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副会長の恋愛迷走日誌  作者: 回めぐる
会計の恋愛逃走日誌
12/22

番外編、遊佐視点で烏谷×遊佐です。

チャラ男会計受け、もしくは偽チャラ男会計受けって可愛いと思いませんか。

 今やこの学園では誰も知らない事実だけれど、


「先日の、会長親衛隊隊長白石の暴動事件で共犯として謹慎を受けていた烏谷からすたにじんくんが、今日から復帰しました。僕は烏谷くんには酷い目に遭わされてシバき倒したい……こほん、失礼。烏谷くんにはとっても更生してもらいたいと思いまして、これを機に一ヶ月間、僕たちと一緒に生徒会活動に参加してもらうことにしました」


 ーー俺とあいつは、幼馴染だ。

 駿河するがかなめ副会長が長々と前置きをすると、彼の後ろに隠れていたあいつがひょっこりと顔を出した。

 濡羽色の艶やかな黒髪、ジャラジャラとつけられた軽薄そうなシルバーアクセ、真っ赤なピアス。名前の通りカラスのように鋭い目をした、あいつ。


「つうわけで、烏谷迅でーす。一ヶ月間よろしくね?あ、俺の教育係はカナメちゃんがいいなー?」

「却下します。言い忘れましたが、烏谷くんは僕から半径一メートルは離れてくださいね。変態が移ります」

「うわ、ひでえな。俺の何処が変態なわけ?」

「白石隊長の嫉妬に歪む顔を楽しみたいがために先の事件に協力した愉快犯でしょう、貴方は。上から下までまごうことなく変態です」


 ニヤニヤと笑いながら副会長にベタベタする烏谷と、それを冷たく引き剥がす副会長。

 ちらりと横を見ると、九藤くどう会長は面白くなさそうにその様子を眺めていた。ふと目が合い、会長の顔に苦笑が浮かぶ。


「俺も大概嫉妬深くなっちまったな」


 そういえば、白石隊長の事件以来、会長と副会長は付き合い始めた。何処まで進んだの、とさりげなく聞いたが、どうやら未だ清く正しい交際が続いているらしい。

 副会長の猛アタックに会長が折れた形で始まったふたりの交際。だというのに、付き合い始めてまだ間もないうちに恋人が目の前で他の男とベタベタしているのだから、そりゃあ会長は面白くないだろう。


「かいちょーかわいそ。俺が慰めてあげよっかー?」


 冗談交じりに茶化してみると、会長は神妙な顔で首を横に振った。


「いや、浮気はできない。俺のためにも、お前のためにもな。駿河に刺されるぞ」

「……あは、それ冗談に聞こえない」


 確かに副会長なら、平然とした顔で俺を崖から突き落とした後、会長に銃を向けて「九藤を殺して僕も死にます」くらい言ってのけそうだ。

 身の危険を感じ、余計なことは言うまいと固く誓っていると、書記の狗飼いぬかいに構っていた女装男子の庶務、花見はなみが、いつの間にか俺の方をじっと見つめていることに気づいた。


「……花ちゃん?俺の顔になんかついてんの?」

「私思ったんですけどぉ、遊佐先輩も人のこと言えませんよね」


 ウイッグのツインテールをくるくると指で弄りながら、花見こと花ちゃんがぼそりと呟いた。

 しかし、俺は花ちゃんの言わんとすることがいまいち理解できない。小首を傾げると、花ちゃんは声を潜めて「だからっ!」と耳打ちしてきた。


「遊佐先輩も嫉妬してるって顔でしたよ、今っ」

「へっ?お、俺が嫉妬ぉ?」


 思わず副会長と烏谷の方を凝視する。俺が、嫉妬だって?


「……いやあ、ないない。そりゃあ俺だってふくかいちょー好きだけどさ、恋愛感情じゃないもん。俺のタイプは可愛いチワワちゃんなの。それにふくかいちょーにはかいちょーがいるからね」


 まさか、あのふたり相手に略奪愛なんてできるはずがない。副会長は会長にゾッコン(死語だ)だし、会長もなんだかんだで副会長の重すぎる愛を満更でもなさそうに受け止めている。ふたりは今、絶賛らびゅらびゅ中のカップルなのだ。

 そう説明すると、花ちゃんは「ちっ」と小さく舌打ちした。……え、舌打ち?


「ちょ、ちょっと花ちゃんっ?なんで怒ってんのー?」

「べっつにぃ?ニブニブ鈍感野郎の遊佐先輩なんて、私もう知らないっ」

「えーっ?」


 俺が鈍い?なんの冗談だ。

 もし俺が花ちゃんの言う通り鈍かったとしたら、ふらふらとあちこち遊び歩いている俺なんてとっくに刺されている。

 親衛隊の子たちが俺に向ける感情だって、尊重しつつも上手く立ち回ってぼかしているからこそ、俺は今の立場を保っていられるのだ。


「もー、花ちゃん意味わかんないから。ねっ、わんちゃん?」


 わんちゃん……もとい、書記の狗飼に同意を求めてみる。すると狗飼は、珍しく呼びかけに反応して顔を上げた。

 普段はいかにも遊び人な俺を苦手視し、目すら合わせないのに。珍しいこともあるものだ。

 わんちゃんは曇りない目でじっと俺を凝視して、それから、


「…………ゆさは、ばか」


 とだけ呟いた。

 俺は一瞬、何を言われたかわからず、ぽかんと間抜け面を晒してしまう。


「…………へ。ちょ、ええっ!?馬鹿?ねえわんちゃん、今馬鹿って言ったあ!?」

「ほーら、狗飼だってこう言ってるじゃないですかぁ?やっぱ遊佐先輩はニブニブバカヤロウですよ」


 花ちゃんがにんまりと笑うが、俺は納得できない。


「俺、下半身バカってのはいつも言われてるけどさ!ニブニブバカヤロウなんて今まで言われたことないんだけど!?」

「遊佐、五月蝿いです」


 反論したところで、副会長の呆れの混じった視線がぶすぶすと突き刺さってくる。ていうか、なんで俺だけ?花ちゃんだって騒いでたのに。

 むっとしつつも、俺が副会長に逆らえるはずもない。俺は大人しく席に座り直した。ーーそこで感じる、視線。

 副会長のものではない。会長でも花ちゃんでもないし、ましてやわんちゃんでもない。

 この視線は、


「お宅の会計さんは随分と元気なのな?」


 やはり、こいつだ。

 揶揄の色を感じる台詞に、俺の眉根は自然と顰まる。


「……えへ、俺はいつでもフリーダムが信条だからねえ。そちらさんこそ、ちょっと羽目外しすぎちゃったね?そのせいで一ヶ月生徒会で更生だし」


 内心の苛立ちをなんとか抑えて、いつものように緩く笑う。でも多分、目は笑えていない。

 それでもなんとか、語調に冷たさが混じらないように気をつける。


「まっ、短い間だけどよろしくねえ、烏谷くん」


 俺、生徒会会計の遊佐飛羽(とばね)と、


「……ああ。よろしくな、遊佐チャン?」


 こいつーーF組在籍、烏谷迅は、幼馴染だ。

 かつて決別した幼馴染の俺たちは、この生徒会室で最悪の再会を果たしてしまった。

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