拾いものには英雄の御加護がある
「おっ?」
視線を見下ろす村紗は丁度いいプラスチックのパイプを見つけて、それを拾い上げては手のひらに握り、装備する。
「村紗~。お前んちに着いたことだし、なにか冷えた飲み物でもくださ――ぃなあ!?」
背後から攻めてきたパイプの奇襲をとっさに栢勝は見事しゃがみこんで神回避。いつの間にかタオルケットを織っている村紗はマント代わりに翻す。
「ふははははっ! よくぞ我が城へたどり着いたものだな勇者ども! この先へ通りたければ、私を倒して見せよ!」
ゲーム脳の原因で村紗は暴走を引きおこし、降り下ろすパイプの先端を此方へ向けて突きつけた。
「そこまでだ魔王! お前が企てる野望は、この俺が止めてみせる!」
「いい加減暑いから部屋に入れてくれんか?」
感染した栢勝は正門を飛び出してその場を後にする。
しばらく待ち続けていると、覚悟を決め、聖剣であろう武器を手にし、再びこの戦地へ戻ってきた栢勝はその聖剣を村紗へ向けて突きつける姿をみせつけたのであった。
……からっぽのペットボトルである聖剣を。
「ぷはははははははっ! ――上等だ! 来るがいい! 貴様のそんなもので、私を止められるのならなあああ!!」
かくして、魔王VS勇者――パイプVSペットボトルによる芸人の戦いが刻み始まるのです。
2
戦いは三分くらいにわたって続いている。
村紗の鞄から取り出した鍵で防犯機能を解除。ソーダの爽やかな甘味が広がる氷菓子を加えて居間の縁側に座りながら、携帯ゲーム機が読み込んでいる間だけときどき二人を眺める。
「……はぁ……はぁ……はぁ」
「ちぃ……っ」
読み込みが終わっていたからチャンネルを変えようとしたときである。先に動いた村紗は栢勝との距離を一気に詰めてパイプを振り上げた。負けじと栢勝はパイプを防ごうとペットボトルを薙ぎ払い、交差しあう矛先はパイプをあっさり折ってしまうと、村紗の頭に目掛けて一本取ったのであった。
……え?
折れたパイプはくるくる宙を舞い、むなしい音を立てて、落ちる。
静寂するなか、ひそかに勝利のポーズを決めていた栢勝のその手には、聖剣ペットボトルがしっかりと握られていた。
その終戦後。
パイプを折ったペットボトルは捨てることなく、青い花の瓶代わりとして飾られている聖剣の姿を、栢勝の家の玄関で見かけるようになった。