。こういうふんわりした警戒心のない隙だらけのやつに限って、異世界ではかなりの実力者であり、危険人物であり、近寄りがたい人物であり、絶対に関わりたくないランキングベスト10位に入賞しているはずであり、嫉妬というわけではないがただ単に嫌いであり、嫉妬ではないが大っ嫌いであり、嫉妬ではないが!! とにかくきら――

 ポスッ。

「へ? え? な、なに?!」

 脳内妄想で謎の嫉妬心を燃やす私の目の前に、その人物が突如現れて、そして無断で頭をポンと優しく叩く。そしてニコリと笑って一言。

「美味しそうね、あなた」

「はい?」

 こ、この気配はぁぁぁあっ! 十中八九、人狼か! この占い師の千里眼からは逃れられないわよ! 波動『鏡花水月パラレル千里眼マインドハック』、あなたの心にズームイン!

「あなたの今後の成長が、うふふ……楽しみ」

 そんなことを呟いたかと思うと、いつの間にか目の前から消えてしまった。恐らく、やつの能力か何かに違いない。こ、これは――

「臭うな」

「え? そんなに口が臭かった?! 毎日ブレスケアには惜しみないはずの私が!」

 背後に佇む死神。なぜ師匠は私の背後から登場したがるのか。ほらぁ、やっぱり私のことが好きなんでしょう? 中身が変わっても私は私なのさ。ね? 愛情を感じ――

「黙れ、騒音被害」

「ひ、ひどい! あくまでも弟子である私に! そもそも――」

 私が愚痴愚痴と師匠の背中をバスバス叩く中、話は勝手に進まれる。おおよそ聞いてたけどわけわかめ。とりあえず、今回の『穴』についてのお話のようだ。あれがそんなに重要なものにはとても見えないけどね。

 しばらくして話を終えるとウィンディーネの目つきが瞬間的に変わった。うおっ?! え、なになに? 目覚めた? ほらぁ、私に何か用があ――

「さぁ、行きます! 解熱アイテムは手にしました!」

「あ、まだやるの? だってほら」

 私の指差す先。そこに何ともない顔でのほほんとする男の子、病患者の姿が。

「ん? なんだよ?」

「ほら、ピンピンしてるからもう良いんじゃ――」

 ウィンディーネはその言葉を全く聞かず、男の子へと近寄る。

「お、おう……え? 何?」

「ねぇ、ほら。これはね熱冷ましの草だよ。ほら、あーんして」

 男の子に近寄りながら、解熱アイテムを口へと無理やり詰め込もうとするウィンディーネに屈して男の子が後ずさりする。ウィンディーネは構わず草を持って、

「ほら、早く。熱が覚めませんよ? ねぇ、ほら、口を開けて。すぐ終わるから、ね? ふふふ、残したら……ふふふ」

「だ、誰か、誰か助け――」

「えい」

「ごぼぉぉぉごがぁっ!!」

 ご……ご愁傷様です。病み属性ウィンディーネは誰にも止められない。私も帰らないとや、やばい気がしてきたなぁー、あっははは……。

「どこ行くんですか、狐火さん?」

「ギクゥッ?! あ、あはは、いや、そ、そのですねぇ――」

 この後、数十回気絶させられた。

 寒くなってきましたね。こちらでは積雪十五センチを記録して、自転車が再起不能になってしまいました。まぁ、無理やり漕いでましたけど、うん、やめようね? 転倒して自動車に轢かれても僕は知りませんよ? というか僕自信のことですよ?

 さて、小説家になろうを初めて気がつけば早? 二年と四ヶ月くらいですかね。一年記念とかの小説書こうかなとか考えてたのに、いつの間にか過ぎていた衝撃。あー、歳を取るのは嫌だァァァァ! 僕はいつまでもずっと小説世界の主人公のように永遠の子供でいたいのです!

(つまりピーターパン症候群なのでしょう、夜さん?)


 誰でも歳を取るのは嫌なものです。こうして小説書けるのもいつまでだろう……。


狐火「なぁーんて悲観的なことを考えていたら闇属性になるよぉ? 学校の面談で『テスト前夜の狐火はこの世界で一番の闇を抱えているからいたわってあげてください』と母親に言われてしまう私のようではないかー、はっはっはっ……はぁ……」

星野「急なご登場乙です。そーですね、僕、星野夜といえば暴走がイメージですもんね」

狐火「現実の主の負のオーラを隠しても、小説に出てきてるからね」

星野「そうさ、僕の能力は『深黒なるブラック深淵の神風ヒストリーメーカー』なのだから!」

狐火「何をぉぉお! 私だって『電脳世界炎上物語アンヒールアンドレイド』がある!」

星野「ふふははは! 君は僕の脳内製造機サモンズターミナルによって生み出された幻想フィクションに過ぎない。その程度の力でこの僕に敵うとでも?」

狐火「そんな幻想フィクション、私がぶっ壊してあげる! 食らって焼き墜ちろ! 幻想色彩フィクションカラー夕景フレイム!」

星野「死滅せしデッドエンド物語の一頁パージ!」


 二つの相対する波動がぶつかりあい、そして幕は降りる。



 近日公開! 劇場版ひとぐら! 灰被りブラッディ最終日エンカウント


「……ごめんね、ウィンディーネ。約束は守る……主義じゃないんでね。終焉色彩ラストカラー――――」



『ひとぐら!』は全てはフィクションです。

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