13日目、たいけつ。
今日も寒気がする。
前回から何故かUFOキャッチャー対決をやる流れになってしまった。
けど、のぞきみさんもなんかやる気あるし、頑張ってやるか。
「今回はこの台で対決しまーす!」
友人が指差した台は、ぬいぐるみが横たわっていて出口の穴から少しはみ出している台だ。
一見するとすぐに取れそうだが、どうだろう。
「じゃあ、じゃんけんで先攻後攻決めるよ。」
友人がグーを前に出し、待っている。
のぞきみさんはチョイチョイと肩を突っつく。
自分がやれと。
はいはい、とグーを前に突き出す。
「じゃーんけーんぽんっ」
友人はパーで自分がグーだった。
友人は体全体で喜びを表現している。
甘いぞ。
こういうのは後攻が有利なんだ。
「じゃあいっきまーす。」
友人は100円を勢いよく入れた。
すると下の方から100円が出てきた。
「あれ。」
うわー、よくあるヤツ。
その100円絶対通らないぞ。
「ちょ。」
取り出し口から取り出してまた入れなおす。
また下から出てくる。
「わ。」
取り出し口から取り出してまた入れなおす。
また下から出てくる。
「ほっ。」
取り出し口から取り出して
「諦めろ。」
「うん。そうする。」
しょぼんと肩をすぼめる。
おとなしく100円を入れなおす。
ようやく反応し、ボタンを押し始める。
「こういう台は持ち上げるのが一番だろ!」
ちょうどぬいぐるみの中心を持ち上げるところにアームが下りた。
おおお、とどよめきが起きる。
「これきたっしょ、絶対。」
アームが閉じる。
そして徐々に上に上がる。
ぬいぐるみは気だるげに持ち上がりそうになる。
「よっしゃ、まじか!」
いや、甘い。
アームが緩く、完全に持ち上がる前に落ちた。
「あーーーーーーーーーーーー!」
一同残念な声を上げる。
やはりな。こういう台は取り方がある。
「じゃあ、次行く。」
100円を入れ、友人をどける。
こういうものの取り方。
それは”押し”だ。
アームでぬいぐるみを押して落とす。
これしかないだろう。
「ここかな。」
左のアームがぬいぐるみのはみ出てる部分に当たる。
そのままぐいっと下に下がる。
ぬいぐるみもそれに引っ掛かって穴とアームに挟まる。
「うわあああああ」
友人チームから悲鳴があがる。
もうこれは貰った。
と思ったら、アームが上がると同時にぬいぐるみも元あった場所に戻った。
「あああ。」
押しによくあるヤツだ。
もしかしたら行けるかもと思ったが、押しは大体最後の最後に使う技だ。
「残念だったねー、そらくーん。」
友人は肩に手をまわしてポンポンと叩く。
その手を払いのけて場所をジゼルに譲る。
「それでは……。いきますわ……。」
さあ、お手並み拝見。
100円を優雅に入れ、ボタンを押す。
コース的には友人と一緒だ。
これは初心者か……?
「ここですわ……。」
アームがどんどん下がっていく。
やはり友人と一緒のコースに見えるが。
アームが閉じ、どんどん上がっていく。
そして一同驚愕。
「なんで持ち上がるの!?」
ぬいぐるみが徐々に持ち上がっていく。
なるほど、これは。
”タグ引っ掛け”
ぬいぐるみに着いているタグにアームを引っ掛ける技だ。
うまくいかないと持ち上がらないのだが、ジゼル、やるな。
これでジゼルチームが勝ったわけだが。
のぞきみさんはジゼルが抱っこしているぬいぐるみを見ながら不満げな顔をしている。
「のぞみさんもやるか。」
友人が珍しく気をまわし、店員を呼びぬいぐるみをまた用意してもらう。
のぞきみさんは目を輝かせた。
キュキュキュ
『やるやる!!』
100円を入れ、少し考える。
左から、右から観察をする。
そしてボタンを押す。
そこは……?
「え……何もないところだよ……?」
思わず声を漏らす。
キュキュキュ
『まあ、見てて。』
アームは徐々に下がっていき、閉じる。
そして持ち上がる。
「これは……?」
徐々に土台自体が持ち上がっていく。
そしてドン、と落ち、その反動でぬいぐるみが穴に落ちた。
キュキュキュ
『ほらね!』
……。
「それ、ダメなやつ。」
店員に見つかったら即退場級の技だ。
のぞきみさんは知らんぷりしてぬいぐるみを取り出す。
それと同時。店員がのぞきみさんを抱えて外に追い出した。
あ。
キュキュキュ
『あああああ』
これはのぞきみさんが悪い。
……今日も寒気がする。
「もうちょっとゲーセン回る?」
キュキュキュ
『ちょっと!ちょっと!』