第5話『桜火炎乱』
すいません、先週投稿できませんでした。
「負けたぁ~っ! 何であんなに強いんだよぉ~っ!」
フィノの部屋に置かれたソファーの上で、私はバタバタ両腕足をバタつかせて悔しさに悶えていた。
「まぁー初めてにしては良くできた方だよ?」
と、ソファーの背に座って、笑顔でそう言ったフィノちゃん。
「フィノちゃんに言われたら皮肉にしか聞こえないんですけど?!」
「あはは! でも自分にもっと自信を持ちなよ。自意識過剰が狐火ちゃんの売りでしょ?」
「慰めたいのか罵倒したいのか、どっちなのっ?!」
――数分前――
「ここからが私の世界だよ!」
私は長筆をフィノちゃんへ向けて、ドヤッとした顔でそう宣言。これから惨敗するのも知らずに……うわぁーハズいわこの人……。
「おいでよ。君の世界で私を塗り替えてみせて」
フィノちゃんはやっぱり無防備で何も武器を持つ様子はなし。先ほどまで立ち読みしてた本はなぜか、隅のソファーに座るウィンディーネの手元にあった。それをウィンディーネは興味深げに読み老けている。ちょっと! 私の活躍を見ててよ! っていつの間に……魔法か? フィノちゃんは魔力強化しているからパワーが強いんじゃ?! ふふふふっ……そーだったんだー♪ それさえ分かれば――
「燃え盛れ、赤き焔!」
私はそう叫び、そして妄想世界へと意識を沈ませる。過去、中学時代に理科の授業にて、空き缶を使用して米を炊く実験の際に、屋外の強風で火が消えてしまうために、非常階段の陰で点火し落ち葉を燃やしていたのだが、その後に火種さんが張り切りすぎて巨大化し、非常階段に引火して危うく火事を引き起こしそうになった記憶を思い出し、苦い顔になった。だけど、成果は出た。長筆の筆毛の色が変化し、真紅色になった! それは炎をイメージした私の意識の具現化。やったぁーっ、ついに厨二病を克服したんだぁーっ! これで今日から『厨二病は消えろ、生きる価値なし』だなんてコメされなくなるぅ~っ! ……悲しい現実である。
「名付けて『幻想色彩』だよ!」
「へぇ~、狐火ちゃんは筆色変化なんだね~。おもしろくなってきたぁ~♪」
フィノちゃんは明る様にバタバタと腕を振り回して興奮しているようだった。ブフッ! ……や、やばい、純粋過ぎる可愛い反応にキュン死しちゃう……。脳内の私が鼻血を吹き出して、殺人現場の死体のごとく完璧に倒れちゃってるよぉ~。ゴプッ……ダ、ダメだ……集中しないと……。
「行くよ、フィノちゃん!」
「返り討ちにしてあげる!」
私は快活に雄叫び上げて、真紅色の長筆を振り上げ突撃する。フィノちゃんは身軽な状態で疾走。そしてウィンディーネは本を読む――おいっ!
「くらって! 『幻想色彩・夕景』」
長筆を大きく横に薙ぎ払う攻撃だったが、フィノちゃんは大跳躍、いとも容易く回避されてしまう。そうじゃなきゃ、おもしろくない! もっともっと私を興奮させてよ! 噴煙を纏う火柱のように猛烈にさ!
「ん~とぉー……それが本気?」
勝ち誇ったようなフィノちゃんの笑みが私は見下す。ふと、頬を撫でる暖かい風に気づいたフィノちゃん。その直後、長筆の薙ぎ払った軌道に沿って、灼熱の炎が咲いた。それはまるで噴火口から巻き上がる炎柱のように鮮やかに、そして壊滅的に。一瞬にして世界が真紅に染まった。爆煙によって視界が遮られる。……どうよ?! 自分でもどうなるかは想像つかなかったけど、想像以上の成果を上げたよ! 大金星を私にくれて良いぐらいの攻撃だったよね?!
「あちちっ……ふぅい~、危ない危ない。反応が少し遅れてたら丸焦げになってたよ~♪」
その声はフィノちゃん。さも何でもなさそうに呟き、黒煙を割いて飛び出してきた! その身体には焦げ痕一つもない。迅速なフィノちゃんの跳躍、油断していた私の手から長筆を奪い取って部屋の隅に着地した。
「はい、おしまい! 合格点だよ、木ノ葉ちゃん!」
というわけで、いとも容易く単純に負けてしまった私でした。……くそーっ! 主人公なのに、勇者なのに、そして何よりこんなにもパーフェクトなヒューマンなのに! 何で物事が良い方向に進まないのかな、もー。もしかして私は主人公じゃなく、私以外に誰かいるってわけ?! 私以外主人公じゃないよ! もっともっと強くなんないと! 御役御免じゃ終われない! だって私は――
「主人公になりたいからぁっ!」
うぉ~っ! やってやるぞぉ~っ! と、ソファーの上で先ほどまで悔しがっていた私が突如、闘志をメラメラ燃やし始めちゃったわけであって、それを見てたフィノちゃんがビクッと震えた。私の感情がリンクしたらしく、壁に立てかけてあった長筆が再び真紅色に変色し、地面を燃やし始めた! いかんいかん! 冷静になれ、私! まだ筆を制御しきれてないんだ。……まだ制御できてないんだ……。で、落ち込む。情緒不安定か、私?
前話であれだけ張り切ってた主人公、狐火木ノ葉を今回一番最初で叩き落としました。しょっぱなからのネタバレという結果張りな話でした。
今回でフィノちゃんがどれほど強いキャラかを知っていただければ良いです。彼女は手ぶらでしたが、当然武器を持ってはおります。まぁ、それは後々の話ですね。
私は狐火木ノ葉の技名を考えた時、我ながら厨二チックな名前に一人ニヤニヤしておりました。彼女と全くおんなじ思考していますね、私は。さてと、あの筆でどれだけ厨病激発できるか、楽しみだ。ふふふふふふふふふ……。




