16日目、おしえて。
今日も寒気がしない。
「なんだよ……それ……。」
気が付くと前のめりになって友人に迫っていた。
友人は笑顔のまま驚いて後ろに仰け反っていた。
少し空気を肺に送り込んで落ち着かせた。
やはり友人の言う通り、追いつめられているのかもしれない。
温まった椅子にまた腰を掛けた。
「これだよ、こ、れ。」
友人は手を下に隠してからスマホを取り出した。
そして顔の前に突き出してフリフリとする。
え、のぞきみさんの連絡先知ってるのか……?
「ジゼルと交換しておいたんだー。」
フンフーンと鼻歌を歌いながらスマホを起動させ、すさまじい勢いでタップする。
そして右耳にスマホを当てる。
その顔は少し得意げだった。
「あ、もしもし、ジゼル?」
もぞもぞとスマホの向こう側から声が聞こえる。
「のぞみさんのことなんだけどさ、」
またもぞもぞと聞こえる。
友人はうん、うん、とスマホ越しに頷いて見せる。
「え?うん、わかった。」
友人は首をかしげながらスマホをこちらに差し出す。
自分は少し顎を出して返事を返す。
すると、空っぽの手の人差し指で何度か耳をトントンとした。
なんどか頷いて承諾をする。
スマホを受け取って耳に当てる。
「……もしもし。」
友人と目が合い、なんか気まずかったから目をそらした。
その先には子ども達がケンカしているのが見えた。
騒がしい中、優しい声が耳を撫でる。
『宙さん……?話がありますので……。これからどこかで待ち合わせしませんか……?』
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「こんにちは……。」
ジゼルが軽く一礼した。
釣られて一礼をする。
「で、話の前に。」
辺りを見回す。
ジゼルが指定した場所。
「ここの豪邸に住んでるの?」
信じがたいがジゼルの家らしい。
執事がいる地点でおかしい。
日本じゃないな、ここ。
「ええ……。そうですわ……。」
両手の指を交互に挟み、口元に持っていき首を少し傾ける。
しぐさの一つ一つから感じていたが、本当にお嬢様だったとは……。
紅茶を3つのカップに注ぎ、2つ差し出した。
「さて……。本題に入りますわ……。」
紅茶で口を潤してからコホンと咳払いをした。
そしてクッキーの乗った皿を3cm程こちらの方に押し出した。
長くなるのかな。
「クリスティーナについてです……。」
真剣な眼差しで目を合わせてくる。
思わずそらしそうになったが、本人はいたってまじめだ。
のぞきみさんのことをなぜかクリスティーナとジゼルは呼んでいる。
「最近見かけないんだけど。」
ジゼルはカップを置き、両手を膝に添える。
そして呼吸を整え目を見据える。
「あなたのせいですよ……。ある意味では……。」
は?
自分のせい?
なんかした?
思い当たる節がまったくない……。
「先日、私にこんなことを話されました……。」
今日も寒気がしない。
「お前、一言もしゃべんないのな。」
「なんかこういうとこだと緊張しちゃってしゃべれないんだよー。」