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ワシントン40

「あの、私は日本の議員ではありません。議員の實小路さんの書生です。」

カーネギーもロックフェラーも驚いた様に文治を見た。

「7名の方々は、議員なのですが、私だけは違うのです。」

ロックフェラー、カーネギー、フランク、そして二コラは、言葉を無くした。


「凄いじゃないか。即ち、君は議員の歴々と対等の技量や知識、判断力を持っているという事になる。」

黙って聞いてきたマーベルが感想を口にした。


「そうじゃろう。我々は、誰一人として文治君を目下に考えた事は無い。むしろ、我々が彼に学ぶ事の方が多いのだ。」

實小路は同行させる事を決めた時に判断した内容を改めて口にした。

「そうだな。文治君が居た事で、今回の旅行で為すべき事が、事前に判断できたし、我々が議論すべき項目の絞り込みが容易になっている。

誰もが当たり前に理解している事の、その向こうを話し合う事ができるんもだよ。」

藤神も文治の存在を重要に考えている事を告げた。

他の5人の議員も同意して頷いた。


「あの、少々買いかぶり過ぎです。

私は、興味の有る事が気になって、知りたくて、尋ねているだけです。あまり経験の無い事については、御迷惑とは思っていますが、細かくお尋ねする事が少なくありません。それが、皆さんが気付かなかった事だった事が有るだけです。

未だ、17年しか生きていませんので、知らない事が多いのです。」

文治は、議員達が持ち上げすぎている事に謙遜をした。


「何、君は未だ10代か。儂の孫と変わらないな。儂の孫が、後3年で、君のような人物に育つとは考えられない。」

カーネギーは、再び、驚いて見せた。

「あっ、再来月には、18になります。もう成人です。」

文治は、とぼけた様な事を言った。


「文治さんといい、昨日のエミーといい、實小路、君の周りの者には、どんな環境が有るのか興味が湧くぞ。」

ロックフェラーは、昨日の恵美子を思い出しながら、實小路の顔を見た。

「さあて、何なのだろう。

文治君は、偶然知り合いになっただけだ。恵美子は、大人の中で育ってきているからだと言えるがな。」

實小路は、笑いながら答えた。


「えっ、恵美子ちゃんは、ロックフェラー殿と会ったのですか。」

神崎は、昨日、實小路と藤神が恵美子と会った事は聞いていたし、實小路達がロックフェラーと会った事は聞いていたが、その二つが同時に進行していたとは考えていなかった様である。


「うん。彼女には辛辣な指摘をされたよ。儲かって金が貯まったから慈善活動をしているのだろう、慈善活動をする為に金を蓄えたのでは無いのだなと。」

ロックフェラーは、恵美子と面会し、最も印象に残った事を口にした。

その言葉を受けて、日本人は皆、文治を見た。


「面白いな。文治君は、慈善活動を行っている訳では無いが、貧しい者や子女に対して勉強をする機会を与える為に、金儲けをさせる努力を惜しまない。恵美子も、それと同じ様な事を言っているのだな。」

佐々は、文治と恵美子が同じ方向を向いていると判断している。即ち、恵美子の親である正太郎や明菜も同じなのだと。


「そうですか、恵美子ちゃんが、そんな事を言っていましたか。」

文治も、恵美子の発言が、ロックフェラーに強い印象を与えた事を知った。

「私は、慈善活動というものの中味を知りませんので、何とも言えません。

ただ、私の行動を判断する基準というのは、今、佐々さんが言われた様に、全ての人が、学ぶ機会と学び方を与えられるべきだということです。

今と今後に在る課題を解決するには、日頃の学びが欠かせないと考えています。学ぼうとする意欲が有れば、今を打開する切っ掛けにもつながるのです。

そうすれば、貧しくても不幸にはならずに済みます。人は、不幸で無ければ、周りに気を配る事ができます。そうすると、地域が、そして、国が不幸ではなくなると考えています。」


「なんだか哲学の様だな。俺には、良く分からん。」

二コラが、追い付いていけないと、両手を上げた。

「要するに、貧しくとも学べ。学ぶ機会を作ってやろうじゃないか。と、言う事だ。」

藤神は、文治の言葉を要約してみせた。

「そうだな。金の有る者は、その機会を作る義務が有ると、エミーは言うのだよ。」

ロックフェラーは負うた子に教えられたと苦笑いをした。


それからは、初見の者同士だったので重かった口が、酒が進んだ事もあって、打ち解けた話となっていった。


議員達は、ロックフェラーを始めとして、カーネギー、ベル社のマーベル、エジソン社の二人と話し、貧しい国の日本に、学ばせる機会を与えて欲しいと依頼し、全員に承諾させた。


ロックフェラーも、カーネギーも、マーベルも後から考えると不思議な体験だった。

普段ならば、酔っていても仕事の話では、予防線を張って、腹の探り合いをして、上辺の笑顔で知人を装う。だが、この場では、思っている事、考えている事を口にしてしまっていて、それが、感心・感嘆の声に後押しされ、気持ちが良かった。


「ほう、そうですか。凄い考えですな。それで、これから、どの様な事をする計画なのですかな。」

日本人達は、同じ様な対応で、ロックフェラー、カーネギー、マーベルに接し、彼等の自慢話を引き出していた。


宴も終わりに近付いた頃、文治は、約束を取り付けた内容を訊いて回り集約していった。


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