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第7話『気まぐれチェイン』

 異世界に飛ばされて二日目の朝、私は誰かの声に気づいてベッドから起き上がった。暗い室内、カーテンを透過する薄暗い光。目覚めてもやっぱり異世界ですよね~。ってことは今日もファンタジーライフを味わうことができるわけですね! 朝は弱いけど、これだったら朝からテンションMAXだよ!

 そんなことを黙考して朝からエクスタシー状態でいると、どこからかウィンちゃんの声が聞こえ始めた。

「――ひゃうっ! ちょっちょっと……そこはダメだよぉう……あぅ! 本当、だ、だめぇ……」

 ブハッ! もっ! もしかして、この喘ぎ声はひょっとしてウィンちゃん?! 一体朝から何を――ごふっ! こ、これは、ちょっとヤバイやつだよ、刺激が強すぎるってぇ……はっ! 鼻血が出てきた! マジか。ととと、とにかく確認しないといけないよね? あんな年頃でそんな不浄な事してるなんてほって置けるわけないでしょ? どんな作業が行われてるかの指摘とコツとかをビシバシ指導してあげるから……私も呼んで欲しかったよ、ウィンちゃん! やっぱりファンタジア最高!

 私は鼻血で赤く染まったティッシュを鼻に詰めたまま、ウィンちゃんの寝室へとこっそり向かった。この時の私はおそらく忍者の消音歩行よりも静かに動いていた気がする。

「さぁ~てぇ~、一体誰がお相手なのかな~?」

 視界を飛ばせる程度に扉を開き、中を覗く変態。早朝だから誰の視線もないのでじっくり覗きにかかる変態。先ほどから呼吸が不安定でムラムラしている変態。そんな変態が見た先、そこには赤い顔をして声を出さないように我慢するウィンディーネと、その上に乗っかっているもう一人の人間?! まままっま、まぁじですかぁ?! ただの私の汚望だったのに……まさかのマジなやつですか?! 童貞卒ですかぁ~?! んな事あって良いの?! バファアッ! は、鼻血が……。それにしてもウィンちゃんの声って――

「だっだめ、だめだよぉ……あっ、うぐぐ……んん……」

 エロい! ウィンちゃん、悶える声がエロすぎですって! うへへぇ……悪くないお~……じゃない! 駄目だ! 私もウィンちゃんも清純じゃないと!

 私は自我で内なる変態を捻じ抑え込むと、意を決して部屋へと飛び込んだ!

「ウィンディーネを襲う輩! 許せんっ!」

「ふぇ? ぷぷっ! もう我慢でき、あはははっ!」

 ウィンちゃんが私に反応してか、突如笑い始めた。良く見ると、ウィンちゃんの上に乗っかっているのはフィノちゃんで、ウィンちゃんは押さえ付けられて容赦ないくすぐりを受けていたらしい。

「おはよ、木ノ葉ちゃん。今日は良い天気だね」

 くすぐりを続けながら、ウィンちゃんの笑い声を背景にフィノちゃんはあいさつをした。

「あ、うん、おはよー。ところで……何してるの?」

「これ? 寝起きコチョコチョ。一度で良いからやってみたかったんだよ」

 なーんだ、違うのか~! ガッカリだよ~……。いや、何でガッカリしてるの、私は?! ウィンディーネが綺麗で純粋のまんまなら、それはそれで良かったんだよ……まぁ、ちょっと見てみたかったなー、ウィンちゃんのあんな姿……。

 朝からそんなことがあって早起きした。せっかくだから散歩に行くことにしよう。ほら、言うじゃん? 『早起きは三文拾う』的なことわざ。……ん? 三文って何円だ? いや、この世界では金の単位って何? 『ゼニー』ですか? それとも『ゴールド』ですか? 個人的には『フィーユ』が良いな。『フィーユ』っていうのは少女の意味ね。そんな単位だったら……ぐふふ、ふふふふっ、トレッビアンッ! まぁ、金の単位を知るためにも部屋の外へと飛び出さねばならぬのだよ、諸君。さぁさぁ、引きこもりの君も外の世界へと飛翔せよ。外にはまだまだ知らぬ素晴らしき世界が広がっているのだから。

 引きこもり心をぶち破って街へと足を踏み入れる覚悟を決めたヒキニートな主人公。くすぐり飽きたフィノちゃんがどうやら色々案内してくれると引率役を引き受けてくれた。っていうか、未だに私が生徒役ですか?! 地獄のくすぐりから解放されたウィンちゃんはというと、ベッドの上で汗だくになって倒れていた。しばらくは動けそうにないね……。


 朝日に照らされる中、私とフィノちゃんは早朝の街中を行く。天気は清々しい晴天で風は強め。フィノちゃんの朱い長髪が風で揺らめき、煌めいているのをボーッと眺める。私はこの天気が大好きだよ。この何か青春感を味わえるところがさ、良いよね。そしてこんな日には一言、言いたいことがある。

「今日は……風が騒がしいな」

「そうだね、今日の風の風力は5だからね」

 フィノちゃんは厨病ネタを純粋に返す。この世界では私の放つ厨激コメントは問題にされないという……なんて素晴らしき世界だろう! 花束をあげたいくらいだよ。ここならば厨二病なセリフを吐いても職務質問されたりしないんだね! いやリアルだよ、これ……。

 大都市だけあって、早朝にも関わらず街中には人々が行き交っていた。昼頃と比べると少ないけれど、それでもかなりの人口密度になっている。店内をガラス越しに見ても賑わっているし。フィノちゃんは私をどこへ案内してくれるのかな? こことは相反して静かで人けのない場所とかに行って、私と言えないようなことしちゃったりとかないかな? それだったら朝からフルパワーで挑んじゃうよ? 何ラウンドでもやっちゃうよ?

『さぁ、フィノ。私のとこへとおいで』

『だ、だめだよ、木ノ葉ちゃん……そんなこと……』

『人目はない、気にしなくて良いんだ。私がクレバーに抱いてやるから』

「ぐへへへへぇ、そんなだめだよぉ、おほほほおぅ」

 なんて妄想を広げていると、一人の男にぶつかって倒れてしまった。こんな人間砂漠の中でよそ見でもしてたらそうなるか。ぶつかった男は……いや視別年齢的に見て男子って表現だね。その男子はまさに駆け出し勇者たる格好をしている。服は動きやすそうなポリエステル製のシャツで上にジャケットのようなものを着込む。ズボンはおそらくジーンズかな? 両太ももにベルトを巻きつけてホルスターを一つずつ吊り下げていた。あと、赤いマフラーを巻いている。茶髪と緑の瞳を持つ、ちょっとショタ心をくすぐられる可愛げな男子――男の子だった。わふぁ~っ! さすがは異世界、こんな二次元リアリティーを再現してくれるなんてね♪ 今度一緒にお茶でもしましょう、神様さん!

「いってー……しっかりと前見て歩きやがれ、ポンコツ女!」

 ななななっ何て暴力的発言! 略して暴言なの! こんなに可愛らしいのに? こんなにもショタリズムなのに? ←って何だそれ? ……でもちょっと良いかも、このギャップ感。

 私は即刻飛び起きて、

「良いよ! 君! 良いよ、そのキャラ! もっと私を罵ってくださーいっ! HEYカモーン!」

 なんてハスハスしながら、その子の肩を両手でガシって掴んで、所構わず叫び散らす。男の子は青い顔を私から嫌そうに離していた。

「うわぁ……何だ、こいつ? 受身なのかよ? っていうか俺に触んな、気持ちわりぃ!」

 男の子は手を振り払って私の拘束から脱出して見せた。う~む……年頃の男の子は厄介だね。そう簡単には堕ちてくれないか~。ならば――

「どうかな? 君、これを貸すから勉強してみると良いぞ?」

 どこか博士風に、ない口髭を撫でながら、私は一冊の薄い本を手渡した。どこから取り出したかっだって? ふふ~ん♪ 私をなめてもらっちゃー困るなー。毎日常時バッグの奥底に潜ませて、所構わず好読している私なんだぞ? いつでも精神処理には惜しみないよ♪

「こいつは……何? 俺に読めっていうのか?」

 まるで生ゴミをつまむように私の本をつまんで、疑心暗鬼に尋ねてくる。ゴミみたいな私でも、本はしっかりと良質を選ぶ私だよ? これでも中学生の頃は文学少女だと呼ばれたくらい。レポートをまとめて提出した際、

「さて、それぞれレポートの方の発表をよろしく。テーマは植物。机順に狐火木ノ葉、お前からだ」

「はい! 植物、それはツル。ツルは時に優しく、時に厳しく、そして儚いものなのさ。伸び続け、絡み合って……え?悪くないよ?! そんな絡んできちゃダメだよぉ。くい込んじゃう、だめぇ……きついよぉ、そんなに絡んじゃったら――(割愛)」

「……あ、あ、そうですか。はい、良く分かりました。またちょっと変わった着眼点ですね」

 なんて、先生が言葉も出ないくらいの実力さ。まぁ、ちょっと本気だしちゃったかな? そんな私の選ぶ本に悪いものはない! なんせ、この素晴らしき着眼点と観察能力、そして――

「クズみたいな思考回路だな、おい……」

 引いとる! まるで湿度80パーセントの狭苦しい暗い空間の中、ゴミに群がるウジ虫とゴキブリ、その中に混ざり合う腐臭とヌメリとした粘液状の紫色の食べ物だったもの、蔓延る細菌とカビの染色、そんな汚らしい中でのホモたちの交じり合いを見ているような、とても人間とは思えない瞳! 一言で、

「死んだ魚のような目!」

 をした男の子。ちょっと失礼な! この本はゴミじゃないよ?! むしろ、神だよ?! どーせなら当作者様にアクロバット土下座したいくらいなのに!

「ゴミじゃなくて紙っていうのは見て取れるが?」

 また心を読まれたぁ~?! 異世界の住民って皆テレパシーとか使えるの?!

「まぁまぁ、読めば分かるよ、その本の凄みとかね♪」

 ウインクしてそう伝える。この時点でぶつかった事はどっかいってしまって、もはや別の内容になってるけど、そんなの気にしない。それよりも! 今はこの子をどう調理しようかなって幸せな妄想にふけるのが大事なんだから、いらない邪魔者をここで登場させないでよね! って誰向けの言葉だよ? ←作者へ向けてかい? 僕かい?

 男の子はとりあえずと一ページ目を開き、そして――

「ブファッ!」

 なんて鼻血の大噴火を見せて倒れてしまった! えっ?! そんなに弱いのこの子?! 二次元でしか見ないような氏に方だよ?! その量をリアルで再現しちゃったら貧血どころか出血多量でリアルに死ぬよ?! あ、でももし死んじゃったら私のものにしてもいい? うふふ、ずっとずっと綺麗なままで保管してあげ――

「何を見せたのさ、狐火ちゃん?!」

「え? えへへ……女の子と女の子の……お遊戯会みたいな?」

 かなり表現を抑えての説明になります。どーんな事が書かれてるのか具体的に知りたい方は私の開設したサイト『ハッピートリガー狙い撃ち速報』を見てね♪ この期に及んで宣伝惜しみないよ~! ちなみにどんなサイトかって言うとぉ~、それはね――(作者:長いので割愛)

 完全に逝ってしまった失神状態の彼を背負い、私とフィノちゃんは一度家に戻ることに。こうなったのは私の責任だから、看病するのも私の役目だよね? 必要な事があればしっかりと用意するよ。もし必要であれば、あんな事やこんな事もぉ~おほっ! ちょっと興奮してきた! 私も倒れそうですけど?! その時は可愛い幼女に看病をお願いします! できればナース姿で! いや、必ずその姿で。嫌なら私が着させてあげるから、ほらこっちへおいで。服を脱がせてあげるよぉ~、じゅるり。いやぁ、何か暑くなってきたぁ! 私も脱ごっかなぁ?!

 まぁ、そんな汚望は叶うわけもなく、フィノちゃんがあっという間に彼の鼻の処置を終えた。今は安らかな表情でソファーの上で眠っている。一定間隔で聞こえてくる静かな寝息……うっ、触れたい……この穢れなき男の子の艶やかな白い肌を舐めてみたいとか思ってる私……理性が負けそう……。

 私が男の子の寝顔にハスハスしている中、フィノちゃんはウィンディーネを呼んでくると部屋の外へ。私とこの子の二人だけの空間。ふふふ……じゃあ何しようかな~、うへへぇ。なんて気味悪い指の動かし方で男の子へと這い寄ると、

「うっ……うぅ……」

 男の子がうなされてるのに気づいて手が止まった。熱にうかされるように火照った顔には汗が滲み出ている。苦しそうな顔で呻いていた。

「どどどどっどうかしたの?! 熱っ?! もしかして私が近寄ったからですか?! クンクン……いや菌の匂いはしていない(作者:お前、嗅覚で判断できるのか?)。昨日だって体はしっかりと洗ったつもりだよ! 体表中の必要だろう菌類まで殺菌したレベルに全身を清浄化したはずだよ?! 増して言うなら聖浄化ですよっ?! 神聖になったんだよ? 神聖なるこの私の体で熱にかかるなどと、随分と舐められたものですね、この私も。君は一体何者かね? この私に向かって――」

「……ご、ごめん……僕の、せい、だよぉ……」

 一人暴走する中、男の子の口からこぼれたうわ言に、神聖なる私の口が止まった。この子……ちょっと可哀想かも……。一体、どんな悪夢にうなされてるんだろうか? 主語が『俺』から『僕』に変わっちゃうぐらい衝撃的な夢なのかな? あの傲慢な性格のこの子が自分のせいだって自己を咎めるくらいになるまで悲しく切ない物語かな~? 私も良く夢を見るけど基本は幼女や美女とのあんなことやこんなことをですねぇ、えへへ。とにかく……どぅふふふふふ……そんなことしちゃって良いの? 頼まれちゃ仕方ないな~、私が激しく攻めるタイプだけど覚悟は良いかい?

 と、いつの間にか男の子をほっておいて暴走モードに入っていた脳内欲情ガールは、フィノとウィンディーネの二人が部屋に入ってきたので自我を取り戻す。ウィンちゃんがぐったりしていてちょっとかわいい……。

「は、話、は……聞きましたよ。その子は私に……任せて、ください……」

 ふらつきながら、ウィンちゃんは男の子の脇へ。いや、大丈夫? ウィンちゃんは男の子の眼前へと手を構える。

「……オーラティオ」

 何か呟いたかと思うと、男の子の身体が輝きだし、意識を取り戻した! も、もしかして、これは魔法?! 魔法きたぁあああああーっ! だよねぇ! あるよね! じゃなきゃ異世界に飛んだ意味がないもんね! 異世界=魔法だもんね! マジカルだよね! マジカルでシャイニングでスペシャリーなんだもんね?! 何言ってるの、私?

「ん……ここは、一体……?」

 まさに在り来りな二次元的反応で目覚めた男の子に、ウィンちゃんは声をかける。

「こんにちは、私はウィンディーネと言います。お友達がご迷惑をおかけしました、ご、ごめんなさいですぅ……」

 ウィンちゃんがペコリと頭を下げ、男の子は揺らめく青髪を呆然と見つめていた。まるで意識だけが飛ばされたみたいな……。

「あ……あの別に……大丈夫です! ありがとうございましたぁっ!」

「ってあれ? まだ頬が赤いですね? 熱が引いてないんでしょうか?」

 ウィンちゃんは熱を確認するために男の子の額に手を付ける。

「あわぁ、あわ……わわっ……」

 みるみる内に顔は赤みを増していく。

「たったた大変です! ものすごい高熱です! どうしましょう?!」

「ぁはは……薬草とかないの、ウィンちゃん? RPGでは必須アイテムだよ?」

「ご、ごめんなさいです! 持ってないんで……ぐすっぐすっ……」

 うわぁぁっぁっ! ななぁ何で泣くの?! 私が悪いの? ごめんね、ウィンちゃん! 別に必須アイテムだなんて決まったわけじゃないもんね?! RPGでノーダメージクリアしてる人いるしね! ウィンちゃんは強いから回復なんて必要ないんだよね?! ノーヒール・ハイパワーなんだよね?!

 そんなことあって、私たち一行は熱を治す薬草を取りに行くことになった。

 ちなみに、僕はRPGで回復系を使わず溜めるタイプで、ラスボス戦で全消費するタイプです。ふっ、この僕にかかればそこらの魔獣などただの雑魚さ。相手するだけ時間の無駄無駄。

↑この人、現実では『逃げるが勝ち』の臆病者形質ですから。


 そんな臆病者は、異世界転移して勇者になることを夢見て現実世界から目を背けた。さて、始めようか。VRMMOの素晴らしさを全世界に知らしめる如く、我が身を持って実験台となろうではないか! さぁ、僕にVRMMOを献上しておくれぇぇぇ(悲願)。

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