第6話『焔液流動警報発令』
押しつ押されつの大激戦を繰り広げた私とフィノちゃん(作者:いや、盛ってるでしょ?)。かなりの激戦だったでしょう? あそこで油断さえしてなければ確実に勝利は私の手の中だったね。そして、敗者であるフィノちゃんには私の前で頭を垂れ、
『フォッフォッフォッ! 面を上げい、フィノ。ワシが少しばかし強すぎただけじゃよ。だが、敗者なのだから、私に服従してくれるのだね? まず手始めに私のマッサージ――いや、私とマッサージをしようか?』
そして私とフィノちゃんの二人でホッカホカな熱帯夜を過ごすはずだったのになーっ! 叶わぬ願いであったか、狐火よ……。結果、フィノちゃんに惨敗して苦汁を舐めた私は、フィノちゃんから良質な長筆をタダでもらった。
「えっ?! 良いの? フィノちゃん、金稼ぐために店やってるんでしょ? 商人は金に強欲なのに、こんな良い筆もらっちゃっても良いの?」
「あはっ! 少なくとも私は狐火ちゃんよりは無欲だよ。だってさ、狐火ちゃんはウィンディーネの仲間でしょ? それなら良いんだよ、遠慮しなくてさ。がめついのが狐火ちゃんの特色でしょ?」
「そんな露骨な性格してないけどぉっ?!」
「逆にタダじゃなくて半額とかが良かった?」
「あ、お金ないから前者で」
そんな訳あってタダになった。いや、嬉しいよ? 嬉しいけどさ……なーんかがめついのが証明された気がするよ。
私がもらった長筆は長さ170センチ弱、柄は茶褐色の木材で作られ、先端の筆毛は光を美しく反射させる白銀の獣毛使用。実にお高そうな筆だった。そして……とっても素晴らしい筆だぁぁぁぁぁーっ! この毛をモフモフすると、まるで美女の柔らかで艶かしい長髪に触れてる感覚が味わえるんだよねぇ~! あははっ! くすぐったいってば雪ちゃん! あっ、雪ちゃんっていうのは、筆毛が雪のように白いからだよ。あはっ! あっはははっ! 幸せだぁ~っ!
「何してるんですか、狐火さん?」
はっ! わ、忘れてた! 隣にウィンちゃんいるんだった!
「う、ううん、何でもないお」
と、筆から顔を離して冷静に。長筆は背中の専用ベルトに収める。ずっしりとした筆の重みを背なかでヒシヒシと感じ取る。んー、そうだなー……ざっと1tほどかな、ドヤッ!
「そんなわけないじゃないですか」
はっ! また心の声がぁ!
今、私とウィンディーネはギルドへと向かっている最中。どうやらやるべきことというものがあるらしく、ウィンディーネと共に行動している。やるべきことねぇ~……武器を手にしたということは――
「ついにクエストに出るってことだね! よっしゃーっ! 熱くなってきたぜぇ! 早速魔王城へ直行だ!」
「そうですね、狐火さんの初回クエストは採集です」
「へぇ? 採集?」
「はい、今の狐火さんは何もありません。まずは採集でアイテムを集めましょう」
採集……RPGだと即刻バトルするから採集なんてしたことないや。でもそもそも、私は攻撃猛進タイプだから平和なクエストなんて器に合わんな。もっと私を熱くさせるクエストはないのか?! もっと私の胸を焦がしてくれ! でなければ、ギルドなんて無用の長物!
とかなんとかほざく私の心を読んだウィンちゃんは、私の手を取って無理やりギルドへと駆け出した。採集は浮かないけど、ウィンちゃんと手を取って一緒に走っているこの瞬間はとても楽しくて幸せだった。
「全く不幸だよ私たちはさぁ~っ!」
ギルド内で開口一番、私の悲痛の叫びが響き、いくつかのパーティーどもが一斉に私へと振り向いた。うわっ、ハズい。実は今、焔液流動警報が発令されてしまい、これより一切のクエスト受注を断るとのことだった。さっきまで発令なんてされてなかったのにぃ~。神は私の足を引き止めたいわけかね、んん? 勝手に異世界飛ばしておいてそれはないんじゃないかな? 神は私に主人公を命じたのでしょう? だったら、事早く私を英雄にさせてくれないものかなー? そうなれば栄光たる私の甘美にすがり付く雌豚――ゴホンッ! 子猫ちゃんたちを私の思い通りにぃ、いひひひ……。あぁ、ちなみに、焔液流動警報というのは、地球でいう『マグマ』が地上に漏れ出して地面を焼き上げているため、危険だから近づくなという警報。地球じゃないから納得しようじゃないの。マグマが地上で暴れ回るのも普通なんでしょね! はいはいっ!
「まぁまぁ、落胆しないでください。もしも少し早めにクエストに出ていたら、今頃私たちは二人揃って液状死を迎えていたんですよ?」
液状死? マグマで全身ドロドロに溶けて死ぬことかな? ウィンディーネと二人で、か……わ、悪くないかも? いや、悪いんだよ、私! 正気を保って! 仮にウィンちゃんと二人だとして、液状死が幸せかって考えて、絶対に苦痛に身を悶えるだけだよ? そんなのバッドエンドの何でもないんだから! だったらウィンちゃんと二人で幸せな家計を築く! それこそがハッピーエンドなんだよ! そう、それこそが私の夢だから!
「これは臭うな」
背後から男性の声。いつの間にか私の師匠らしい人物が立っていた。死神ですかっ?! ってか、心の声読まれた?! 待って、これには色々な複雑な経緯があってね?
「この時期に焔液流動警報が起こるはずがない。これは何か一枚噛んでるかもな」
考え過ぎではありませんか? ちょっと期待してませんか? 何かやらかそうとしてませんか?!
「俺はちょいとダンジョン四階層探索に行ってこないといけなくなった。ウィンディーネ、引き続き狐火の引率を頼む」
「もちろんです!」
「いや、何で私の方が子供扱い?! どちらかというとウィンちゃんの方が引率される側でしょ?!」
「お前みたいなのがウィンディーネを引率したら、何しでかすか分からないからな」
ご名答――だけども! これじゃあ私の威厳というものが――
「あるわけないだろ」
即答ですかっ?! 自分の弟子に――いや、確かに中身は私、狐火木ノ葉ですけど、一応は弟子だった人の身体だよ?! そんな非情な言葉が良く出るよね! って言うかーっ! あんたら心の声を読みすぎなんだよぉーっ! 何か、そういうスキルでも持っているんですか?! 波動『侵攻する恥ずべき内心』とかいうスキルでも使ってたりしますか?! ちょっと私にも教えて欲しいんだけど! 百円あげるから教えてくれないかなぁ?! それができれば、あの子のあんなことやこんなことの内が毎日盗み聞きぃっ! ドゥフフッ! そんなスキルが使えるなんて……良いなー、二人共!
「んんっ? ちょっと待って……師匠、ひょっとして強いの? ダンジョン四階層ってことは……」
「外見はまさしく弟子なのに、師匠ってお前から言われると違和感しか湧かないな。少なくとも、狐火木ノ葉とウィンディーネ二人分の強さは凌駕できるつもりだ。試してみるか?」
「「いえ、結構ですっ!」」
私とウィンちゃんは手を前に突き出し、即刻拒絶する。多分、断る理由は全く違うんだろうけど……ウィンちゃんとハモれるって嬉しいことだね。じわりと染み出る歓喜の余韻に賢者タイムだよ。
「そうだな、狐火が俺に勝てるようになったら、その時はお前の願望でも聞き入れてやろう、できる範囲内でな」
「じゃあ、ウィンちゃん一つでーっ!」
挙手宣言。脇にいるウィンディーネは顔を赤らめて、
「そんなこと無理に決まって――」
「良いだろう」
「何でですか?!」
そうと決まれば猛特訓して最強になんないとぉっ! うぉあ~っ! 燃えてきたぁっ! いや、違うな……。萌えてきたぁ~っ!
「すごく引率したくないですぅ……」
深い蒼色の空が広がる草原。太陽が地平線へと沈みきったばかりで西の空はまだ少し明るい。冷ややかな夜風が吹き乱れ、緑の海に波状の模様を刻みながら流れていく。その荒草原を一人の男が歩いていた。
頭には日よけ兼防寒用の黒いターバンを巻き、首にも同色のマフラーをつけている。
黒コートを羽織って、その下には動きやすくも防御力の高いハンティング専用ウェアを着ていた。ハンティング専用ウェアとは、至る所にポケットやチェーンが取り付けられ、アイテムを多様する狩人にはうってつけの装備。軽量でたくさんのものを取り付けられると、評判はそれなりに良い。男の着るハンティングウェアは他と同じく黒色をしている。背中も黒のリュックを背負い、その外見は旅人そのもの。ただ、全てを黒に統一している姿は異様。
黒づくめの男は今、ギルドに申請して調査許可の元、この草原の探索をしている。現在は焔液流動警報発令中であり、この荒草原にいるのは、警報以前のクエスト受注者とこの男だけ。彼は焔液流動の原因を突き止めるために調査をしているところだった。
そして彼は、その草原である流出ポイントを見つけ出した。
相手の心の内を読み明かすことのできる能力、あったら欲しいですね。
ちなみに、星野夜は『時間を止める能力』か『年齢を自在に操作できる能力』か『創造の能力』が欲しいですね。これらの能力は該当するアニメ作品があります。
とにかく厨二病な能力、欲しいですよね? 例えば『闇の炎』が出るだけの能力とか。




